【芦生】芦生の森の防鹿ネット内継続観察調査とネット外調査区画作業2013

2013年08月10日(土) 芦生研究林 5月の作業後の植生調査・観察


今年も、昨年、一昨年と同様に「芦生地域有害鳥獣対策協議会」の「知ろう、守ろう芦生の
森」の植生調査の継続活動で、南丹広域振興局の森林管理担当の皆さんと、高柳先生(京都
大学大学院農学研究科)とともに、今年5月は雨の中での防鹿ネットを上げる作業をしつつ
調査区の調査をしたのだが、その継続調査が夏の調査である。
   
 かやぶきの里も稲穂が大きくなった  かやの吹き替えも終わったようだ
朝7時に家を出た、かやぶきの里で小休止。今日も静かで、稲穂がもう大きくなっていた。
以前来たときにかやぶきの吹き替えをしていた家屋は綺麗になっていた。
今日は良い天気で30度と表示されている。美山では鮎釣りをしている釣り師の姿も多い。
 
 小学生も生物多様性のお勉強
9時20分に、MICKEYとは2週間前にも由良川溯行で訪れた芦生研究林に到着
今日はカブスカウトや、研究林内への美山からの許可ツアーも別域に入るようで人が多い。

滋賀のTさんと、Sさんと久々にお会いしてアマチュア無線に関するおしゃべりをしつつ用意。
今日は芦生仲間のHさんの声かけで、大阪森林インストラクター会のIさん、Nさん、Sさん、
Tさんもお見えである。僕もご指導していただいており、植生調査の同定には心強い協力者。
   
 「班ごとに作業道具を持って下さい」  枕谷の調査区へと向かう
鳥越さんの挨拶で開会し、村田さんのいつもの漫才のような進行で今日も始まった。
今回は、今まで以上の参加協力者があり研究林事務所からのマイクロバスも満席となる。
マイクロバス、そして4台の車で地蔵峠まで内杉林道を40分ほど走行。

バスの中で、毎回のごとく村田さんから調査の方法等の概要説明があった。
地蔵峠で、いつもお世話になっているFさんと合流。Fさんは明日もユゴ谷やアイノ谷周辺を
調査されるので、すでに長治谷にテントを張り終えてきたらしい。
     
 クマハギのミニ講義 熊のかじり方の実演   イワヒメワラビが繁茂している
枕谷の調査区へ向かう途中のクマハギのところで、高柳先生のクマハギと鹿はぎの違いの
ミニ講座。クマハギのはぎ方と、鹿はぎのはぎ方はどう違うか、またはぐのを下手な熊と
うまい熊とのはぎ方と歯形の付き方の違いの講義をうけ、素人やマスコミがよく間違って
いる鹿のはぎ方と混同している相違点がよくわかった。

クマハギは下まで大きく剥いでいる。5月上旬から7月の樹液が多いときに良く針葉樹の
皮を剥いて、樹木が生長する器官である形成層部をかじる。これを芦生ではクマハギ
呼んでおり、熊が木をかじるこの被害に特別な呼び名がなく、熊による剥皮とか噛食、
あるいは熊害(ゆうがい)と呼んでいたが、「京都の秘境・芦生 原生林への招待(ナカ
ニシヤ出版 昭和45年初版発行)」
の著者であり、この芦生研究林にも勤務されていた
渡辺弘之先生が「クマハギ」として研究報告で使われたので、これから「クマハギ」
正式の用語として使われたそうである、と僕も渡辺先生のその著書で読んだ事がある。
今はどこでも誰もが使う「クマハギ」という言葉も芦生の森が発信地らしい。

10から15㎝くらいの幅で口を開けて噛みついてる。上手な熊は縦に噛みつき樹液を下
あごで受けるが、下手な熊は横に噛みつき樹液をこぼしてしまう。毎年しながら学習して
いきうまくなる、と高柳先生は熊の気持ちになってスギをかじり剥ぐ様子を見せて下さった。

鹿はぎは下まで剥がれていない。クマハギ防止の為にスギの木にビニールテープを巻く
方法は、いまでは全国の森林でされているが、その発祥の地もここ芦生研究林である。

夏場に剥がれた木は案外生き延びるが、冬に剥がれたものは枯れてしまうことが多い。
クマハギの今年剥いだ例と噛み方、去年剥がれた部分との違いの説明も受けた。

また、調査区についてから、鹿の状況も高柳先生から説明された。
いま芦生の森は3~10頭/kmに減った。大台ヶ原はこの密度を目標にしているが、
大台ヶ原の狩猟期間はドライブウエイの締まっている時期の冬期中心なので、なかなか
鹿を減らすという効果が出ない。芦生は今年、6~7月に森に人の入っている時期も猟を
して15頭をしとめたとのことである。これは近年の通常猟期のここ3年分に相当するという。

この森には人の入っている時期なので、安全のために、午前3時から8時半までに猟をする
という、猟師の人達の本当に頭の下がるご協力があって実現出来たとのこと。
こういう猟の仕方も、全国で芦生の森が初めての試行らしい。

ただ、猟師の言うには、今年の鹿は例年に比べてガリガリに痩せていたという。
食べるものが不足したら、他の山域に移動すれば済むのだが、雌鹿は自分の生まれた地から
あまり離れず定住する習性あるようで、広く遠くには移動しないという。

また、鹿が剥いだ樹皮と、幹が復活してきた木肌の状態を樹皮を見ながら説明を受けた。 
   
 鹿ハギのミニ講座 幹の経年復活の様子の説明 
7~8人ごとに4班に分かれて調査開始。僕は1班8名と班総括のSさんの元で調査する。

MICKEYは2班、滋賀のTさん達と同じ班で、班総括はKさん。
いつも東山のナラガレ薪割りウォークでお世話になっている京都の森林インストラクターの
Sさんは3班、芦生の森が大好きなHさんや、Fさんは4班となった。

同じ1班でも、継続して調査経験のある人と、全くない人では何をどうしたらいいのか
バスの中で説明を受けただけでは全くチンプンカンプンの事が多いのが実情だと思う。
僕は初めて参加された同じ班の大阪のインストラクターのIさんとペアを組んで調査開始した。
   
 ネット内・放置区の調査は大変だ  ネット外の除去区は鹿の食害
午前中に、ネット内除去区16区画の内、1~3区を、放置区16区の内、1~3区を
担当し、調査票に決められた手法で被覆度なども記入していく。

ブナの生存本数、枯死本数、被覆度、タニウツギ、アカシデ、イヌシデ、などの木本類の
稚樹の本数を調べる。次に草本類のツボスミレ、サワオトギリ、ハシカグサ、イグサ、ス
ゲ、ダンボドロギク、ノミノフスマ、チドメグサ等の被覆度を担当区の1つ1つ調べる。

5月にブナの稚樹とあいまい判定したものは葉も、今回は少し大きくなっており、半数近く
が、アカシデやクマシデであったと判明した。少し横の上に大きなシデの母樹もある。
   
 植生調査と被覆度調査  「判別しにくい草本が・・・」
「木本の稚樹や、草本の芽生えの葉の形は大人になったときと全然違うし、花もなくて
こりゃ~難しいなぁ」とIさん。「大きくなって図鑑等で見慣れた木や草の姿と違うので
なかなか難しいものでしょ」と僕。去年までの草本や木本の参考写真をお見せして同定
していただいた。鋸歯の状態を見たり葉脈の状態を見たり葉裏を見たり1つ1つ丁寧に
調べて行った。

去年は無かった新しい物も生えており林業普及指導員のおひげのH先生にも教えて
いただきながら、なんとか担当区の調査を終了した。H先生も「芽生えは難しい」との
ことで、文一総合出版の「身近な雑草の芽生えハンドブック(浅井元朗 著)」でも調べ
ながら指導して下さった。
   
 「この木本の稚樹は何だろう」  ヌルデも大きくなっている
昼休みはブナの母樹の木陰で、Tさんと談笑しながらランチタイム。実に涼しいのが嬉しい!

協議会副会長のNさんや地元のNさんが、写真担当のOさんと昔の芦生の森のお話しを横で
されているのを興味深く伺った。この森の昔を知ることができる良いお話しを伺えた。

4班のHさんが、僕らがもう食事を終えた頃に午前の調査を終えて食事にやってきた。
3班4班の調査区は去年と全く様子が違い沢山の草本が芽生えていたので大変のようだ。
Hさんとともに、同じ4班の、この森を深く良く知るFさんも時間を要したようだ。
   
本日の 調査終了と総括  また冬にネットを下げに来る
午後からは、柵外除去区9区画の内、1~2区を担当した。これは短時間で澄んだ。
3班、4班の調査区を見に行くと、去年とは全く違う様子に驚いた。大きなヌルデまで
育っている。鳥散布で生えたのだろう。今年の秋にはまた様子が変化しているだろう。

調査区の川を挟んで対岸の斜面は、イワヒメワラビが繁茂している斜面と、ほとんど
生えていない裸地のようになった斜面がある。土砂流出や植物の多様性にどちらの
方が良いのかも興味のある所である。 
     
午後の天気が変わりやすいので、調査を終えて地蔵峠に戻り、ここで高柳先生とはお別れ。
我々は、研究林事務所へとまた満席のバスで研究林内の林道を戻る。

研究林事務所前に戻り講義室で、芦生地域有害鳥獣対策協議会の副会長のNさんからの
お言葉と、芦生の森への熱い思いを伺い3時過ぎに解散となった。

須後を出ると、気温は31度。朝とそれほど変わりなかった。
河鹿荘でサッパリと汗を流した後、いつもの「かえで御膳」をたのしみに食堂へ行くと、
なんと今日から15日(木)まではバイキング期間で、午後の6時から通常レストランとのこと。
バイキング料理は別に目的ではないし、2時間以上も待てないので帰路につくことにした。
途中で雷と小雨が降った。

帰路で職場からと義弟から電話が入り、義父の家へと急行したので帰宅が遅くなった。
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