【奈良】 山ネットサポート・井足岳( 550m)
【行き先】 奈良県宇陀市 井足岳(イタリダケ・550m) 【コース】 近鉄鶴橋駅―近鉄榛原駅~井足岳~近鉄榛原駅―近鉄鶴橋駅 【日 時】 2013年12月8日(日) 【集 合】 近鉄・鶴橋駅 中央改札口前 午前8時30分 【メンバー】山ネットの視覚障害者5名とMICKEY&矢問を含む 晴眼者サポーター21名の合計26名 |
昨日は毎年参加している京都の東山周辺のナラ枯れ薪割りボランティアの日だったが、 囲炉裏村の忘年会の受付係と重なった為に、夕刻からの囲炉裏村の忘年会に参加した。 朝5時過ぎに起きて、視覚障害者の登山サークル「山ネット」にサポートに行くための サポートロープなどの登山準備をした。今日は京都の芦生研究林のABCプロジェクトの シカ柵下げの作業日と重なってしまったのだが、先に決まっていた山ネットのサポートへ。 食事の準備は、一緒にサポートに行くMICKEYが炊き込みご飯のおにぎり作ってくれ、 カップスープ用のお湯をテルモスに準備してくれた。 8時前に鶴橋に着いた。やや早すぎるのでホームのロッテリアでコーヒータイム。 集合場所に行き、代表のMさんに昨夜の囲炉裏の忘年会で、遭難捜索のお礼として杉の子 さんのお母様から今でも銘酒「立山」を囲炉裏の忘年会に送ってきて下さっていることを お伝えした。杉の子さんは生前は毎月欠かさず山ネットのサポートに来てくれていた若者だ。 「うわ~、MICKEYさんも来てくれはった。私はフリーに回れるわ~」とUNさん。 「ちょっとブランクがありますが、頑張ります」と笑顔でこたえるMICKEY。 近鉄急行に乗り、現地の榛原で待つ奈良組と合流すべく出発。 同じ市民のSHさんとカシミールと地形図の見方や使い方の話しをする。SNさんは今日 の井足岳の位置がわかりにくかったようで、持参された地形図には入っていなかった。 榛原に着くと、他の山グループも沢山いる。ここは複数の山への起点になると奈良組のNM さんが教えて下さった。今日行く井足岳は伊那覇佐山(636.9m)への通過地点でもある。 |
10:00 駅前で、Mさんが視覚障害者とサポートする晴眼者の名前を呼んで2班に分け、さらに 各班では2つのグループに細分する。僕とMICKEYは2班のSSさんの班。 MNさんをMICKEYとともにサポートする。 MNさんをサポートするのは初めてなので、MNさんに障害の度合いを伺った。 20歳の時に緑内障になり手術を繰り返し、49歳のいまはほとんど視力がないという。 ただ、明るいところではぼんやりと像を感じ、歩行は右側に体が行きがちとのこと。 「MNさん、このサポートロープを持って下さい。登りでMNさんがスリップして引っ張 っても、僕がしっかり踏ん張っているから心配しないで。後ろからは足の位置や体の傾き をMICKEYがサポートしますからね」と僕。「よろしくお願いします」と明るいMNさん。 各班各グループの連絡の無線機の周波数と音量チェックをして出発。 |
10:45 最初は住宅地を通っていき、山道に入ると急に1人幅の踏み跡の幅になった。 地形図の点線ルートではなくて少しマニアックなヤブコギのルートをとるようだ。 |
「首高の倒木を頭を下げてくぐります」「膝高の倒木をまたぎます」「右から目の高さに ササがでています」「大きな岩の左を通ります」「右側が切れているので左寄りに」と、 すべての障害物を声にして僕の真後ろをザックからぶら下げたサポートロープを持ち、 白杖で障害物を確認しながら確実に安全に足を運べるように進むMNさんに伝える。 まるで障害物競走のように次々と障害物が現れる。 |
特に斜面の1人で通るにも狭い片側が切れ落ちている登山道を進むのには前にも後ろにも 神経を使わないとならない。フリーで前を行くOIさんが枝や石をできるだけのけて歩き やすくしてくれている。「OIさんがブルドーサーのように前で頑張ってくれてるからね」 とMNさんに伝える。「ありがとうございます」とMNさん。 そういう歩行の注意だけしているのではサポーターはつとまらない。歩いている周辺の 木々の様子や果実の様子も情景が浮かぶように伝えていく。「今はヒノキの植林帯ですよ。 ここは良く枝打ちがされていて明るい植林帯ですが、右側の植林帯は枝打ち不足で暗い ですよ」枝打ちが必要なのはなぜか、いつ頃するか、などを説明しながら歩く。 「次は杉の植林帯。ここは土が流れて根が出ているので、滑りやすいです。小股で登って くださいね」「あっ、すいません。あっ、ごめんなさい」とスリップしてサポートロープ を引っ張るたびに謝るMNさん。 「謝らなくてもいいですよ。健常者でもこの登りは滑ります。滑るだろうところは予測し て身構えつつ登っているので、転倒しないように安心してロープを引っ張ったらいいです からね。100kgを超えるパラリンピック柔道のまっちゃんのサポートよりは全然楽」と僕。 後ろからMICKEYが笑っている。まっちゃんの引き方はすさまじい力で、僕も吹っ飛び そうだった。 4本の細い丸太で作られた橋を渡る。これが超難関。「真後ろに僕の体から左右ずれない ようにしていれば大丈夫だからね。MICKEYは後ろからちゃんと見て!」と慎重に渡る。 一番ひやひやする場面だ。 サポーターのSTさんが今日は体調がすぐれない様子。すごくバテている。 「無理しないように。ザックを持ちますよ」と僕。「いや、頑張ってみます」とSTさん。 「僕も何度も矢問さんにザックを持ってもらった事があるなぁ」と視障のKDさん。 「明るい感じになりましたね」と敏感に感じるMNさん。「植林帯が終わり冬枯れの自然 林ですよ。サクサクと広葉樹の枯れ葉の絨毯で足にも膝にも優しいですね」と僕。 |
11:45 井足山 550m。1/25,000地形図にも名前は載っていない山である。 山頂横のスペースと、少し下の所のスペースに分散してランチタイム。 サポーターのKSさんの大きなザックから大きめのコッヘルやガスが出てきて、柔らかい おもちも入ったお汁粉を全員に作って振る舞って下さった。「KSさんありがとう」と僕。 「う~ん、おいしい!KSさん、温まります~」とMICKEYも喜んでいる。 |
多くの他の山グループもやってきた。狭い山頂は満員御礼。 無線機をつけるといろんな山からCQが出ていた。金剛山系の大日岳からJH3JFFさんが CQを出されていたので応答した。 そのあと、僕らは記念写真を撮り、全員集合し、元気賞の発表。僕は近況報告をした。 「この前、芦生研究林で調査された鹿の様子を話して欲しい」とMさん。 奈良の鹿も増えているし、大台ヶ原の鹿のこともみなさんよくご存じなのでお話しした。 |
13:10 下山開始。地積調査の杭が細い登山道の真ん中に5cmほど頭を出して打たれているので、 視障者は躓かないように歩かなくてはならず、実に歩きにくい。 下山は視障者にとってはなかなかの急下降で、しかも杉の根が沢山出ていて、滑らないよ うに足の置き場にも困るルート。慎重に慎重に進む。 MNさんが、急な下りで木の根に躓いたり滑ったりするたびに「あっ」と言いつつ、僕の ザックを後ろから押すことになるが、僕も立ち木を持ってその押し出しに備えている。 |
またまた倒木をくぐったりまたいだりの障害物地帯。 登りで慣れたのか、MNさんもスムーズに歩いている。「すごいものだ」と感心する。 また丸太橋。慎重に進む。 僕らの後ろを渡っていたMさんが白杖をつく際に丸太橋の外側についてしまいバランスを 崩して片足を落としてしまったが、さすがにベテラン。サポーターとともにちゃんと体勢 を戻してうまく渡れた。 地籍調査をされている人達がいた。杭も打っておられる。 |
14:05 だんだんと集落に近づいてきた。「MNさん、あと少しですよ」「はい、頑張ります」 素晴らしいススキの原に出た。しばし休憩。近くの家の犬がうるさく吠え続ける。 道路に出た。あとは駅へと戻るのみ。 |
14:35 駅に着くと、奈良組は電車にバスにと走っていった。 僕たち大阪出発組はトイレ休憩の後に急行で帰路についた。 鶴橋駅で、UNさんたち一部の他の人はコリアタウンまで行って食事をするらしい。 僕とMICKEYは、元タイガースの赤星選手の写真がある、鶴橋商店街の韓国料理の小さ なお店「壮元(ジャンウォン)」に行ってチヂミの盛り合わせやチョッパルなどを食べて から帰宅することにした。 僕らの横の席の30代の女性客は関西中の山を登ったらしい。また登山をしたいらしい。 店主のオモニも韓国ではザイルをつかってアイスクライミングをされていた女性なので 山の話しがつきない楽しい時間を過ごせた。 16:35 店をあとにしてJR環状線に乗り帰路についた。18時半過ぎに帰宅完了。 今日はいつになく短い登山ルートだった。天気も良くて、事故もなく良かった。 |
本日のルート |
この1つ前は「【芦生】芦生研究林・上谷 区画法でのシカの個体数調査」の記録です |