【芦生】杉尾峠から中山谷山の分岐までの今を見る
【日 程】2014年6月28日(土) 【山 域】京都府 芦生研究林と境界尾根付近 【コース】須後-中ノツボ谷出合-杉尾峠-権蔵坂-中山谷山(791.8m) -奥ノ谷山(811m)東面トラバース-Ca586m-南東尾根-須後 【メンバー】F氏・MICKEY・矢問 |
今週は体調が悪く木曜日にはとうとう半休をとった・・・。「こういうときは芦生の森に行くと なぜかいつも元気を取り戻せるんだがなぁ・・」と僕。不思議と20年来そういう事が良くあった。 研究林の許可の元、櫃倉谷そして杉尾峠から五波峠方面への芦生研究林の境界尾根筋の 現状調査をされるFさんに同行許可を頂いた。 研究林の境界線との接点が美山トレイルルートの一部になりかけている危機的状況との事。 (★ 「芦生短信2」 2014年6月22日以降のF氏のレポートに詳細あり ) 中山谷山や奥ノ谷山方面を歩くのは僕とMICKEYにとっては9年ぶりになる。 朝4時に起き4時半出発。途中で朝食をとり、須後に向かうと小雨が降り出した。 いつもは出発時に晴れや曇りでも芦生に近づくにつれて小雨や雨になることは多々あるが 今日はいつもと逆。前線が日本の南海上にあるため、美山のかやぶきの里では雨もやみ、 芦生に近づくにつれ明る目の曇り空になり道路は全く濡れていなかった。「ラッキー!」 芦生ロードパークの手前の側溝に子鹿が死んでいて、大きなトンビがつついていた・・・。 道がいつも以上にがら空きで、信号は青ばかりに遭遇し、須後には6時半に着いた。 ゆっくり用意をしていると、Fさんも到着。お互いに天気の様子がいつもの逆で喜び合った。 |
6:55 須後を出発。今月初めにあった「知ろう守ろう芦生の森」の活動の時にはそれほど 目立たなかったオニグルミの実やアケビの実が大きくなっている。 ヤマアジサイの花も咲いている。 櫃倉林道では間伐などが始まっており切り出した丸太が積み上げられている。 東斜面にギャップが出来て光がさしこんできているので、前よりずっと明るく感じる。 この辺りの植生も光が林床まで入り変化してくるだろう。搬出作業道も作られ始めた。 後ろからフォワーダを積んだトラックが入って来た。「あっ・・あぁぁぁ・・」とF氏。 トラックの荷台のフォワーダをつけたグラップルクレーンの腕が、斜面から出ている大切に 思っている樹種の枝を容赦なく叩いていくのを見ての「嘆きの声」だったのだ。 |
いろいろな草本を観察しつつ櫃倉林道を進む。鹿がかじり始めたというヒメザゼンソウも まだ咲いていた。グラップルクレーンを操作して丸太をトラックに積み込んでいる男性に 声をかけて横を通過した。今は高性能機械で1人で何人分もの林業作業が出来るのだ。 |
櫃倉林道終点からは、いつもの横山峠を越えずに沢筋を行くことになった。 沢山生えているマツカゼソウの香りが漂っている。 このC型部分の沢筋を歩くのはBAKUさんやゲキさんたちと歩いて以来なので11年ぶり。 木の枝も藪も多かった沢筋は、鹿の食害や大雨等の増水ですっきりしすぎて以前のような 「活力」を感じない風景になっていたのはやはり寂しい気がした。 |
「マタタビの雄花が咲いている」とFさん。花序付近に付く葉は下側が白色となり目立つ。 このような白色の葉は裏面から見ると薄い緑色。このような白色の葉は、ハンゲショウと よく似ており、訪花昆虫を誘引に貢献するのであろう。「この花、良い香り」とMICKEY。 アワブキの花も沢山咲き、その香りはキンモクセイっぽい良い香りを沢に漂わせている。 (和名の由来は、木を燃やすと切り口から泡を出すことからきている。属名の Meliosma の語源は「meli(蜜)+osme(匂い)」で、蜂蜜の香りの意味) |
イワヒメワラビが沢山生えている所がある。かき分けて稚樹やスゲ類を探すFさん。 ミヤマカンスゲを見つけると、今後の変化を楽しみにされているお話しをして下さった。 |
9:45 ナメ谷出合で休憩。冷たい風が気持ちよい。「さてもうすぐあの登りだな」と僕。 登りの目印に付けたらしいビニール紐やテープが数多く付けられすぎている・・・。 杉尾峠へ向かう登りにかかる。去年下ったこの急な所を登る。Fさんのペースは速い。 |
10:30 林道にでた。 ここからは階段状の登り。「この登りは自分の歩幅で登れずキツイ」とFさん。 「先ほどの登りの方が、断然きつかったです」とMICKEY。「同感」と僕。 |
10:55 杉尾峠。涼しい風が気持ちよい。今日は日本海が見える。 知人がカンパチを良く釣りに行っていた冠島も見える。その横の毛島も見える。 ここでも20年ほど前の杉尾峠とのその周辺のブナや草本類の違いをFさんと話した。 「さて杉尾峠から五波峠に向けて芦生研究林の外周の現況を調査しましょう」とFさん。 |
太い枝が複数切断されている | 7cmの枝 |
これは9cmの枝 |
スタートするやいなや、オレンジ色の「美山トレイル」のテープが商店街の大売り出しの ノボリのように5~10m間隔で木の枝にくくりつけてある。1つの枝に2つもくくりつけて いるところも多々あり、ルートが曲がる辺りは3つ4つの各木々にうるさいくらいにくくり つけてぶら下げてある。山屋視点の要所テープではなく、ゴミの元になるのは必至だ。 |
かつて「高島トレイル」が準備され始めた頃もルート上がこんな感じだったのを思いだし た。山友たちと「このブナ林のヒラヒラは商店街の大安売りと同じ感覚か」とガッカリした。 今日見たテープもパリパリ質感で、いくつもちぎれて落ちてゴミ状態。もう紫外線で退色 しているものも少なくない。落ちているのもあれば、あとはちぎれて待つばかりのものも多い。 しかも使い切ったあとの「テープの芯」までそのまま放置してゴミ状態。 「トレイル」と言いつつも、これは山の自然や生態系を愛する者がしている所業では決して無い。 |
これは直径10.5cm | ここでも枝が複数切断されている |
芦生研究林で植生調査をされているときのFさんの笑顔は、この研究林の接点でもある 外周の「美山トレイル構想ルート」を歩き出してからは今日の天気のように曇りっぱなし。 |
研究林の境界線の内側に10mほども入り込んでいるというところにも「ヒラヒラ」とテープ。 7~11㎝くらいの太い枝を切ってあったり、ユズリハが繁茂している所も切られていたり しているのを見るにつけ、表情が硬くなるFさん。 |
5~10m間隔にテープは続く |
アップダウンの多いスリップしやすい部分の、足下から立ち上がる直径1~2cmほどの 木はナタで斜めにスパッと切られている。 「ここで転倒するとブスッと足やお腹や臀部に刺さるよね・・・危険だわ」とMICKEY。 |
11:45 お腹も空いたので、すぐ横の林道に出てシンコボを正面に見ながらランチタイム。 「シンコボはまだ地蔵峠からの入林禁止前の2003年10月に行って以来、11年行って いないなぁ」とMICKEYに言いつつ眺めた。 「タイコ谷からシンコボに向かうあの辺りに滝がありそうに思う」と指さすFさん。 Fさんは定番のお茶漬け。僕らはMICKEYが作った梅干しやサンショが入った玄米おにぎり。 MICKEYは食欲が無いらしく少しだけ。 僕はしっかり食べたが、体が熱く(なかなか体温が下がらない)疲れが出始めた感じがした。 「木曜に半休した時の体調がまだ戻ってないのでは。朝も咳をしてたし」とMICKEY。 |
9年前も見た食い込み | まだまだ短間隔で続くテープ |
真新しいクマハギ | ブナの枝も容赦なし切断 |
10m弱間隔でまだまだ続くテープ |
また、テープがヒラヒラと10mも間隔が無いくらいについた研究林外周を歩く。 クマハギ防止の荷造り紐が無い下部だけをクマハギしている所もある。 ここからはネット状のクマハギ防止のカバーがされている。 「これも外れたり破れると、膨大なゴミになる」とFさん。 ネットカバーがされていない杉は真新しいクマハギの跡が残る木が何本もあった。 |
権蔵坂 | 病気か虫が原因の複雑形ブナ |
13:20 権蔵坂。この地の「説明案内板」が以前より綺麗になっているように感じた。 9年前にここに谷から来たことを良く覚えているが、MICKEYはもう記憶にないと言う。 だんだんと体温が上がり、体がだるくなり動悸がする。MICKEYが言うように本調子で は無く、熱中症気味になっているのかも知れない。ほんの1~2分、霧雨のように降った のだが、体温を下げてくれるほどでは無く、すぐにやんだ。「風よ吹いてくれ~・・・・」 |
いままでのようなアップダウンはない。 ナツツバキの花が咲いている木に「ヒメシャラ」と書いたテープがある。 「間違ってる」とFさん。 左手に湿地があるが雨が少なくて泥状態。直径40cmほどの水たまりのみ。 その真上にモリアオガエルのソフトボール大の卵があった。 「今年の梅雨は雨が少なくてかわいそうになぁ・・・」とFさん。 |
14:55 中山谷山への分岐地点。 「あのうるさいテープからやっと解放。ここからは中山谷山に向かいましょう」とF氏。 ここまで、美山トレイルの数百本もぶら下がっていた膨大な数のヒラヒラテープや、 木々の枝を許可も遠慮も無く切断してルート作りした実際を見て「くもり顔続き」だった Fさんの顔が、いつもの穏やかな表情にもどった。 MICKEYは元気にF氏のあとについていく。僕は息を整えつつ、ゆっくりゆっくり進む。 動悸が激しくなり体温が上がったのを感じ、風を感じた斜面で休憩しつつ地形図で 現在地を確認。 FさんとMICKEYはもう姿は見えないが、いまは無理せず体温を下げるのが優先と と考えた。「この地なら、ゆっくりペースでも一人でも帰ることが出来る・・・」 |
ゆっくり登ると二人は待っていてくれた。Fさんの下山予定ルートを確認し、スタート。 MICKEYが中山谷山に向かって先頭で行くが、「そこを右手の尾根に」とFさんが指示。 中山谷山の三角点付近よりも展望の良い開けた所へ寄り道して少し休もうとのこと。 15:10 展望の良い所。ナツツバキが咲いている。蕾も多い。 ここからは八ヶ峰や頭巾山が見える。 八ヶ峰には2002年3月、2010年1月に登った。頭巾山には2006年5月にMICKEYと、 2010年5月には丹波のたぬきさんや、やまあそさん達と登った。しばらく行ってない。 |
中山谷山の三角点後ろの木に注目 | 左の写真の木の地点の9年前 |
腰高の笹が無くなっている | 左の写真付近の9年前 |
15:25 中山谷山 三角点。「えっ、ここがあの中山谷山・・・。」9年前のあの笹原が全く無い。 「そうなんですよ。残骸というか、笹の稈が沢山落ちているでしょう」とFさん。 9年前にMICKEYと笹の中で写真を撮った場所がこことは、ずいぶん変わったものだ。 ここから奥ノ谷山までの腰高の笹原もないし、背丈ほどのチシマザサもなくなっている。 スイスイ歩けて、同じ所とは思えないくらい変わってしまった。 |
これは今の姿 | これは左の写真地点の9年前 |
時々たぬきの貯め糞があり、Fさんが貯め糞の所に生える稚樹となぜこの稚樹を鹿が 食べないのかの仮説を話して下さる。たぬきの貯め糞かどうかも嗅いで確かめるFさん。 Ca743mを過ぎて、また動悸がはじまり、体温が上がりはじめたようで息が切れる。不調だ。 先ほどまで元気だったMICKEYまでも急に動けない様子。 昼にほとんど食べていなかったのでシャリバテと自分で判断できたようで、パンとおにぎりを 食べ、元気に戻った。Fさんが、お茶切れになっている僕にお茶を分けて下さった。感謝! |
16:45 奥ノ谷山の三角点東側をトラバース。「えっ、三角点には行かないのですか」と僕。 「別におもしろい山頂でもないしね」とFさん。 9年ぶりの奥ノ谷山だが、今日の僕の体調では、パスする方が良いだろう。 「良い感じの所ね~」とMICKEY。「ここは通ったことはないですか」とFさん。 「ここは・・無いような・・・」と僕。笹が無いので勘違い。9年前に通っているのに・・・。 17:05 Ca586mの台地状のところから右の南東尾根に向かうFさん。龍王橋に向かって下る。 (9年前はここからMICKEYとは左手の北東尾根を下って櫃倉林道に出た) 下りの苦手なMICKEYもFさんの後ろをいつになく速歩で頑張って下って行く。 林道が見えてきた。あと一息だ。 |
17:30 林道に出た。龍王橋のすぐ手前。「やっと着いた~!」とMICKEY。 「ここからあと15分」とFさん。僕もなんとか復調した。 17:45 駐車場に到着。車中にあったお茶をがぶ飲み。「生き返った~。Fさん、ありがとう ございました。」と、Fさんとはここでお別れ。僕らも協力金を箱に入れて出発した。 本日の歩数計を見ると、33,887歩、3,856kcal、燃焼脂肪106.9gと表示された。 イワガラミ・ヤマアジサイ・マタタビ・ナツツバキ・アワブキ・ソヨゴ・ドクダミの花、花が 終わりかけのヤマツツジ、沢山咲いていたヤマボウシ、そしてネジキ・コアジサイ・ ツルアリドオシ・コナスビの他にも、今日も沢山の草本や稚樹のご指導をFさんにして 頂くことが出来、有意義な1日となった。 芦生研究林の外周接点の美山トレイル予定ルートを、今日実際にFさんとともに 歩いてみて、芦生研究林への今後の影響は、Fさんがおっしゃるように確実にあると 強く感じた。 ( 参照:芦生短信2 2014年6月22日以降のF氏レポート必読!) 「ここは生態系の研究の場」として認識し、研究林の生態系には絶対に影響しないと いう迂回ルートを企画者は真剣に考え、現在準備進行中の研究林境界接点ルートは 積極的に回避して、日本の大切な財産といえるこの森を、大切にして欲しいと強く強く 願うばかりである。 河鹿荘でまずはコーラを一気に飲んで、一息入れて、汗を流し、いつものように「かえで 御膳」を2つと、二人で分ける「鹿カツ単品」を1つ頼んだ。「満足、満足」とMICKEY。 今日の鹿肉は田歌の猟師さんがとったものらしい。 朝は19℃だったが、帰路は23℃と道路標示。風もヒンヤリ気持ちよい。 途中から雨が降り出し、亀岡市のファミリ-マ-トのカフェラテでコーヒーブレイク。 能勢を過ぎるとまた雨はやんだ。天気に味方された一日だった。21時15分帰宅。 |
本日のルート |
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