【丹波】妙高山からクリンソウ自生地保護の谷


【日 程】2014年5月31日(土)
【山 域】兵庫県丹波市 妙高山
【コース】風呂吹池・神池寺入り口登山口-肩切地蔵尊跡-妙高山(564.7m)
     -アカガシ古木-神池寺本堂-大覚殿~クリンソウ保護区の谷筋
     -尾根-肩切地蔵尊跡-風呂吹池・登山口
【メンバー】MICKEY・矢問 
昨日も今日も某国からのPM2.5で空は霞んでいる。今日は展望に関係ない山にしよう。
暑がり二人は涼しい内に登るために、朝5時に家を出て丹波の妙高山へと向かう。
粟柄峠経由で県道69号線を西進し、中山で北へ向かい下三井庄の林道ゲートへ。

「入山禁止」と丹波市の掲示。「えっ、ダメなのか?」と説明書きをよく読むと、松くい虫の
特別防除を実施するらしく、6/5~6/9と6/26~6/30の期間が入山禁止と記してある。
「おっ、今日は入山可能だ!」とホッとする。

ゲートを開け閉めして風呂吹池を過ぎたすぐ先の「神池寺入り口」と道標のある登山口前の
ふくらみに駐車。気温は14度。
     
6:55
登山口を出発。「あっ、今日はカメラを忘れてしまった。スマホで撮るしかないな・・・」と僕。
この道はかつては春日町から神池寺への参道でもあったが、今はほとんど通る人がないよ
うでやや荒れているが、日陰で涼しくて静かで鳥の声の多い道で僕らには好みだ。
左手はそれほどまだ太くないヒノキの植林帯。ヒノキの実が道にびっしりと落ちている。
 
今にも朽ちて落ちそうな丸太橋を2度渡り進んでいくと自然林になってくる。
道を左手に行くところにかつての参道らしく石仏があり、南無観世音菩薩
享保四亥九月吉日と彫ってある。 
     
7:35
妙高山の東尾根に出た。古い石仏道標がある。
左は「細見」(現在の三和町・県道709号線に細見中出というバス停もある。細見川が流れている)
「そのべ」(園部)への方面をさし、右は僕らが来た「三井庄・笹山」の方面と彫ってある。
ここを左手から北へと下れば神池寺だが、僕らは左手の尾根道へと進む。

すぐ上がった右手に朽ちた地蔵尊の屋根が転がっており、新しい石柱には「肩切地蔵尊跡」と
彫ってあり、現物のお地蔵様は今はない。(この肩切地蔵尊にはのちに出会うことが出来た)

「首切り地蔵というのはよく見たりするけど、肩切り地蔵って初めてだな」と僕。
「なぜ肩切り地蔵って言うのかしら。何か物語がありそうよね」とMICKEY。

この尾根道もあまり人は通っていないようで、枯れ葉が積もっていて踏み跡がややわかり
にくい所もある。
   
7:50
Ca650mのピークに、尾根の登り始めの案内板にあった「麻呂子親王祈願之塚」が
ある。麻呂子親王(用明女帝の第5皇子)の鬼の首塚とも言われているらしい。
 (鬼退治の話しもTさんに頂いたパンフに書いてあったので帰宅してから読んだ)

ヒンヤリした空気の中で少し休憩。アカガシの木があり落ち葉も多い静かなピーク。

ここから西へ進み、尾根道を北北西へと少し下ると登山道(参道)にぶつかる。
それを西へ少し行って北へと登ればすぐに妙高山の山頂だ。
     
 
8:10
妙高山 564.7m。(←地形図標高・ガイドブックは564.8m)

のちにクリンソウの所でTさんに頂いたパンフの妙高山神池寺縁起に「山容が経典に
出てくる須弥山に似ているので妙高山と名付けられた」とあった。

左手に「妙高山権現神前」と彫られた石灯籠があり、その裏には「春日部庄神池寺」と
彫ってある。右手に祠があり石仏がある。祠の鈴は2つとも紐から切れて落ちていた。
お賽銭もある。
三角点の所で、軽く行動食休憩。展望は無いが、まだ涼しい時間で気持ちよい。
僕は無線機でAPRSを発信。MICKEYは朝刊のパズルをやっている。のんびりタイム。
   
   
山頂からは神池寺の本堂へと向かう。地形図には点線もないが、しっかりした道がある。
途中に大きくて立派なアカガシの巨木がある。大きなモミの木もある。

神池寺は、 「丹波比叡」 として栄えた天台宗の修行寺で、 中世には56の寺院や僧が
寝泊まりする僧坊が200ほどあり、 多くの修行僧が往来していたというだけあって、
建物が沢山あったような平地や石垣が点在している。 
   
行者堂の所に出て、すぐ横に立派な本堂があり、梵鐘もある。
本堂横には芝生の広場が広がっている。春の桜、秋の紅葉の頃は賑わうのであろう。
「明智光秀軍に焼き払われた寺だなぁ」と思いつつ、のんびりと木陰でコーヒータイムに
した。鹿も多いのだろう。鹿の糞も芝生の上には多い。
   
9:10
仁王門から出て、下って行く。常行堂を過ぎて右手にはあの地蔵尊跡にあった肩切地蔵が
あるではないか!本当に肩から上がないお地蔵様だ。
横にこのお地蔵様がなぜ肩を切られたかの興味深い伝説話しが記してあった。

肩切地蔵尊の移設は、現代も肩から上の病や入試合格祈願によく叶って頂けるという評判で
お百度参りをされる信者さんも多いものの、参拝者の中でもご高齢の方達には困難な面が
あり、2003年6月3日に、春日町野上のK石材店さんのご寄進によりここに移設されたとのこと。
「なるほどなぁ。あの峠まではご年配の人にはちょっとキツイかもなぁ」と僕たち。

横には杉の木に抱かれた「想われモミジ」という名がついた木がある。縁結びの木らしい。
     
前の湿地に網の塀で保護されたクリンソウが終盤ではあるが咲いていた。
カエルやオタマジャクシが沢山いる。

「舗装路の向こうの傾斜前に赤や白の花を付けたクリンソウが見えるよ」とMICKEY。
周囲にロープが張ってあり保護されている。右手の大覚殿の方にもクリンソウがある。
その横の道をそのまま南へと登って行くと、肩切地蔵尊跡の峠に行ける道だ。

このまま戻るか、自生地の方も見に行くか迷いつつ、先ほどの舗装路横のクリンソウの
所にまた行くと、先ほどはなかった軽トラと男女の人がロープ内のクリンソウの周囲の
手入れをされていた。「おはようございます」と男性。この寺の檀家さんの1人のTさん
で、むすめさんとクリンソウの様子を見に来て、もう帰ろうとしていたらしい。

このお寺の歴史や、いま残っている4軒の檀家での寺の周囲の手入れやこのクリンソウの
世話のお話し、さらには肩切地蔵尊をここに移設した経緯などを伺えた。

「ほう、春日町の方から登って来たのか。この寺の境内の手入れやクリンソウの保護活動
に協力してくれるようなボランティアがいれば是非連絡して欲しい。2年前にクリンソウの
自生地を荒らされた新聞記事も読んでくれたのだね。ここから1キロ半ほど下ったらノボリが
立ってるのでクリンソウの自生地への入り口はすぐわかるよ。ずっと上まで1キロほどある
ので途中で断念する人もいるけど、是非行ってみて。花はもう盛りが終わってるけどまだ
何株も花は咲いてるし。ちょっと待って。パンフレットを上げるから」とTさんが発行されている
略縁起の載っている「妙高山神池寺」「妙高山の四季の彩り」というパンフを下さった。

     神池寺境内整備ボランティア募集(傷害保険加入)
                 問い合わせ先 妙高山神池寺 0795-85-0325
   
パンフに載っている写真もTさんが季節ごとに撮ったとのこと。このTさんも以前にこの横に
ある黄色い「バス喫茶復活」のことで新聞記事に登場されていたのをネットで見て記憶している。
  参考 バス喫茶が8年ぶりに復活の2012年の記事
      クリンソウが荒らされたときの2012年5月の記事
Tさん達はクリンソウの株分けをして、沢筋に植え付けたり、もっと増えるようにと別の沢筋でも
活動をされているらしい。

クリンソウは兵庫県ではレッドデータBにランクされている。
クリンソウはプリミンという有毒物質を持ち、シカなどが食べない「不嗜好性植物」に分類されて
いるので鹿の食害からも守られていたが、どうも関東ではだんだんと食べる鹿も出だしたようで
踏み荒らしや盗掘だけでは無く、今後の鹿の様子も気になるところである。

「この山の中には、お茶の木があちらこちらに生えているのですね」と僕。
「この地は昔、朝廷にお茶と薬草を献上していたからお茶の木が多いんだよ。欲しかったら
このお茶の木を持って帰るかい。増えすぎてね」と、横のお茶の木を指さすTさん。

「家のお茶の木は数年前に枯らしてしまったのですが、まだ山を歩くので今日は遠慮しておき
ます。ありがとうございます」と僕。
Tさんとむすめさんにお別れして、僕らは県道541号線を下って行った。
車道沿いに咲いている花を楽しみながらのんびりと下る。マムシグサが実に多い。

「こんなに下って、これをまた登って戻るのは暑いだろうね」とMICKEY。「クリンソウの自生地
の沢筋を登って、そのままあと距離で200m位登り続けると、尾根筋に出るのでその尾根道を
肩切地蔵尊跡の峠まで西進するほうがこの道をまた戻って登るより楽だと思うよ」と僕。 

     
雲海展望台あたりで、後ろからTさんの軽トラが追いついてきてまた説明をして下さった。
「ありがとうございました」とお礼を言ってお別れした。車は下るのが早い。僕らもまだ下る。

新聞記事で読むだけではなく、自生地の保護活動を実際にされている方のご苦労のお話し
や、お寺の檀家さんとしての詳しいお寺のお話しを伺えて良かった。

途中にクリンソウ見学の駐車場予定地と言うところがあった。まだ草はぼうぼうだったが
いずれは整備されるのだろう。

10:00
県道541号線沿いに北へと下っていくと、Ca270m辺りにクリンソウのノボリが見えた。
ネットや新聞で見たことのある「説明看板」もある。自生地までの登山道を守る会の方達
の手で整備されている。沢沿いにもクリンソウが点在している。花の盛りの時期は過ぎた
がまだ咲いている。どんどんと登って行く。途中で断念する人もいるというだけあって、
一番奥の自生地までは25分ほどだが、お年寄りにはちょっとつらいかも知れない。
谷筋の木陰なのでしばらくクリンソウを見ながら休憩する。
     
「誰も来ないね」とMICKEY。「まだ時間も早いし、花も最盛期を過ぎたからね」と僕。

そのまま尾根へとクリンソウの株を踏まないように注意しながら登って行く。
すぐに踏み跡もなくなるが、左手の支尾根に登ると植林の仕事道なのか歩きやすくなり
妙高山の東尾根にヤブコギもなく乗れた(10:35am)。
ここからの尾根道は明確な登山道で快適な木陰道。暑がりにはありがたい。

10:50
肩切地蔵尊跡の峠に着いた。あとは朝登って来た道を下るのみ。

11:10
駐車地点。寺の境内でTさん達お二人以外には会わない静かな朝の登山は無事終了。

林道を下り、集落の自販機でコーラを買って一気飲み。「あ~、ウマイ!!」。

流石に下界は予報通り今日も暑い。気温は朝14℃だったのに30℃を超えていた。
ニュースでは熱中症で全国で233人が搬送され、2人がお亡くなりになったらしい。
大分では今日35℃を記録したとか。午前中の涼しい木陰の登山が出来て良かった。

帰路にある讃岐うどんの店でランチにした。
13時半帰宅完了。シャワーを浴びてサッパリ。

明日は早朝4時半から、堤防の草刈りと車の洗車とワックスがけを涼しい内にする予定。
     
     
本日の駐車地点から神池寺大覚殿までのルート
(大覚殿からクリンソウ自生地ルートを除く) 
クリンソウ自生地はノボリや看板で公開されている
今後も踏み荒らしや盗掘が無いように願っている
 
  この1つ前は「【但馬】大カツラと大トチとあがりこブナの新緑シャワーの蘇武岳」の記録です