【但馬】大カツラと大トチとあがりこブナの新緑シャワーの蘇武岳
【日 程】2014年5月24日(土) 【山 域】兵庫県豊岡市 蘇武岳 【コース】万場スキー場・登山口-巨樹の谷-蘇武岳(1074.4m) -一ツ山(997m)-大杉山(1007m)-あがりこブナ-第5カーブ 【メンバー】MICKEY・矢問 |
ブナの新緑をこよなく愛するMICKEYの「新緑のブナ林に行きたい」という要望もあり、 2006年6月にも行った大御影山に行こうかとも思ったが、高島トレイルとなってからは人が 多い山域となったためにMICKEYからは「人が少ない山が良いわ」と、あっさりと却下された。 それならばと、冒険家植村直己が愛した山、蘇武岳のブナ林が最高の時期と思うと提案。 僕は3年前の11月にもあがりこブナを見に行った。そのブナも今の時期なら新緑の葉を 元気に出しているだろう。MICKEYが愛犬ヴァイザーとともに登ったのはもう15年も前の9月 だったのでブナの新緑の時期ではなかった。しかも「あがりこブナ」は初めてという。 「蘇武岳のブナを楽しむなら、今でしょ!」と前夜に家を出て、道の駅神鍋高原で車中泊。 北近畿道の工事で青垣から山東までは迂回の為、予定より時間がかかった。 その分、まったく無料区間ばかりだったので安上がりになった。 空には無数の星が出ている。「すご~い星空!アルプスのテント泊の時のような星空!」と 見上げるMICKEY。明日朝は放射冷却で冷えるだろう。暑がりにはありがたい。23時半就寝。 4時半に起きて洗顔やトイレを済ませて万場スキー場へと移動。早朝のブヨが出ない時間 に沢筋のトチやカツラの巨樹の新緑を楽しみながら登るために、第1カーブの上の第2カ ーブのふくらみに停車。下山は第5カーブから戻る予定にしている。 |
駐車地点から、朝日が東床尾山方面の稜線上に出る前の赤みが空を染め出している。 気温は10℃ほどの冷えた朝だ。 |
5:05 タニウツギの花が沢山咲いている。 第一カーブのところに以前は無かった「蘇武岳・大杉山 登山口」という道標と地図看板が 豊岡市の日高神鍋観光協会によって作られている。「この山も整備され始めたのだな・・・」 今から歩く予定の名も無い谷を「巨樹の谷」と記載されていた。 |
3段ほどの口ノ滝という小滝あたりにもタニウツギや、ヤブデマリやトチノキの花が沢山 咲いている。サワグルミも雄花を沢山ぶら下げている。 登山道の分岐の中ノ滝。3年前にも見たけれど、しばし滝の見学(5:20am)。 ルートは滝手前の右手を登る。新緑の淡い緑色が綺麗だ。 |
5:25 大きなカツラの木。「夫婦カツラ」と表示板。左が雄で、右が雌とある。 「カツラは雌雄異株の木で、葉が出る前に花弁もない小さな赤い花がさくけど、今年はもう 葉もしっかり出てるし、花は終わったようだな」と僕。 「秋の落葉時はカラメルのような良い香りがするよね。マルトールだったよね」とMICKEY。 この谷筋にはカツラやトチの巨木が点在している。早朝は鳥の声が多くて良い雰囲気だ。 |
幹回り7m10cmあるというトチの巨木から登山道は山腹を登っているようだが、僕らは 沢筋に戻り沢沿いに詰めることにした。登山道が整備されていない頃は、みんなこの 沢筋を登って行ってたのだ。 「どうせ、もう少し上で、さっきの登山道ときっと合流するから」と僕。 スマートで背が高いサワグルミの木も沢山の雄花をぶら下げている。 「ブッポウソウが鳴いてる」とMICKEY。「はずれ~。ああ鳴くのはコノハズク」と僕。 |
水量も少ないし、それほど難なく登っていける沢筋。早朝はブヨも出て無くて涼しい。 だんだんと傾斜がたってきたら登山道と合流した。 トチノキや花を沢山付けたガマズミ。 「もう少しで林道とぶつかり、立て札だらけの登山口にでる。そこからはブナ林が続くよ」 「やった~。ブナの新緑を私は楽しみに来たのだから。」とMICKEY。 |
6:25 林道に出た。登山口でもある。 ここは3年前に下山で使った道なので、まだ記憶に新しい。右手の登山道に入る。 ハウチワカエデがまだ風散布されていない沢山の翼果をつけている。 イワカガミもまだ少しだけ咲いている株があった。ブナ林が始まりMICKEYはご機嫌。 「あ~、ここにずっといたいわ~」と言うので、行動食をとりつつ休憩することにした。 |
スーッとスマートなブナ、どっしりしたブナ、二股になっているブナ、ブナ林が続く。 ピィーっと鹿の警戒音。斜面を鹿が走って行く。白い尻尾が最後まで見えた。 7時丁度にカッコウが鳴きだした。まるで柱時計のように。それからずっと鳴いていた。 「カッコウが鳴くと晴れになり、ホトトギスが鳴くと雨になる、と本にあったな」と僕。 左手斜面にタムシバの白い花がまだ咲いてる木があった。朝の涼しい風が心地よい。 「すごい雲海!」とMICKEY。左手の木々の間から雲海が広がっているのが見える。 「山頂に着くまでには消えるかも知れない。山頂からも見えたら良いのになぁ」と僕。 |
7:40 蘇武岳 山頂。1074.4m。東の方はまだ雲海が広がっている。「おお~、すごいなぁ」 誰も居ない山頂でのんびりと景色を楽しむ。今まで登ったことのある山々がよく見える。 15年前に登ったのに、記憶にないというMICKEYにスマホでその時のレポを見せた。 「愛犬を連れていたので、山の記憶よりワンコの事に集中していたのだろう。」と僕。 無線機も430MHzFMは静か。ID-31をD-STARにしてみると津山RPTがQSO中だった。 3年前はVX-8でAPRSを発信したが、今回はその後継機のFT1Dで発信してみた。 鳥取のJH4MGU-10局のI-GATEに飛んで成功。 8:20 下山開始。3年前に登りに使ったルートで北上する予定だったが、今日登って来るときに 大杉山への道標が少し下にあったというMICKEY。今日はそれを歩いてみることにした。 3年前にはなかった大杉山への道標。斜面をトラバース気味に次のP997mへと向かう。 「3年前はP997mに寄らずにその西斜面をトラバース気味に巻いて南下した。」と僕。 |
P997mもなかなかのブナ林。ここを「一ツ山(金山)」と呼ぶらしき道標が立っていた。 ブナの稚樹が沢山芽生えている。あちらにもこちらにも、すごい芽吹きだ。 「芦生でやっているブナの調査を思い出すね」とMICKEY。来月またその調査もある。 地形図で見ると、北へ行くたびに出るコブ(ピーク)を二ツ山、三ツ山、四ツ山と名付けて いるように道標が立っている。 |
9:30 大杉山。1007m。 「大杉山ということは、あの大杉がこのピークのすぐ東下にあるから大杉山と呼ぶのかな」 今までのピーク同様に、これまた3年前にはなかった山名札が立っていたのだ。 景色を見てから東へと下ると、その大杉がある。周囲にロープが張ってあった。 保護しているのかも知れない。ここを少し下ると「9合目」の道標。 僕らはこの登山道のまま中ノ滝の分岐に向かって下って行かずに、北北東のやせ尾根に乗る。 ジワジワと左へと進路を変える。「これ、ほとんど人が通ってない感じだけど・・・」とMICKEY。 「心配しないでついてきて。3年前はここを登って来たんだから。あがりこブナが点在するCa720m 地点にこの尾根は向かっていくから」と僕が先に下って行く。 |
前にはなかった倒木が2~3箇所あって少し通りにくい所もあったが、広い斜面に出てきた。 どっしりとした、あがりこブナが出始めた。 「根の出ている斜面側に行くと滑りやすいから左手を通って」と言うも、MICKEYは「根の ある方が階段状で下りやすい」と聞かずに下り始めたものの、少し滑ったとたんにスト ックが手から離れて斜面にスベリ落ちていった。「あ~あ・・」MICKEYはザックを置いて ストックを回収に慎重に斜面を少し下って行った。「回収完了」とMICKEY。 10:10 あがりこブナ。力強いごつごつした太い幹。綺麗な新緑を元気に出していた。稚樹もある。 ここでゆっくりとお茶タイムにした。コーヒーを沸かし、バームクーヘンでまったり。 |
すぐ南側の沢筋にはもう5月の下旬だというのに分厚い残雪が見える。見に行ってみると 2m以上の厚さがあり、水が流れるところがトンネル状になっていて人が立てるほどだ。 |
そのままその沢筋を下っても同じだったが、MICKEYが下っている尾根へとトラバース気味に 戻り、北側の沢筋沿いに東へと踏み跡を拾い、第5カーブの所へと簡単に出られそうだ。 歩きながら、直ぐ下には3年前にスタートした時の第3カーブからの踏み跡らしき道が見えた。 「第3カーブから入って進んで行ってしまい、途中で苦労してこの道への斜面を登った」と僕。 第5カーブに出る手前からはタニウツギのすごい群落で、花が一杯咲いていた。 11:15 第5カーブに簡単に出た。第4カーブをショートカットして第3カーブへ。車が見えた。 「スタートから下山まで、誰一人会わずに静かなブナの新緑の山を満喫できたわ」とMICKEY。 11:25 第2カーブの車に到着。下山完了。朝は暖房していたのに、今は冷房するほどの気温。 流石に豊岡市。山を下ると朝とは18度違いの28℃になっていた。暑い!! |
神鍋温泉「ゆとろぎ」 | 但馬高原植物園 |
昨夜、車中泊した道の駅・神鍋高原に行き、先月20日にリニューアルオープンした ばかりの温泉「ゆとろぎ」で汗を流す。 休憩室の木の香りも良い。ボイラーも林業の町らしくエコ仕様。 時間的にも良かったのか、完成して1ヶ月の真新しい温泉を、貸し切り状態で利用できた。 温泉を出てレストランはバイキングで大賑わいだが、僕らは軽く「卵かけごはん」を頂いた。 今日のオプショナルツアーは癒やしの森といわれる「但馬高原植物園」にした。 この植物園の特徴は、平地植物の上限、高地植物の下限、南方植物の北限、北方植物の 南限であり、湿度が高くて植物に最適な環境を備えているらしい。 登った蘇武岳の西側にある。瀞川山に登ってから14年ぶりの「木の殿堂」の前を過ぎれば 但馬高原植物園だ。 13:25~15:00まで、植物園内で色々な木々や植物を見て触って嗅いで楽しんだ。 |
この山域の多くの生物を培い、園内にも通っている「カツラの千年水」は、瀞川山(1039.3m) の中腹にある瀞川平の一角から、年中良質の水が湧き、太古より大切にされてきた。 カツラの木がこの水を呼び寄せたといわれ、現在、園内の知池の大カツラの巨木の上部から は、1日5,000トンもの自然水がコンコンと湧き出て、カツラの根間を通って流れている。 水温は年中10℃前後、無菌のため腐ることもなく、まろやかな水で、コーヒーを入れた り、水割りを作ったり、ご飯を炊くとかなりおいしいくいただけるし、肌に優しいので、 赤ちゃんの産湯等に適しているともいわれている。飲むことができるようカツラの木の近くに コップも複数個置かれている。「おいしいね」と僕らも飲んだ。 (植物園前の道路沿いには、自動販売機が設置され、20リットル100円で購入可。 カツラの千年水は平成20年6月に環境省が選ぶ「平成の名水百選」に認定された) 「これ、見て!」とMICKEY。大カツラのすぐそばに姿勢の良い立派なアシウ杉が立っている。 この時期に特に美しいと言われるのが、ヤマフジとその下に広がるムラサキサギゴケの絨毯。 高原に咲くヤマフジは、藤色が深くサギゴケのグランドカバーを引き立てる。 花期は短いのでこの美しい光景を見ることができるのはほんのわずかだが、今年のように 春の訪れの遅い年は、幸運にもまだ見ることが出来た。普通のフジとは逆の右巻き蔓だ。 ハナイカダも丁度花が咲いていた。初めてその雄雌の花を見たMICKEYは感動していた。 また、ナナカマドも丁度白い花を咲かせていた。ナナカマドの紅葉や実はよくアルプスでは 見るが、花の咲いている時期はなかなか見たことがなかったので良かった。ツリバナも花を 沢山付けていた。園内は広く、その他にもいろんな木々や花が楽しめて飽きない。 |
帰路では、道の駅・ようか但馬蔵で30分間昼寝をして、昨日同様に北近畿道を使った。 氷上ICで下りて、バイエリッシャーホーフでソーセージと焼き豚を購入。店を出たとたん APRSで僕の車の走行位置を見て下さっていた、すぐ近くの丹波のたぬきさんから無線 コールが入り(17:20)、しばらく楽しいQSOをしつつ車を走らせた。道は空いていて快走。 18:45帰宅完了。夕食に出たバイエリッシャーホーフの焼き豚やソーセージが美味かった! |
本日のルート |
この1つ前は「【六甲】有馬三山から花盛りの高山植物園へ」の記録です |