沢【芦生】芦生研究林・小ヨモギ谷から七瀬出合植生調査溯行
注:事前に「芦生研究林」の許可を受ける必要があるルート
【山 域】 芦生/京都大学芦生研究林 【日 時】 2015年5月30日(土) 【メンバー】F氏、MICKEY・矢問 【コース】 須後-小ヨモギ谷出合-小ヨモギ谷-林道八宙中山線 -七瀬中尾根分岐-七瀬-須後 |
今日は6時半に須後で待ち合わせ。ヒメシャガ等の植生調査。 ヒメシャガ(Iris gracilipes)は、京都府のレッドデータでは絶滅寸前種で絶滅危惧1類。 京都府内ではもともと自生地が少ないのに、観賞用に採取(盗掘)されることによりほとん ど見られなくなったという。シャガの花に似ているが、名前のとおり小形でかわいい感じ の花である。 シャガは3倍体植物なので実を結ばないらしいが、ヒメシャガはよく結実するらしい。 実のできないシャガはどんどんと生育地をひろめるのに対して、実のできるヒメシャガが 絶滅に瀕しているという。 |
MICKEYは次男のネットの音で1~2時間しか眠れず寝不足のまま4時前に家を出る。 国道477号線で「うわっ」「うわっ」と鹿に2度遭遇。ぶつからずに済んだ。 かやぶきの里で、持って来たコンビニ弁当を食べるが曇り空で11度と肌寒い。 須後で準備をしていると1台の車から男性。「釣りですよね。かぶらないようにと思い どこを狙われるのかと」と聞かれた。「沢装束ですが植生調査です。許可を得てますか」 としばらく話す。そうこうしているとFさんの車がやってきた。I君と他に男女の学生も 乗っている。I君達3人はFさんの車を借りて調査へ。18時半に須後で待ち合わせ。 6:30 僕らはトロッコ道へと出発した。 まずはトロッコ道を小ヨモギ小屋跡まで歩く。晴れたり曇ったりの空なので涼しい。 その間にも色々な草本類の説明をFさんから受ける。覚えているもの、忘れているもの。 |
7:40 小ヨモギ小屋跡の下の川原で沢準備。渡渉して小ヨモギ谷へと入る。大ヨモギ谷は入った ことがあるが、ここは初めて。小滝が続くが倒木や斜面からのガレが詰まっている所が 多くて大きな滝はほとんど無い。雨が少なかったのでバイオフィルムにより芦生独特の滑り やすい足場やホールドが続く。しかも逆層なので手のホールド探しが容易ではない。 MICKEYが苦手とする沢筋ともいえる。「ごめん、タワシは車中に置いてきた」と僕。 今回はFさんがぬめり取りのブラシを持参されている。大きな滝は無いので、Fさんは6mm 20m、僕は8mm20mのロープとシュリンゲを念のため持参。MICKEYと僕はハーネスも着用。 |
1mほどの小滝が続き、大きな滝はないが、ときおり2m~3mの滝が現れる。 隣の大ヨモギ谷とは違い(といいつつも、大ヨモギ谷を溯行したのは11年前だが)、この 谷は滝の両側に草付きやつかめる木がなく岩肌か岩屑のザレ斜面。左手を巻くにも ちょっとやっかいなザレ斜面がありFさんが先行してロープを出して下さった。 他の2~4mの滝はFさんと共に、逆層の中から微妙なホールドを探して登ったが、クライ ミング練習をしばらくしていないMICKEYは登れずギブアップ。僕が先に登り上からロープを 出してMICKEYを確保すること2滝。お助けシュリンゲを出すこと1度であとは各自で進んだ。 「あっ」と愛用の木の杖を沢筋に落とされたFさん。身軽に2段ほど下って回収へ。 途中に滝左手の岩肌沿いの倒木上をFさんが先行。Fさんの体重には耐えられた倒木は、 僕の体重には耐えられずに岩肌をずり落ちて僕も2mほどずり落ちて尾骨を岩で強打。 「う~ん・・・」痛さでしばらく立てなかったが、足には幸いダメージが無く、その後も溯行を 続けられた。 この谷筋でのFさんの目的の草本調査では、以前の調査時より斜面が崩れたり倒木によ り激減していた。鹿の死体も1体あった。ナガレヒキガエルのオタマジャクシが沢山いた。 ハルゼミが鳴いていた。 |
10:23 Ca730m奥の二俣。あと標高約80mで稜線。詰めていくのは左俣だが、右俣へ入り左岸 尾根を稜線へと登る。「う~ん」打った尾骨は登り時に左足に力を入れると痛みが来る。 沢筋では元気だった寝不足のMICKEYの様子がいつになくおかしい。得意の登りにバテ ている。 Ca901mまでの尾根筋にも立派な芦生スギが点在する。ギンリョウソウもあちらこちらに 顔をのぞかせている。 |
11:00 久しぶりに出会った「九○一」と彫られた木は、サルノコシカケが沢山ついて分解が進ん でおりほとんど枯れていた。ここからは尾根道をぐるりと回るのでは無く、林道へと向かう。 ツツドリ、ジュウイチ、カッコウが鳴いている。兵庫の山ではカッコウの声はよく聞くが ここ数年、芦生の森ではカッコウの声を聞くことはなかったとFさん。 |
11:25 林道八宙中山線に出た。林道は歩きやすいが、我ら夫婦には天敵の熱い日差し。タニ ウツギや木々の日陰を狙って歩くものの陰の無いところも多い。シロシタホタルガの幼虫が サワフタギを食草としていた。5月17日に有馬富士公園でもサワフタギにこの幼虫がいた。 その他、沢山の花を観察しながら歩くものの、稜線からこの長い林道歩きでMICKEYの バテはさらにひどくなったようだ。水分もいつになく沢山飲んでいる。「大丈夫か」と僕。 「寝不足がたたってる・・どうも今日の行程は歩けそうもないわ。どうしよう」と言う。 林道終点からまた標高を80mほど最後に登らないといけない。正午も過ぎている。 登り口で「もうダメ。登れない」とMICKEY。「ルートを変えるしか無いかな・・」と僕。 60mほど登った斜度がゆるんだところでFさんにランチ休憩にして貰った。 |
寝不足バテ+シャリバテにならないようにと、MICKEYは無理に口に食料を運んでいる。 「足手まといになるし、林道に出てけやき坂に行き須後に1人で帰る」とMICKEY。 MICKEY1人では迷う危険もある。ここからFさんと別行動を結論。Fさんも小ヨモギ 谷で予定より時間を取られたため、少し短縮ルートで調査予定地をチェックしてI君との 待ち合わせ約束の6時半に大きく遅刻しないように須後に戻るべく、先に出発された。 しばらく涼しい木陰で休んでいると、MICKEYの顔色も良くなった。林道回りで須後に 戻るのも暑い。地形図をにらめっこ。七瀬に向かって尾根から斜面を下るルートをとるこ とにした。昔はこの斜面もジグザク道があったが今は全く消えている。七瀬からはトロッ コ道で暑くない。Fさんの進んだ方へと進む。 Ca892m付近の空洞木(13:05)を過ぎて東南東へと進み、傘峠との分岐尾根でCa843m方面 の南尾根を進む。この前沢山咲いていたウワミズザクラの花はすっかり終わり、ヤマボウシ の花が沢山咲いていた。 Ca843m(14:00)までは楽勝かと思ったこの尾根も「たったいま剥ぎました」というような 真新しいクマハギが四方八方にある。「どうも近くにいるような・・・・」と僕たち。 「熊でるなよ~。人が通るよ~」と僕とMICKEYは声を出しながら進んだ。 さて尾根筋から南西支尾根を下る。もちろんかつての踏み跡道は無い。シャクナゲやアセ ビのヤブが次から次に現れて前が見えないところもある上に、ブヨがやたらと多い! 地形図ではわかりにくい急斜面が出たりとトラバース。下りが苦手なMICKEYが遅れだ した。そしてヤブの向こうで怒り出した。「こんな下りをどうして選択したの!」と。 熊や鹿が驚くくらいの声で斜面の上と下で口論しながら下る。ぱらぱらと雨が降った。 |
ヤブを抜けたら、こんどはザレ急斜面。つかむものは10mごとに点在している木のみ。 20mロープをダブルにして3ピッチ。やっと斜面も下りて七瀬谷の沢に出た。 「ありがとう!!」と怒っていたMICKEYも機嫌を直してくれた。水が無くなり脱水気 味のMICKEYは沢水をガブガブ飲んでいた。 15:40 七瀬出合。「ひょっとしてFさん来ないかな」と由良川上流を見ると、なんとFさんの姿が 見えるではないか!「速い~!流石に芦生のスーパーマンねぇ!」と驚くMICKEY。 やってきたFさん。「けやき坂へ行かずに七瀬へ。うまく合流できましたね」とFさん。 Fさんも短縮ルートで調査を終えられて、お互いに無事を確認出来たことは良かった。 |
七瀬のホオノキは花を沢山付けていた。 沢靴から履き替えて(16:05)、トロッコ道を須後まで進むのみ。 「もくもくと歩けば2時間半で須後だな」と僕。「水も飲んで生き返った」とMICKEY。 カズラ谷出合(16:45)をジャブジャブ渡り、小ヨモギ小屋跡で少し休憩(17:30)。 ケヤキの林を見ながら涼しく休憩。アカショウビンが鳴いている。 18:25 研究林ゲートに着いた。そして約束の時刻に山ノ家の駐車場。I君達も到着していた。 彼らも色々調査や研究用の採取をされたようだ。Fさんと植物談義をされている。 「Fさん、ありがとうございました。ではまた!」と、駐車場の協力金を入れて別れた。 いつものように河鹿荘で汗を流してかえで御膳と鹿カツを食べてゆっくり帰路についた。 「バテてしまってFさんの足を引っ張ってしまったわ。申し訳ない日だった・・・」とMICKEY。 「まあ、そんな日もあるさ。七瀬へのあの下り、よく頑張ったな」と僕。 「うわっ」帰路でも道路で鹿に遭遇。ぶつからずに済んだ。 二人とも寝不足で眠たくなり、途中のコンビニ駐車場で1時間ほど寝てから帰宅(23:30)。 MICKEYも僕もおでこと腕に10箇所ほどブヨにやられた。ブヨに弱い僕は、いつもの ごとく翌日には赤く大きく腫れた。「痒い、痒い」と2~3日は言いまくった。 |
Fさんに指導して頂き「出逢った花」たち 【咲き始め】ミズキ・コアジサイ・ヤマボウシ・ミズタビラコ・ギンリョウソウ・ フタリシズカ・デワノタツナミソウ・ツクバネソウ・コナスビ・ミヤマヨメナ 【盛り】ホオノキ・ツルウメモドキ・タニウツギ・ミゾホウズキ・ハナニガナ・ジシバリ シライトソウ 【咲き終わり】ヤブデマリ・アカモノ・トチノキ・キンポウゲ・タニギキョウ・キクムグラ ヒメシャガ・サルメンエビネ その他観察したもの/ヒメザゼンソウ、ユキノシタ、クロボシヒラタシデムシ、サワ ダツ、ヤマボウシの実生、ヘビノネゴザ、オシダ、ノギラン、イワハリガネワラビ、 オオバノトンボソウ、ササユリ 等々 |
この1つ前は「【三田市】有馬富士公園での研修会」の記録です |