沢【芦生】古屋から由良川 大ツボそして岩谷左俣
事前に入林許可が必要なルート
【山 域】 古屋-芦生研究林 ★「入林許可証No.10」にて調査入林 【日 時】 2015年9月12日(土) 【コース】古屋06:50am-06:35am岩谷峠-10:10amP941m - 12:00am由良川 大ツボ北地点- 12:50一ノツボ(昼食・別行動13:00~) -二ノツボ-三ノツボ-13:50四ノツボ-シカメコ-14:05渕谷出合 (15:00F氏と再合流)-15:15岩谷出合-岩谷右岸枝谷-16:10江丹国境尾根 -水道施設尾根-17:15水道施設-17:50古屋 【メンバー】F氏・矢問 |
今月中に芦生研究林内のタヌキの溜め糞場の調査の目処をつけたいとおっしゃるFさんと 朝7時に古屋で合流のため家を4時半に出た。名神高速が混んでいなければ2時間で着く。 明王院前のトイレ横で持参した朝食の弁当を食べて、古屋へと向かう。気温14℃。 6時半に古屋の橋手前に到着。山に霧がかかっているが、今日は晴れるだろう。 アカショウビンの鳴き声を聞きながら、靴を履き替えて用意をしていると、Fさんの車が やってきた。「おはようございます」。 |
6:50 出発。保谷林道の草本類や木本類を観察しながら歩く。 Fさんとこのルートを僕が歩いたのは2年前の10月で、Hさん、Tさん、MICKEYも一緒だった。 数日前の雨のために林道渡渉点の水量が以前よりも多く、飛び石利用やFさんの仙人杖を 借りたりして進んだ。「ピィーッ」鹿の警戒音が聞こえた。 |
六甲にも多いヤマジノホトトギスが沢山咲いている。この花の中や花柱には色がつかないが、 神戸西部や北部に多いセトウチホトトギスは花の中が黄色く、花柱には紫色の模様がある。 直ぐ横に開花後数日経った花もあり、雌しべの先が雄しべより下に垂れている。 この時期に虫が花に潜り込めば雌しべの先が虫の背中にふれる。 このとき虫の背中に花粉がついていたらその花粉が雌しべの先につき受粉する。 ヤマジノホトトギスは、雄しべが先に活動期を迎える「雄しべ先熟」の花なのである。 |
知識の少ない僕向けに、Fさんの生き字引的な解説付きの観察と調査は、いつものごとく 足が前になかなか進まず時間ばかり進む。いろいろな仮説などを話したり聞いたりしながら 歩くのは実に楽しい。岩谷峠にまでも、いろいろ観察するために時間はどんどん過ぎていく。 ただ、今日は途中から別行動部分がある。僕は沢沿い、Fさんは尾根の調査で再合流する。 今朝の田歌の水位計は一昨日からは下がったと言ってもまだ59cm。 |
2年前の7月にMICKEYと沢沿いで中山まで行ったときでも水位が51cmだった。 あの時は水が濁っており、底が見えずストックで座頭市風に探ったり渡渉の際に強烈な 水圧に二人とも相当苦しんだ。それより今日は水位が高いので、大谷から岩谷までの間も あの日より水量はだいぶ多く水圧に苦しむ場面が容易に予想できる。 渕谷出合いでの、Fさんとの合流までの単独溯行に要する時間が水量により読めないが、 4つのツボとシカメコの通過を慎重に、渕谷まで行きたいと考えている。 |
P941mに着いた。「もう10時を過ぎましたよ」とFさんに伝えた。 このあとの予定の行程を考えると時間がちょっぴり心配になった。 「うわっ、ちょっとペースを上げましょうかね」と笑うFさん。 といいつつも、ポイントポイントで丁寧に説明や仮説を話してして下さる。 |
Fさんが雪の頃に使っているという由良川の大ツボ付近への下りは初めてであった。 最後は地形図で見たとおりなかなかの急下降。ロープを出そうか迷ったが・・・・。 少ない木をつかんで、大ツボ北側の狭い岩の上にピンポイントで下るとは流石である。 狭い岩上で二手に分かれて沢装束に切り替えた時には12時を過ぎていた。 そしてFさんがすごい水量と水圧の中、ましな部分を先行して渡渉し右岸へ。 2年前にこの流れの中でMICKEYがストックを水圧で流してしまった所だ。 「あっ、カメラがない」とFさん。斜面の急下降時に落とされたのかもしれない。 「探しに行かれるなら待ちますよ」と僕。 「今の長い急な斜面を登り直す気力も時間的余裕もないしなぁ」と潔いFさん。 「今のルートはFさんくらいしか通らないので、盗られる心配はないですね。」と慰めに もならないことを言う僕。貴重な記録写真が沢山データとして入っているカメラなのだ。 「おや?」ウエストポーチからもう1台のカメラを出された。 ここから一ノツボまでも沢沿いを観察する。苔やシダもいろいろ学べる。 ヨツボシモンシデムシの背中には便乗ダニが沢山いた。 一ノツボまで由良川を溯り、一ノツボを左岸から越えて「ランチタイム」を提案。 2人ともササッと食べて、Fさんはここから尾根を登るために長靴に履き替えられた。 |
ここからは予定通り別行動となる。FさんはP941m西尾根まで登り、再び下って 渕谷出合で、沢筋を通っていく僕と尾根から下ってくるFさんと合流する予定。 「絶対に無事に合流しましょうね」とお互いに言い合う。 「合流時間の予定は14時半、いや15時に設定しましょう。」とFさん。 「了解。この水量と水圧の中をうまく溯行できるかな。慎重に行きます」と僕。 |
ここからは由良川本流溯行の核心部とも言える一ノツボから四ノツボまでとシカメコが 続くのだ。 ここ数年でも今日より多い水量の時にもMICKEYとも溯行したし、Fさんともキスミレの 調査で溯行しているのでへつりルートやホールドはまだ頭に入っている。 MICKEYと来た増水時とは違い、沢底も見えるので、自分でも驚くくらいにスムーズに 通過できた。 |
心配した四ノツボもシカメコも、すごい水圧でやや押し流され気味になったが無事通過。 再度現在地の確認をしようとズボンのポケットのマップケースを出そうとしたら、ポケット が開いていてマップケースが無い。「あっ、さっきの水圧の流れを通過時に流してしまっ たのかも」ザックから予備の地形図を出して確認。いつも地図は予備を持っている。 「合流時間まで時間が余りすぎるなぁ」と周囲の景色を楽しんだり、タヌキの溜め糞は ないかと観察したりしてペースを落としたが、もう直ぐそこが待ち合わせの渕谷出合だ。 14:05 渕谷出合に着いた。沢水を飲んで、休憩体制に入るべく渕谷出合の少し先の由良川の 中にある長細い岩の上へと登った。 うっすら青空がのぞくが太陽の光が降り注がないので、20分もすると濡れた下半身が 沢風で冷え切ってきた。「やばいな」ストレッチをするも、走ったりして体を温められる 平地はない。まだ帰路には岩谷を登らないとならない。太ももがキンキンになってきた。 「これでは太ももが攣ってしまう。迷惑をかけてしまう。」と芍薬甘草湯を飲んでおいた。 15:00 「ゴソゴソ」という音とともにFさんの姿が渕谷上の斜面にちらりと見えた。 お互いに無事を確認し笑顔になった。Fさんはここでまた沢足袋に履き替える。 Fさんが通ったルートは、僕も以前から気になっていた尾根なのでその様子も伺えた。 |
ここから少し由良川を溯行しつつ右岸を観察。イノシシの糞が沢山ある。これも観察。 岩谷出合で由良川を左岸に渡った。 「岩谷は単調なので、少し沢登りを楽しむために岩谷右岸枝谷を経て江丹国境に上がりま しょう。そのあと水道施設尾根を下って林道に出れば早いし」とFさん。 |
岩谷は何度か通っているので知っているが、右岸枝谷は初めてで楽しみである。 このルートでもいろいろなキノコやシダや植物の説明をして下さった。 いくつかの小滝があり、ホールドもしっかりしているので簡単に登れる。 ただ、芍薬甘草湯を飲んでおいたから攣らないものの、太ももが中途半端に痛む。 |
江丹国境直前の水が切れたあたりから痛みがどかどん増強してきた。 「ちょっと休憩しても良いですか」と再度芍薬甘草湯を飲んで、沢靴から 軽登山靴に履き替えた。 |
江丹国境に乗り、水道施設尾根へと下る地点で再度休憩。 Fさんから大きなミカンゼリーを頂き、息を吹き返すことができた。 この下りルートも初めてだ。アセビやエゾユズリハがうるさい地点が点在しているが、 Fさんは全く止まることなくルートをずれずに下って行かれる。後ろから時々GPSで 確認しているのだが、感心してにやけてしまうほどルート取りが正確である。流石だ。 途中で林業ワイヤーの錆びた滑車が落ちてあった。「これが目印なんです」とFさん。 「こんな小さなピンポイントへと、全くずれずに来られるとは恐れ入りました」と僕。 方向転換したあともGPSで後ろから確認していると、水道施設へと確実に向かっている。 林道に出て、Fさんは川に降りて沢足袋を綺麗に洗われた。 |
17:50 のんびりと林道を歩きながら、イワヒメワラビの粘液に関してのお互いの仮説を話したり して、車の所に到着。 犬の散歩をされていた老人とFさんは親しげに話されている。 鹿の被害を伺うと、畑の作物は猿にやられる方が多いという。ゴーヤと唐辛子は残るとか。 次に軽トラで来た女性がFさんを見るなり停車してトチの実の出来具合を話されている。 また次に来た軽トラの男性もFさんを見て停車。親しくお話しされている。 この地に何年も通われているからこその地元の方達との人間関係だろう。素晴らしい。 国道の梅の木までともに走り、Fさんは右(南)への帰路。 僕は今高速に向かっても渋滞タイム。冷えた体を温めて汗を流そうと左(北)へとハンドルを 切り「てんくうの湯」に向かった。もう辺りは暗くなった。 てんくうの湯につかり、夕食を済ませて、空いた時間の湖西道路と名神高速を爆走し、 21時半に帰宅完了。 多くのことを学べた充実した1日だった。Fさんに感謝。 |
【本日観察したもの】 (希少な植物に関しては下記に記さないもの数種あり) ヤナギタデ、イヌタデ(ピンクの花)、イヌコウジョ(小さな花)、タニソバ(白い花)、 イボクサ、ヤマジノホトトギス、シナノキの?、ハイイロチョッキリがドングリを 葉ごと落としたものを観察、ドングリの穴、ホツツジ(白花)、サルナシ、ヤマイヌワラビ、 キクバヤマボクチ(裏白い毛・火打ち石に使う)、オニヒカゲ、ワラビ(絶滅危惧種)、 ウロコダケ(?)、フサヒメホウキタケ(?)、イケマ(ガガイモ科)、ミヤマベニシダ、アシグロタケ、 ヒメコマユミ、イイギリの葉、フウリンウメモドキ(?)、エゾユズリハ(幼樹の葉裏は白い)、 シロダモ、ホソバイヌワラビ(細かい毛の観察)、ウスヒメワラビ(繊細な形)、ミズメの実生、 リョウブの実生、ウリハダカエデの実生、ウスキモミウラモドキ(?)、カレバキツネダケ、 チョウジチチタケ(乳がクリーム色になる観察)、フウセンダケ(裏が鉄さび色)、アカイボタケ、 ウスタビガの繭、ウワミズザクラかミズメの枝か?(細いツノ状のものが残る枝が沢山落下)、 シラガゴケ科仲間、ヤマグルマ(倒木更新・実生)、ムネアカオオアリ、アカイボガサタケ、 ツルアリドオシ(赤い実)、アオハダ(赤い実、2年ごと?)、 タヌキの溜め糞にオオウラジロの実が沢山、マツグサの実生、アオダモの実生、 ナナカマドの実生、コミネカエデの実生、オオウラジロの汚い木肌観察、ナツエビネの実の観察、 シノブガサ、ベニヒカゲ(ビロードのよう)、チシオタケ(切ると暗褐色の液)、シノブ(シダ)、 シロダモの葉と実の観察、ホコリタケ、ヒメモチの実生、サラサドウダンの大木、 ヤマグルマ(鹿が好き)、カワリハツ、アオハダの短枝の伸びかた観察、クロソヨゴ、ツミタケ、 ミヤマカンスゲ、コバノイシカグマ、ミヤマイボタ、ムラサキフウセンタケモドキ、 ハクウンボクの倒木、タラノキの実生、カバイロツルタケ、ドクベニタケ、サルナシ、 ホソバカンスゲとミヤマカンスゲの鹿の食べ方の差の観察、ホコリタケの幼菌、ツノハシバミ、 サルメンエビネの実、ゴムタケ、ムササビタケ、イワガラミとツルアジサイの樹皮の違い観察、 ウラベニガサ、オオワライタケ、スズメバチとミツバチの攻防観察、ヤマボウシの実と葉の観察、 熊の糞の観察(アオハダの実を食べて種子が沢山)、ベニナギナタダケ、コガネシワウロコタケ、 スギヒラタケ、ミヤマウズラ(ラン)、ヤマザクラの大木、ハリガネワラビ、タンナンサワフタギの 黒い実観察、コウヤノマンネングサ、シノブゴケ、ハクモウイノデ、ヒカゲミツバ、トレンラン??、 イノシシの糞観察、ツリススラン、ナメコ、ウスヒラタケ、サジラン、カラクサシダの毛観察、 ソウシシオニンジンの赤い実、ヒノキゴケ、ホウオウゴケ、アキギリ(紫の花)、サイシンシロガネソウ、 ベンケイソウ、クロモジ、ナカクギノキ、ムラサキフウセンダケ その他貴重な植物等々。 頭の中は完全にパンクしている。393枚の写真を見てまた少しずつでも覚えられたらと思う。 |
この1つ前は「沢【岡山】桃太郎伝説の血吸川から古代山城の鬼ノ城址」の記録です |