沢【芦生】芦生研究林・カヅラ谷出合から中山までの植生調査溯行2018
注:事前に入林申請し、入林許可がいるルートである
【山 域】 芦生/京都大学芦生研究林 【日 時】 2018年4月20日(金)~21日(土)・1泊2日 テント泊 【メンバー】F氏、矢問 【コース】 1日目:須後~カヅラ谷出合-七瀬-大谷出合-マガリ谷出合(テント泊) 2日目:マガリ谷出合-岩谷出合-スケン谷-中山~下谷~須後 |
2010年、そして2014年に実施した芦生研究林の由良川沿いのリュウキンカ(京都府:絶 滅寸前種・近畿:絶滅危惧種A/湿地開発、園芸用採取などが主要因)とオオバ キスミ レ(京都府:準絶滅危惧種・近畿:絶滅危惧種C/森林開発、土地造成、道路工事などが 減少の主要因)の分布数調査を昨年2017年も実施し、昨年は夜が寒くて実につらかった。 今年も実施するとのことでFさんから協力要請が来た。去年は4月29日~30日に実施 したが、前半データの検証もあり、今年は花の開花も早いので1週間ほど早く実施予定 とのこと。しかし、22日の日曜日に大阪森林インストラクター会の箕面の勝尾寺園地 「ふれあいの森」での活動があるため、金土の2日間での調査実施としていただいた。 両種を見つけてはカウンターで数え、地形図に分布数を細かくプロットしていく作業だ。 オオバキスミレが最も良く咲いている5月の連休直前を逃すと、個体を見つけにくくなるが、 今年は桜の開花も他の花も開花が早い。花が終わりかけの所の見落としに要注意だ。 鹿の死体数も同時にチェックするが、この冬はほとんど死んでいないという。 去年の夜の寒さがこたえたので、今年はちゃんとシュラフやカイロやダウン上着も持参。 朝4時に家を出て、コンビニで今朝と昼、明日の昼の食料を調達。 天気予報も明日も晴天予報。去年の雷雨予報とは大違いの幸運な調査日となりそうだ。 |
5:50 美山かやぶきの里は静かな朝で4℃だった。レンゲの花が咲いてきれいな風景だ。 芦生ロードパーク手前に並ぶモミジの紅葉が今年もとても綺麗だ。 春にも紅葉するノムラモミジは今年も見事に葉を展開している。 須後の駐車場で午前7時に待合せだが、6時20分に着いた。Fさんも7時前に到着。 Fさんのカウンターが調子が悪いそうなので、2個をプレゼント。 |
6:55 須後を出発。荷物がずっしりと重い。重さは16.5kg。Fさんは飲み水も1日に200ccしか 要らないらしく小さな小さなペットボトルのみ。僕は1.5Lは1日に飲むので重い。 トロッコ道をカズラ谷出合まで花を観察しつつ歩く。 去年、大きな岩崩れで通行止めになっていた所は、京都府が重機で割り落としたらしい。 |
対岸の山肌にホンシャクナゲがきれいに咲いている。 トロッコ道のヒカゲツヅジも咲いていた。 斜面の倒木に椎茸が沢山出ていた。もちろん研究林内なので採取はしない。 |
8:20 第一関門のトロッコ道が崩れていて軌道を潜るところの足場がさらに崩れていて、重い ザックを担いでしゃがみつつ進むのは僕にとっては至難の業。 「ここに常設ロープを張りたいものだなぁ・・」。 |
8:50 カヅラ谷。去年はこの付近にも所々雪が残っていたが、今年は全くない。 沢靴に雨具のズボンをはいてスパッツをつけ、ストックで足場を支えつつ沢へと入水する。 去年、僕は左岸をずっと担当し、Fさんは右岸を担当したが、今年は逆を担当する。 |
「ひぇ~!!冷たい!」最初はやはり冷たいがすぐに慣れてきた。水量は膝程度。 通常の沢歩きなら歩きやすい場所を選んで遡って行くのだが、この調査ではよほどの通 過不能地点ではない限り、ヘツリや巻きを駆使して担当岸側を行くため、普通は沢登り でも絶対通らないだろうと思われる厳しい部分も越えて行かなければならない。 重い体重+重い荷物を担いだままというのは実に厳しい場面に遭遇する。 |
2種類の植物の個体数を計数するため、2個のカウンターで個体数を数え、前回の記録に 今回の数値を書き足しつつ進むのだが、去年は花が沢山咲いていてすぐに見つけられたが 今年は花が終わりかけの部分もあり葉を見て判断するため、去年以上に時間がかかる。 重い荷物でヘツリもキツくつま先も指先も痛くなる。冷たい水に長くつかって斜面の株数 をカウントしていると足の感覚もなくなってくる。 |
11:20 七瀬で昼食タイム。僕はコロッケパンなどを3個食べた。日陰は涼しくて気持ちよい。 12:50 去年、雷雨が止むまで45分ほど待機した岩小屋を通過。今年は天気に心配なし。 亀や蛇がひなたぼっこをしていた。 この水の中は早く通過したいと思うと斜面に沢山の株が目につき、じっと浸かったままで カウンターでカウントする。これが長い時間になり実に冷たい。 |
16:50 マガリ谷に去年より40分早く着いた。冷えた足がややつらかったがホッとした。 前々回はここまでで1.5Lほど水を飲み、前回は寒くて0.5Lの消費だった。 今年は1Lの消費でまだ500cc残っている。 2段目の台地まで上がり、テントをセッティング。去年、対岸には残雪も多かったが、 今年は全くない。去年の夜の寒さの悪夢は今年はないだろう。「助かった。」 ゆっくりとテントをセットして、水をくんでレトルトカレーとご飯を温めた。 ついでにレトルトのクリームシチューも温めた。満腹、満腹。 Fさんは得意のペミカン入りマカロニカレー。 ダウンに雨具も羽織って、食後に「秋鹿」を少し呑みつつランタンもつけて歓談し、Fさ んには大半を飲んでいただいた。 去年ほどは寒くないものの、やはり日が暮れると一気に冷える。 去年同様に19時半にはテントに二人とも入った。足のメンテをしてシュラフに入った。 今年はズボン下を持参して履き、腰にカイロを貼って寝た。沢の音が心地よい・・・・。 夜中12時半にテント外に出たら「おお~っ!!」、今年ともアルプスで見るような星数 に感動した。 前夜、早くテントに入ったのでこの時間から熟睡できず、うつらうつら。 2日目(4月30日) 4:30 4時半にじわっと明るくなり、テント内の整理開始。沢の音と鳥の声・・・いいねぇ。 去年のようにはテントが冷気で濡れていないのはありがたい。 5時に外に出て朝食準備をした。朝は夜とは別の種類のカレーにした。 ご飯200gとレトルト300g。「これでザック重は、夕と朝で1kg強は軽くなるな」 1Lの水を煮沸して、レトルトの袋を漏斗状に穴をかけて、スポーツドリンクの粉ととも にペットボトルに入れて出発準備。 |
7:00 靴下を履き替えて濡れた沢靴を履き、去年より30分遅れで出発。今日も右岸担当。 スタートから対岸へと水の中に入らないとならない。「つ、冷たい・・・」 天気は晴れ。「今日は、三ノツボに続く、あの岩またぎだけがネック場所だな」 一ノツボあたりで朝日が沢筋に差し込んできた。去年もここでの光芒が美しかった。 大好きな米美知子さんの写真集にも似合う場所だ。今年もうっとりとして立ち止まる。 |
「ここからが由良川源流の核心部だな。」といつもここで気を引き締める。 いよいよ、両岸共険しくなって通過が一層厳しいルートに入るのだ。 ツボ谷を過ぎて一ノツボの右岸はつかむところがない斜面を登り後ろ向きに下るのだが、 足場もつかむところも無く、沢靴でキックして1歩1歩降りたので、つま先も手の指先も 痛いのなんの。花がない斜面だし、左岸を行く方が安全なのは一目瞭然の箇所・・・。 身軽なFさんには簡単な斜面でも、体重差で崩れる怖さでびびりが入り、沢に降りる手 前にお助けロープをお願いした。沢登りでは左岸を行き、右岸は通常通らないルートだ。 二ノツボはさすがに右岸は行けないので、左岸の石垣の下沿いを通り沢へ下り右岸へ。 右岸の岩面から小便小僧のような水が湧き出ている。100均のシリコンコップで喉を うるおした。 左岸とは違い、嫌らしいにっちもさっちもいかないところも出てきて、バックして対岸に 渡渉して回避し、また右岸に徒渉して戻ったりしなくてはならない所が続いた。 出合に大カツラのあるトコ迫を過ぎて、三ノツボ。左岸は2013年の7月にMICKEYも滑り 落ちかけた、あの岩間をまたぐちょっと嫌らしい難所だ。 今回は右岸担当なので、水量が少なかったら水際を上るルート。しかし水量は多くて勢い も強い。念のためFさんが左岸から先回りして上からお助けロープを出してくれた。 次は右岸のいやらしい岩壁のへつり。過去に失敗したことがないのに、手足を滑らせて「ド ボン」。足がつかない深さなので右岸へと泳ぐものの、ザックに押されて難儀した。 |
タテ谷の手前では、オオイワカガミとトキワイカリソウの群落が満開で実に美しかった。 調査個体数も多くなってくるので立ち止まり、上段の台地状の所まで計数するので対岸の Fさんと抜きつ抜かれつ、お互い姿が何度も見えなくなったりする進行になる。 四ノツボからは再び地形が険しくなってくる。ヘツリと股下までの渡渉を繰り返す。 左岸の岩間壁を登るところの下にあった大木が流されてない。 11:30 シカメコは腹まで浸かって5mほど徒渉し左岸の岩に乗り上がる。そしてすぐ先の岩間壁 を登る。ここもやや嫌らしい。今日は念のため、お助けロープを出してもらった。 |
12:40 やっと岩谷出合に着いた。そこで昼食にする。僕はパン2つと行動食。 かつて人が住んでいた地らしく、スモモの大きな木に花が咲いている。 ここまで来ればあとは地形も穏やかになるが、右岸一辺倒で進むため、進みにくいところ も時々あり徒渉を繰り返す場面もでる。 |
13:10 去年より1時間遅れで岩谷出合を出発し、再び調査開始。 ここからも左岸と右岸で群生出現地点が違うので、お互いに抜きつ抜かれつとなった。
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16:00 さて、長い林道歩きが始まる。去年より55分遅い16時ちょうどの出発。 ここからケヤキ峠まで約50分間は疲れた足にはつらい登りがだらだらと続く。 下谷の大桂には新緑、横のヤマザクラは花が咲いていて見事なコラボだ。 Fさんと林道法面に咲く花を観察したり、木からぶら下がる花を観察したり、ブナの新緑 を楽しんだりしながら、林道を歩き続けた。 |
16:50 ケヤキ峠。登りは終わった。3分間の息を整えて水飲み休憩。 法面に咲く色々な花や、ブナの新緑、鳥の声に癒されながら黙々と歩く。 林道右手から大きな鹿が林道をまたいで左手斜面へと走り去った。一尖の牡鹿。 クマシデの雄花が逆光にうまく輝いて美しい。 カスミザクラが満開状態で咲いていた。花柄に毛がある。 18:30 須後のゲートに去年より30分遅い到着だが、まだ十分明るい。 駐車場に着き「お疲れ様でした」とFさんと握手。 Fさんの車に気づいた地元のNさんが駐車場まで来て、しばらく今年の初春の気温や花や 鹿の状況を歓談。去年ほど雪は多くなかったが、気温が数十年ぶりの低さで水道管の支管 ではなく本管が破裂し、しばらく須後では断水が続き困ったとのこと。 駐車料金を入れて明日もトロッコ道を調査されるFさんとともに河鹿荘へ。気温は16℃。 モンベル会員割引で、2人とも河鹿荘のお湯に浸かって疲れた足をマッサージ。 Fさんは明日もトロッコ道沿いの調査のため、先に車中泊地へと出発された。 久々のテント装備を担いでの沢中歩きは疲れる。去年以上に体力が落ちた感じがする。 あまりしっかりした山歩きをしなくなった今年は、テント泊登山はできても、右岸なら右 岸、左岸なら左岸を足場の悪くても進む調査テント泊沢登りにはびびりも入り、そろそろ 危ないかもしれない・・・。去年も同じことを思ったのだが、今年はへつりや巻きでびび り箇所で、3度ほどFさんのお助けロープのお世話になってしまった。 去年の4月からレストランが15時までになったので、楽しみの「かえで御前」は食べら れない。夕食は途中の「得得」であまり満足できない夕食を摂り(次回はその先の台湾料 理店を試そう)、22時半に帰宅完了。 足がロボット状態。玄関に相棒が出てきてくれて荷物を家に運び入れてくれた。感謝。 翌朝(日曜日)は5時に起きて、沢靴などを洗って干し、テントもザックも干して片付けて から、箕面の勝尾寺園地「ふれあいの里」での大阪インストラクター会の活動「樹木名板 の取り付け」と「春の野点」に出発した。 まだ宿題がある。地形図の右岸にカウント数値を清書したものをFさんにメール添付して 送信しないとならない。 また、5月の第一日曜の森林インストラクター兵庫会のFIP研究会の僕の5月の担当樹木 の「オオモミジ」の説明レシピも修正して送信しないとならない。 なんとか今年も怪我もなく、無事沢沿い調査が終了。春の芦生の森を満喫できた。 |
2日間で出逢った花たち:(Fさんの記録から) 【咲き始め】ウリハダカエデ・チドリノキ・オオモミジ・イタヤカエデ・ウスゲクロモジ ・ムラサキサギゴケ・ニシキゴロモ・タニギキョウ・ミヤマハコベ・サワハコベ・ノミノ フスマ・ナツトウダイ 【盛り】ブナ・ナガバモミジイチゴ・カスミザクラ・ウスギヨウラク・ホンシャクナゲ・ オオカメノキ・キジムシロ・タチツボスミレ・オオタチツボスミレ・オオバキスミレ・ ヤマルリソウ・オオイワカガミ・ヤマアイ・ワチガイソウ・リュウキンカ・ニリンソウ・ ハルトラノオ・シャク・ミヤマカタバミ・ネコノメソウ・チャルメルソウ・モミジチャル メルソウ 【咲き終わり】ヒカゲツツジ・コバノミツバツツジ・アセビ・クロモジ・ヤマザクラ・ ヒサカキ・ワサビ・オオバタネツケバナ・イワウチワ・サンインシロカネソウ・ミヤマ キケマン・ヒメエンゴサク・トキワイカリソウ・タチネコノメソウ・チシマネコノメソウ・ コチャルメルソウ・エンレイソウ・ヌカボシソウ |
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