【芦生】芦生研究林の防鹿ネット内外の継続植生調査 2018年8月
  2018年08月04日(土) 京都大学・芦生研究林


 「知ろう、守ろう、芦生の森」の夏の植生継続調査日。今年は春の作業には集合がかから
なかった。昨年の調査区の杭や区画テープの整備不足がちゃんとされたのだろうか・・・。

初回から参加して、もう8年目になり18回目の参加。その間の調査区の植生変化はすごい。

南丹市の担当者がまた今年も変わったらしい。今春の調査日の連絡が来なかったのは
そのせいだろうか。8年の間に、窓口主担当の方が替わるのはこれで4回目となる。

今年は、昨年同様に4月末にFさんとリュウキンカとオオバキスミレの調査に1度、1泊二日で
芦生研究林に来たのみだ。

今年の夏は異常気象とかで、豪雨が続き我が地区の猪名川も警戒水位を超えて避難を
したり、各地で大きな水害が起こったり、梅雨が早く明けて雨も無く35℃以上の日がずっと
続いたりと、全国的に厳しい暑さが毎日毎日続いている。

14年前に2年の激痛のあと胆石の手術をした。腎臓の腎結石は10年ほどおとなしかった
が、7月18日から激痛と微熱で苦しみ受診。腎臓から膀胱への移動中で、この調査日までに
排出したかったが、まだ出ない。痛みと微熱は続いている・・。

4月から相棒の実家の畑の一部で野菜作りを始めたので、朝4時半から畑の水やりと作業を
今日だけ5時半までに済ませて、松のやで朝食を食べて6時半過ぎに芦生へと向かった。
   
   
   
   
美山に入ると27℃になった。 まだ8時すぎなので、かやぶきの里は静かな時間。
かやぶきの里の稲穂が綺麗だが、今年の高温続き・・・高温障害がでなければ良いが。

芦生ロードパークで少し休憩しつつ植物観察。作夏綺麗に咲いていたビロードモウズイカ
の姿が全く無いのは残念だった。

須後に9時過ぎ到着。研究林のKさんがいらっしゃったのでご挨拶。豪雨時ここも避難
されたらしい。Kさんも過去に尿管結石を経験されたらしく、痛みをわかって下さった。

今日はボランティア参加者が10人しかいないらしい。昨年は22名いたのに、夏の作業
で10人はきつい・・・。南丹市の担当者も調査経験者はIさんだけとか・・。

10人のうち、森林インストラクターの参加は、兵庫会が3名、大阪会が2名、京都会が1名
の6名くらいの顔ぶれのようだ。
夏休みでいろいろなイベントと重なってしまっているせいもあるのかもしれない。

福知山からのSさんが到着し、明日も調査されるFさん、そして昨日から芦生入りして
いるHさんも到着。Kさんが「いつものメンバーは早いね。南丹市がまだ来ない・・・」と。

夏はイワヒメワラビ以外の木本類や草本類の種類がどのように分布して生えているかや、
その被覆度も調査する。ボウボウにいろいろな植物が風散布や鳥散布等で去年と様子が
違って芽生えて育っており、毎回同定がなかなか難しい。記録する項目も多いので忙しい。

10:00
南丹市の担当者の車、そしてJR園部駅からボランティアを乗せたバスも到着した。
バスから下りてくる顔を見ると、森林インストラクターの知人参加者は昨年より断然少ない。

僕は1班でOさんとNさんの3人。2班はHさんとNさんの2人。3班はFさんとTさんの2人。
4班はSさんとSさんとOさんの3人。やはりどこも人数的に手薄すぎる・・・。

南丹市のMさんの進行で、室長のAさんのご挨拶に続き、Mさんから作業説明。
10時20分にバスに乗り込み、地蔵峠へと向かう。
   
   
11:10
地蔵峠。虫除けスプレーをしっかり服の上下にかけて、調査地の枕谷へと向かう。

調査地手前の川の法面が豪雨でえらくえぐれていた。
ガマズミの実は例年以上に沢山の赤い実をつけている。
さすがに下界より芦生の森は涼しく感じる。
   
   
去年同様に、イワヒメワラビが繁茂しているだけでなくて、サワウツギやアシウアザミが
ネットの高さほどに大きくなって繁茂している。ウバユリもまた位置を変えて登場。


調査区でT先生と合流。T先生によるミニ講座開始。(帰路のクマハギ説明含む)
★芦生鳥獣保護区内のニホンジカ捕獲実績の説明を受けた。
 実績表平成20年から30年5月までで125頭。わな・檻から銃器に。檻は鹿が学習
 して入りにくくなる。京都府の鹿は20頭/㎢、芦生は1~3頭/㎢。芦生は猟の効率悪い。 
 5月はハンター3名、セコ2名で4頭捕獲。/餌の多い所(防鹿ネット内)へ集める
  ※ABCプロジェクトのウツロ谷やモンドリ谷等

★鹿/雌しかは行動圏(縄張りとは違う)が限られていて定着的。
 冬のギリギリの餌事情でもその行動圏で生き延びる。隣の行動圏の鹿がいなくなったら
 そこも行動圏になりうる。この冬は実生や倒木の葉も沢山あり生き延びた。
 エゾユズリハも食みだしている。

★1班のところはタニウツギやアシウアザミが繁茂。
 3~4班のところはミズメ。コバノイシカグマ。
 説明場所にはイワヒメワラビ、オオバアサガラ、コバノイシカグマ、テツカエデの
 4種が多い。日陰ではイワヒメワラビがコバノイシカグマとの生存競争に負けている。

★クマハギ・・・クマの歯のあてかたや皮のめくり方の説明。下手なクマハギ例と上手な
 クマハギ例の木を見て説明を受けた。二頭か、はたまた学習して一頭が上手になったか。
   
   
   
調査は1班をさらに2つに分けて3~4人のチームになるのだが、今年は昨年以上に
2つに分けられる人数では無いので、担当プロットを1チームで調査開始。

防鹿ネットを開けて、イワヒメワラビをかき分け踏みつけ通路を作りつつ進むが、ズボンは
いつものようにイワヒメワラビでねばねば・・・。蜘蛛の巣もある・・。

しかも・・・今春の補修作業がされていないので、昨夏以上に角の木杭が腐っているもの
や折れているものがあり、竹串が春に付け替えられていないようで倒れたり折れている。

なにより各プロット区画のテープが昨夏以上にわからなくなっているので、プロットの特定に
昨夏以上に時間を要し、ライン内か外かなどの再確認ばかりしないとならず煩わしい。
Oさんが区別しにくい区画の角の杭にプロット番号をマジックで記してくれた。
こういうことも春にしておきたい作業だ。

区画ラインが明確にわからず、間違って調査プロットを通路と間違えて踏みつけてしまって
いる人も複数出た・・・。これも昨年同様に、春の補修作業がしっかりされなかったのが原因。
   
   
以前のように春のメンテ作業をしっかりしないと、草木が繁茂する夏場の調査時には支障
がでることを、ここ数年市の担当者が変わるたびに理解されていないのがとても残念だ。

まずはいつものようにブナの生存本数の確認と、枯死を調べる。そして多様性調査では、
そこに生えている草本類の範囲を破線で記して種類を記す。木本は実線で図示し、本数と
種類を記録する。カエデの実生があったが、種類が特定できなかった。他にも2種ほどわ
からなかった。今回は同定アドバイザーが近くにいないため仕方ないか・・・。

8年も参加していると、最初の実生の変化がめまぐるしかった3年くらいと、その後のだん
だんと変化のスピードや、しっかりと根付き固定してくる樹種がわかってくる。大きく繁茂した
タニウツギの多い1班の下層に沢山あったアカシデの稚樹などは被覆されて競争に負けて
ほとんど消えつつある。草本類も大きく育ったアシウアザミはしっかりと繁茂し我々の背の
高さを超えている。ブナの稚樹の成長も、日陰になったところはなかなか成長しなかったり
枯死してくるので、他のブナの成長とは大きく差が出ている。実生のブナが8年経っても、
これだけにしか成長しないことを見ると、ブナの木の貴重さがよくわかる。

毎月、里山管理に参加している「日本一の里山」と呼ばれている能勢妙見山には、西南日本で
600m級最南端のブナの原生林が残っている。日本のブナ林は温帯(年平均気温が6~13℃)
の代表的な落葉樹で、日本の西南地方では一般に900~1、000m以上の山に生育していると
いうが、660.1mという低山の能勢妙見山のブナ林も貴重で、今後年間平均気温が0.2℃
上がったら、このブナ林も生存は難しいという。

今年はアブだけでなく、葉裏に蜂の巣もあり蜂も沢山寄ってきたので、僕もOさんも蚊取り
線香をぶら下げた。しかし蜂にはその蚊取り線香の入れ物にもとまるくらい効果が低い。

「イテテテ!熱い!」とOさんの声。「葉裏にある蜂の巣の、蜂に刺された!」とのこと。
「Oさん、移動しましょう!」と声をかけた。鉄則はすぐに急いで10m以上離れ、刺された
部位をできるだけ早くポイズンリムーバー(市販の注入毒吸引器具)を刺し口にあて毒液を
吸い出すことだ。防鹿ネット外に出て、僕の持参しているボインズンリムーバーで毒を吸い
出し、持参の抗ヒスタミン剤を塗っておいた。そのあとは冷やすのが応急処置。
「アナフィラキシーも心配だし、異常を感じたらすぐ医療機関に行って下さいね」と言っておいた。

Oさんの調べによると、おそらく「ムモンホソアシナガバチ」だろうとのこと。
この蜂は、軒や庭木・草むらに巣を作り、剪定や草刈の際によく刺される。痛みは数分か
ら数日続き(被害部位による)、周りが腫れたあと硬くなりかゆみと共に数日間残る。
(Oさんからは、大事に至らなかったとのメールを帰宅後にいただき、ホッとした)

多様性の調査はサブプロットを25に分けて1つは1/25なので0.04として計算し、記載は
パーセントなので「4」と記す。パッと広さを見て判断し記録するのが人数が少ないとバタバタ
して記録が進みにくい。しかも今年の「手本」で渡された記入例は間違いが多いのでチーム内
でも表現がまちまちとなり、混乱した。

何よりも、テープが無い区画確認に無駄な時間を取られ、調査と記載に集中できない。

数年前のように、多様性サブプロット図の中に記載要領をうまくまとめて注意書きした
お手本を作って再度配布し、記載方法の統一を図ってほしいものだ。

ランチタイムは僕はお茶漬け。梅干し3つと奈良漬け。そしてコロッケパン。
ザック置き場は少し日が当たってきたので、山側の日陰に移動し1人で食べた。
「強力ハンド扇風機」を今年も持参した。今年は猛暑で馬鹿売れしたらしい。

午後は各班の残った調査を急いで実施。午後も区画の確認に時間を取られ時間不足。
予定時間を過ぎてもなかなか各班は終わらない。特に3班4班は多様性調査が多忙。
   
調査を終了し、地蔵峠へと向かう。
途中にあるクマハギの現場でT先生からクマハギのミニ講座。

15:15
地蔵峠からバスで須後へと向かった。

16:00
須後に到着。予定より1時間遅れ。枕谷よりとても暑く感じる。

係の方の挨拶後、アンケートを配布。
暑いし、すぐに記して渡せないので、「メールで送ります」と伝えて帰路についた。
座薬も持参したが、尿管結石の痛みも微熱もましな1日で本当に助かった。
   
気温は32℃になっていた。
河鹿荘で汗を流し、途中の金麒麟で17時からの定食を食べてから帰路についた。

19時帰宅完了

今年もイチジク畑をお持ちの知人からイチジクを沢山頂いたので、おいしくいただいた。
相棒は、大量のイチジクでイチジクのワイン煮やイチジクジャムも作ってくれた。


アンケートには下記のような内容を記して送信・・・
「記入例」は正しい物の作成と配布を希望し、記載方法がぶれないように希望した。
春の作業と補修をしっかりしておかないと、夏の繁茂期作業に支障が出ることを記した。
夏の作業は多岐にわたるので、時間的にも人数の確保は重要であることを記した。
 
新しい参加者が増えてくれることを願い、芦生の調査区の経年変化を身をもって体感
してほしいと思っている。
T先生がされている、「ABCプロジェクト」に興味を持たれた方へのお知らせ

     ABC project (芦生生物相保全プロジェクト) 公開成果報告会
           シカから芦生の森林生態系を守る(仮題)


京都大学芦生研究林の天然林内にて、シカによる過剰な植物採食を守るため、2006年に
シカ柵を設置しました。現在に至るまでシカ柵の中では様々な変化が起こっています。
シカによる植生被害の実態、希少種保全への取り組み、植物-土壌-渓流の生態系連環
への影響など、最新の研究成果をわかりやすく報告されます。
ご家族お誘いあわせの上、是非ご来場ください。

日時:2018年8月26日(日) 13:00~16:30
場所:京都府立植物園 研修室
費用:無料(ただし植物園の入園料が必要)
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