【芦生】赤崎中尾根


【山 域】 京都府・芦生 赤崎中尾根
【日 時】 2012年7月14日(土)
【メンバー】あっこ、ビッキー、矢問
【コース】 須後−灰野−P840m−P832m−赤崎中尾根−赤崎谷出合−須後
あっこさんが囲炉裏に入村した頃に「家も近いし、また山もご一緒しましょう」と言ってから
もう4年近く経つ。何度か誘ったり誘われたりする機会があったが、都合がうまく合わない。

今回6月に「矢問さん芦生にご一緒無理ですか」とあっこさんの企画日程はOKだったが、
梅雨時の悲しさ、天候不順で「中止」。そして予備日の7月初旬も天候不順でまた中止。
3度目の正直の14日もやや怪しいが、降っても霧雨程度だろうと予測し決行決定。
村民1名は仕事で行けなくなり、Kevinさんは「雨に合うのはどうも・・」と欠席になった。

朝6時半にビッキーさんを駅でピックアップし、173号線沿い道の駅「能勢くりの郷」へ。
車内で「今日はノーメイク。矢問さんが香料の入っている日焼け止めや化粧は蜂が
よってくるので無香料のものを使うようにと言ったけど無香料の化粧品を持って無くて」と
ビッキーさん。「まぁ、良いんじゃないの〜」と僕。

7時にお嬢さんの運転であっこさんが来た。「おはようごさいます」矢問号で芦生へと向かう。

美山のかやぶきの里はまだ静かな時間。ビッキーさんはバスツアーでここに来たらしい。
「あれが白尾山で奥が杉波谷山。登ったのはもう6年も前になるなぁ。」

須後に着いた(8:40am)。山の家の駐車場には今日は1台も車がない。
曇り空からうっすら太陽がのぞいている。「天気は持ちそうだね」2人に地形図を渡す。
 
 「さあ行きましょう!」
8:55
昨日の雨で草も濡れているだろうからスパッツを装着して出発。あっこさんは僕と同じく
虫にもやられやすく弱いという。虫除けスプレーを2人にもたっぷり「シュー」した。
ビッキーさんは昨日買ったおニューのダブルストック姿で「なんとなく楽な感じ」と。
入林届けを記載して、この森の概要を説明しつつ灰野に向かう。

研究林の技術員の方達にも会うことなく、いつもは閉まっているオノコ谷へのゲートが
開いているのを左に見て橋を渡り森林軌道のトロッコ道に入る。トロッコ道の花も減り
今の時期は灰野までコアジサイくらいしか咲いていない。あっこさんは胸に一眼レフ。

井栗さんの家を過ぎるともう葉も沢山付けて大きくなったタラの木が軌道横に続く。
「あっこさん、雨後なので谷ルートは足もとも良くないし、今日は尾根ルートの木々の
観察ってことで我慢してね。尾根には尾根の別の顔の良さがあるし」
「はい。また谷ルートは黄葉や雪の頃にでもいきたいです。沢も良いなぁ」とあっこさん。
雨具不要のわずかな霧雨がほんの少し降ったが1分ほどであがった。

「それとあっこさん、今日は良いけど汗ふきのために首から白いタオルをぶら下げるのは
北摂や兵庫の山ではしないように。ハンターがファインダーでのぞいたらシカの尻尾に
見えて、誤射される恐れがあるので」と僕。「了解しました〜」とあっこさん。
   
 「厳しい暮らしだったのね」  「気をつけて!」
 9:30
灰野。ここの集落跡を見つつ佐々里峠方面へと登り開始。カラッとした日でも芦生の森は
湿度が保持されて呼吸が楽なのに、雨後は湿度が多すぎてムシムシする。蒸し暑さに弱い
僕はすぐに汗が出始めた。ゆっくり登っているのでバテないが「風が欲しい〜」。

「なにか道に動いているものが・・・」とビッキーさん。「あっ、ヒルだな」と僕。
「うわ〜、ヒルはいやだ〜!!」とあっこさん。「服に付いていませんか」とキョロキョロ。
「ブユは腫れるけど、ヒルはスプレーをこまめにすれば大丈夫」と僕。
あっこさんも僕と同じくブユに弱いらしい。 炭焼き窯の跡があり台杉の説明をする。

ジグザクに登り高度を上げていく。そしてまた谷筋をしばらく歩く。
「おや?この辺りで右の斜面に登るはずなのだが」と僕。少し戻ると右への踏み跡。
「こっちこっち」。倒木と草で見つけにくくなっていたが間違いない。「蒸し暑いなぁ」
少し急な斜面のトラバース地点。「慎重にね」踏み跡へのルートに倒木。斜面を登る。
ミズナラの木が増えてきた。そして立派なアシウ杉も点在し出した。
     
 ジグザクに高度を上げる  ばん取り跡 「また来たよ」 
10:45
はん取り跡。「キャ〜、ヒルにやられた〜」とあっこさん。
右のお腹あたりにうっすら血の跡。木の上から落ちて入ったのか?バンドエイド処置。
そして再度、僕のスキンガード(ディート)をみんなの靴の周囲や衣服にスプレーする。
今日も水場跡の水は流れていない。またまたルートに倒木でルートを見失いやすい地点。
「この上に道があるんだけど、ちょっと待ってね」と偵察。「間違いない。こっちこっち」
「こんなところよくわかりますね」とあっこさん。「あの杉の木にいつも挨拶するので」
「スゴイ杉ですね」とあっこさん。「この太さで感動?もっとびっくりするかも」と僕。
もうすぐ尾根道になる。風が吹き出して気持ちよくなってきた。暑がりには嬉しい風だ。

11:15
大段谷山との分岐。「これを西に行くとBAKUさんと雪の頃に登った大段谷山ですよ」
ここもスゴイ藪があったのに今ではすっかり様変わり。流石に尾根道は風があり涼しい。
地形図を出してシルバーコンパスでの地図と進路の見方とセットの仕方を説明する。
「あっこさんは1人でよく山にいくのだから、是非コンパスの使い方を覚えてね」と僕。 
   
 「P840mに出たよ」  台風で枝が沢山落ちている
11:40
ショートカットルートでP840m。あっこさんもビッキーさんも頑張った。
「ここからは尾根ルートで楽ですよ。のんびり歩きましょう」
あっこさんのヒル被害部分を再度バンドエイド処置。そして再度3人とも予防スプレー。
ゼラチン質のハナビラニカワタケが生えていた。もちろん観察だけ。
(生食も可のキノコ。熱湯にくぐらせ酢の物、または天ぷら、バター炒めにして食す)

「このあたりも2000年くらいまでは胸くらいの笹がずっと続いていたのですよ。」
「まったく信じられない。すごく変わったのですね」とあっこさん。

シカ害や笹ガレについてお話しした。老齢段階の天然林においては、成熟段階が長く続く
うちに高木層の優勢木の中に衰退し枯死するものも徐々に出現する。また数年前の台風の
通り道の様なときは、複数が倒伏する事も起きる。いわゆる森林の攪乱によって生じる
ギャップと、パッチ構造の発達した老齢林へ移行する。このような構造の森林を極相林と
いうが、大径の衰退木、立ち枯れ木、倒木は森の様々な生き物のハビタット、ニッチには
欠かせない要素であり、芦生の森の存在意味は実に大きい。

「樹洞(ウロ)が多いでしょ。冬場はリスも容易に見られますよ」
「いつもよく聞こえるコゲラのドラミングが今日は聞こえないなぁ。」

コゲラはエサを採ったり大木の幹に穴を開けて巣を作る。その後、その穴は腐朽や虫食い
などにより大きくなりフクロウ類などの大形鳥獣が住むことが出来る。コゲラのような
キツツキ類は生態系におけるキーストーンスピーシーズと言われていて、その意味でも
森でのキツツキ類の役割は大きい。 「フクロウ類の声も今日は聞こえないですね」
   
森のモデル@ 森のモデルA 
   
 「涼しくて良い感じ」  「倒木にいろんな草木が生えてる」
トチノキの休憩場所で一休み。いつも僕が一息入れる場所でもある。
「まだお腹は大丈夫?」「はい、行動食を少し食べたし」と二人。「もう少し頑張って」 
   
 「へぇ〜」あっこさん  立派なアシウ杉
12:30
雷杉。来る度に外皮が落ちて中の空洞が表からもよく見えるようになってきた。
「まだ生きているのですね。青い葉が」とあっこさんとビッキーさん。
「これもいつかは雨や雪で朽ち果てて、もっと短い立ち枯れ状態の木になるでしょうね」

「ここから40分ほどで小野村割岳だけど、今日はここから赤崎尾根を下ります。」
「バンダナショットを撮りたいのですが、雷杉の他にいい所がありますか」とあっこさん。
「もう少し先の大きなアシウ杉の所で撮れば良いよ」と僕。

北進開始。「これは迷うなぁ。絶対に1人じゃ来られないわ〜」とあっこさん。
去年秋に来たときは台風のために太い枯れ枝が沢山落ちていて雷でやられた炭状の
倒木も多かったが、だいぶ分解も進んだのか歩きやすかった。
太いアシウ杉を見ては「うわ〜、スゴイねぇ」「私たち、ちっぽけに見えるね」との声。
     
 バンダナショット  横にも  そしてまた
 12:50
「ここでバンダナショット写真をとって、ランチタイムにしましょう」
写真をとり軽く食事にする。あっこさんはヒルに神経質になりシートも敷かずに食べる。
僕もビッキーさんもそうすることにして行動食にした。
静かなアシウ杉の森に包まれてゆっくり時間が流れる瞬間だ。
「今日は人にも動物にも全く会わないなぁ」と僕。「ヒルに会ったけど」とあっこさん。
     
 「また来るね」  「慎重に!」  「やっと出合に下りられた」
アシウ杉を観察しつつ、写真を撮りつつ尾根を下る。あっこさんが写真を撮りまくっている。
「ビッキーさ〜ん、アシウ杉の横に立ってくれますか」とあっこさん。「は〜い」
人が立つと杉の太さや立派さがよくわかる。実生の更新や伏条更新のことを説明した。
トチノキやトチの実、そして大きなホウの葉も沢山落ちている。
去年見た外皮が上から下まで落ちた木もまだ立っていた。
「迷いやすいからついてきてね」「はい。どこでも歩けそうで難しい」とあっこさん。

「ここから急になるので気をつけて。慎重に下ってね」杉の落ち葉が沢山あって去年の
秋よりは滑りにくくて下りやすい。「さらに急になるので慎重に」「はい」と二人。
「あっ、沢の音が両方から聞こえてきた」「もうすぐ沢の出合。慎重に」
   
「緑が綺麗だわ」   「灰野に着いたね」
13:55
赤崎谷の出合。やはり雨後で水量が多い。飛び石で渡るにもなかなかやっかいな水量。
「この大岩を2つ利用して渡るからね。ストックを最大限活用する所」と僕。
僕に続き、あっこさん、そして滑りそうになりつつビッキーさんも無事徒渉。
「小ヨモギのカツラの林も写真を撮りに行きますか?」と僕。
「行きたいで〜す。時間もあるし」とあっこさん。「大丈夫。歩けるよ」とビッキーさん。

しかし、小ヨモギへの橋は去年同様に落ちたまま。水量が少なければ橋の横の渡れる2箇
所も今日はちょっと無理。服が汚れても良ければ木を抱いて渡れるところもあるが・・・。

「今日の所はまた今度の楽しみにしておきませんか」と僕。「了解しました・・」と水量の
多さを恨めしそうに見る二人。あとは灰野から須後へとトロッコ道を右手に綺麗な由良川
の流れを見ながら黙々と歩く。「沢沿いで歩くのも涼しそうですよね〜」とあっこさん。
夏の日が長い時期は沢沿いを一周もできるよ。」と僕。「沢靴も買おうかなぁ」と二人。
朝は1台もなかった駐車場に3台停まっていた。釣り師のようで着替えておられた。
   
 「もうすぐね」  「良く歩きました〜」
14:55
駐車場に到着。「おつかれさま〜」 スパッツを3人ともはずして「ま〜、びっくり!」
「ギヤァ〜−−−−−!!!」須後の集落にも響き渡りそうなあっこさんの大きな声。
駐車場にいた他の人も声に驚いて「ど、どうしたのですか!」とやってきた。
「ヒルです」と僕。「あ〜、雨が降ったあとは出やすいよね」と男性が笑った。
僕とビッキーさんのスパッツにも小さいヒルが付いていた。芦生でヒルは初経験。
駐車場の協力金箱にお金を入れて河鹿荘に向かう。

モンベル会員カード提示で100円割引の河鹿荘で汗を流し「あっこさん、スノーシュー
ならこの奥の八ヶ峰もいいよ。ビッキーさんもどう?」と言いながら帰路についた。

あっこさんの家の前まで行き「またね〜」とお別れ。ビッキーさんを駅まで送った。

「アルプスに行く前の足慣らしも兼ねたあっこさん、おニューの山道具のビッキーさん、
しっかり歩いてくれてありがとうございました。今日は蒸し暑い芦生の森でしたが、四季
折々の芦生の森も楽しんでください。今日歩いたのは芦生の森のごくごく一部です。」

18:30
家に着いた頃に小雨が降り出した。今日一日、天気が持ってくれてよかった。21,701歩。

芦生の森のシカ害防護ネット内の植生調査活動の参加依頼手紙が届いていた。
前回同様に、8月にまた芦生の森にボランティア活動で行く。8月、暑い時期だな。
   この1つ前は「沢【若狭】7年ぶりの今古川から雲谷山(786.6m)」の記録です