【芦生】芦生の森の防鹿ネット内観察とネット下げ作業
2011年11月21日(月)
今年8月にボランティアの方々や、京都大学、京都府、南丹市により鹿防護ネットを芦生 研究林の数カ所に設置。 芦生は積雪量が多く、長野県でも折れないネット支柱が、芦生の森ではせっかく設置した のに重い雪で折れるなど破損してしまうため、設置後100日経過したネット内の状況観察 と、ネットを下ろす作業を実施する。 また枕谷をさかのぼり、三国峠にも足を伸ばし、山頂付近や森林内の状況観察も実施する。 芦生の森の勉強会にも過去何度も参加し、尾根にも谷にも15年近く通った芦生の森。 先月あった「知ろう、守ろう芦生の森」のシンポジウムにも参加した。また、今年の台風 12号でここ芦生も被害があったようで、先月歩いた灰野谷や赤崎尾根には倒木やアシウ スギの老木の枝が痛々しく多々落ちていたのを見たばかりである。 ここ数年は、この森に来るたびに鹿害等でどんどんと変わり果てていく森の姿を見ては、 残念な気持ちになるばかり。「何かこの芦生の森を守る活動でお手伝いできれば」といつ も思っているのだが、今回は丁度職場の休業日だったこともあり、依頼のお手紙を頂くや いなや参加するとの返事をした。 今回の主催は「芦生地域有害鳥獣対策協議会」で、南丹市、美山町の役場からと芦生 研究林事務所の技術職員の皆さんや、高柳先生(京都大学大学院農学研究科)とともに 鹿防護ネット下げ作業と植物の観察をする。 高柳先生が「野田畑湿原あたりに鹿防護ネットを張って実験を開始してみる」とおっしゃって いた頃から、鹿に関する講義をここ芦生で何度も先生からの講義を拝聴している。 いまは、実験のネットは芦生の森の中にどんどん増えて研究されている。 今回のボランティアには僕を含め男性10名と女性2名の12名が参加のようだ。 |
美山/ かやぶきの里の朝 | 須後の駐車場の紅葉 |
午前10時に研究林事務所に集合なので、家を朝7時に出た。美山のかやぶきの里の 手前の紅葉は見事だった。9時5分に須後の駐車場に到着。ここもきれいに色づいている。 事務所に行くと、トップ到着のようで以前勉強に何度か来た事務所前の学習室の扉を開け て下さった。そこで室内の研究林の地図やナラ枯れの説明パネルを見て待った。 |
事務所前 | 長治谷に着いた |
10:10 受付で保険料99円を支払い、挨拶と資料の確認のあと研究林事務所前から研究林のマイ クロバスに乗り長治谷の作業小屋へと向かう。園部から参加のFさんと隣の席になった。 「いまどの辺りを走っているのですか」とFさん。地図を示して「二ノ谷を過ぎたのでもうすぐ 中山ですよ」と伝える。 林道途中の法面が崩れているようで2箇所ほど重機で補修工事をされていた。狭い林道で トラックや重機がある横のすれ違いはスリル満点。ガードレールもない谷側路肩ぎりぎりの 運転技術は流石だと感心する。 |
野田畑にはオオバアサガラ | 橋がしっかりしていた |
10:50 長治谷小屋前で体操の後、ウツロ谷へ。何度か渡渉しないとならないが、雨後でちょっと 水量が多くて長靴の人は良いが登山靴には深い。長靴の高柳先生が先頭きって技術職員の 人達と共に、大きな石を飛び石状に流れの中に並べて下さっている。僕はひとっ飛びで飛 べそうな所を探しては飛んで対岸へと行った。 野田畑の湿原はオオバアサガラが沢山はびこっている。ここにも数カ所のネット実験場が ある。 |
秋色の森に、しばし日差しが | 徒渉に飛び石配置 |
11:30 ウツロ谷で鹿防護ネットを観察。谷の入り口で、沢の流れを止めずに鹿を防御するネット の下部の説明やネットの高さ、ネットの入り口二重構造の効果などを説明して下さった。 ネットには「研究者及び技官以外立ち入り禁止」のプレート。 |
ウツロ谷のネット内は緑が多い | ネット下の鹿進入防御 |
ABCプロジェクト(芦生生物相保全プロジェクト)がなされている谷で、防鹿柵の有無が 昆虫や植物にどのような影響を与えるかの研究が行われている。その、ウツロ谷に高柳 先生と入り植物の状況観察をした。ネット内のウツロ谷とネット外の植物状況は全く違う 別世界。やはりネットとその張り方での威力は大きい。 |
ネットの内と外は別世界 | ウツロ谷 |
アシウアザミがネット柵内のウツロ谷筋には元気に育っており、昆虫なども戻ってくるらしい。 捕食されたようなアザミもあったがウサギの噛み口のようだとの説明があった。 てんとう虫の研究をされている先生が多額の寄付をされてこのネット実験も実現出来たとの こと。花が減ると研究対象の昆虫も減るのだ・・・・。 |
ウツロ谷のネット外は鹿害 | 右岸のネットの内外の観察 |
11:50 ウツロ谷右岸を登りネットの状況と効果を観察。なかなかの急斜面をジグザグに登る。 ここでもネット内と外での違いと変化を説明して下さる。それでも5年くらいかかって、 やっと昨年くらいから少し植物の復活の変化がわかり始めたらしい。地道な作業と実験で 確実にネット成果が出てきていることがわかる。 |
12:15 野田畑近くのネット内の観察。2日間開けたネット、4日間開けたネット、6日間開けた ネットで鹿による食害状態の違いなども高柳先生から説明と解説を受けた。 ネットを支柱に止めている黒いケーブルタイを鹿が好きなのかかじって切るらしい。 12:45 長治谷作業小屋にもどり、靴を脱いで小屋内での短い弁当タイム。丸ストーブを2つ点火 して下さった。 僕は持参したテルモスのお湯で、カップとん汁を作りおにぎりを食べ紅茶でパンを食べた。 とん汁と紅茶で体内も暖まった。食事の時に隣の席となったHさんは、奈良県の樫原から 毎週の様に芦生の森に通っている女性で、芦生の植物にとても関心があるとのことだった。 |
13:15 長治谷事務所を出て、ネットを2箇所ほど下ろす作業をしつつ、ネット内のイワヒメワラビ を抜いた半分部分と、そうでない部分で他の植物の復活状況の観察をした。イワヒメワ ラビは他の植物に勝つ。これからも観察を続けて行き変化を見てみたい。 |
ネットの中の植物観察 | このブナは無事だった |
13:50 枕谷から三国峠(776m)へと向かう。地蔵峠からの入林が禁止になってからは三国峠へは しばらく登っていない。何度も登った三国峠だが、最後に登ったのは、まだ地蔵峠からの 入林が許可されていた2005年3月の残雪期。伯耆大山の登山から帰りにMICKEYと来た のが最後だ。てるさんにも野田畑あたりで会ったのを記憶している。 |
あの木も倒れたか・・・ | 三国峠にも高島トレイルの木柱 |
登るにつれ、小雨がアラレに変わり降ったり止んだり。この斜面も本当に植物が減った。 |
三国峠の山頂/注意書き頂 | 倒木が増えたなぁ・・・ |
14:20 三国峠の山頂。流石に今日はガスッている。三角点は20cmほど土が流出して浮いている。 以前は無かった高島市が立てた「高島トレイル」の木柱もある。芦生の森の注意事項の看 板までも立っていた。予想通りガスで展望なし。時々薄くなって山並みが見える程度。 植物は山頂周辺は他の所よりまだ多い。これは鹿にやられてもツツジなどの木の芽の更新 に関係することを高柳先生から教わった。山頂でもアラレに打たれながら植物状況と鹿との 関係などを丁寧に高柳先生は講義して下さった。 |
中山神社 | 紅葉がきれい |
14:35 登りよりも下りが滑りやすいので慎重に下山開始。技術職員のお二人に続いて下る。 どんどんとみんなが遅れだした。長治小屋に戻る頃にはアラレも小雨も止んで日が差し 始めた。紅葉のピークが過ぎた山肌に日が差してきれいだった。 |
長治谷にも、もうすぐ雪が | 林道路肩下の補修工事 |
15:40 マイクロバスに乗り須後へと戻る。バスの中でブナの実を1人ずつ食べる体験もあった。 14時20分に事務所前にて解散。渋滞もなく、18時に家に着いた。 今年の10月17日以降の平日には、芦生の森内で猟師さん達が鹿の捕獲を試みされたが、 捕れたのは4頭のみだったとのこと。 なかなか猟だけでは森は守れないようで、防鹿ネットの研究と成果が期待されている。 本当は雪が少し積もってからネット下ろしの作業をした方が、鹿に植物を食べられないの だが、その時期には車も人も来るのが大変になるので今の時期の実施となった。 僕らの生きている内にはこの森はどこまで元気になってくれるかわからないが、出来ること はしていきたい。また次回もどんな作業でもお手伝いしたいと思っている。 |
本日の徒歩ルート |
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