【芦生】芦生の森の防鹿ネット内外継続観察調査
2012年10月20日(土) 芦生研究林 5月の作業後の植生調査・観察その2
【山 域】 京都府・芦生研究林 【日 時】 2012年10月20日(土) 日帰り 【コース】 1.枕谷・植生調査区 経過観察 2.スケン谷・散策観察 【メンバー】H、T、ふぉれすと、ビッキー・矢問 5名 |
降雪が始まる前の来月11月に雪圧で鹿防護ネットがつぶれないように下げる作業がある。 その前に、8月の植生経過観察があり、先月と今月の10月は「芦生地域有害鳥獣対策協 議会」の「知ろう、守ろう芦生の森」の活動のボランティア有志による経過観察を実施。 今回の観察会の調整窓口になってくれた奈良県のHさんが、芦生地域有害鳥獣対策協議会 のMさんを通じて、芦生研究林からの「調査入林許可証」を取得してくれた。 今回は奈良県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県から各1名の合計5名のメンバー。 今回初参加のビッキーさんを途中の駅でピックアップし、Hさん指定の集合場所8時半集合。 僕らは8時10分に到着。すぐにTさん、Hさん、ふぉれすとさんが到着した。 (他にも無人の2台の車が駐車している。ちゃんと許可を取った人だろうか・・・) 地蔵峠にはバイクの2人の男性。我々は植生経過観察をすべく調査区へと向かう。 ビッキーさんは今日のために新品のAIGLEのの長靴を持参。「うわっ、高級品を買ったね」と僕。 8:50 調査開始 「今年芽吹いたばかりの幼樹の名前はほんとにわかりにくい。今日はHさんの木や草の 名前の知識におんぶにだっこになりそう」と僕。「え〜っ!そんなこと言わずにみんなで がんばりましょうよ〜」とHさん。「Hさん、今日は頼りにしてますよ」と男性陣3人。 |
「枯死もあれば、成長もあるね」 | 「う〜ん、同定が難しい」 |
枕谷の調査区に再訪してイワヒメワラビの除去区と放置区でブナの芽吹きがどのように育 っているか、他の草本類はどうなっているかを観察開始。Hさんは先月も調査に来ている ので、そのときと今回の比較が出来る。先月、Hさんが撮った調査区の写真と比べていく と、複数の区画で一ヶ月の間にどれだけ違っているかがとてもわかりやすかった。 さて、いろんな稚樹の名前や草本類の観察。横に調査串の刺してあるブナの芽吹きは葉が 6枚まで成長しているものもあった。また枯死も多いが、葉は落ちているものの冬芽が出 来ているものもあった。「これ来年も成長できるのかなぁ。雪圧などで駄目になるのかな」 |
「このブナは冬芽をつけているね」 | 若いタヌキノチャブクロかな? |
「この芽は○○、これは△△」とHさんからポンポンと名前が出てくる。あとの4名は以 前の観察会で頂いた写真付きの資料や僕が持ってきた本で同定作業。 三国峠方面から男性2名が来た。どこから入林したのだろう・・・。 次の調査区にも行く。「これは・・・□□△△かしら・・」とHさんが言うと「うん、そんな名前を 言っていたような・・」とふぉれすとさん。この調査区はふぉれすとさんしか経験していない。 「想い出してくれ〜」と、ふぉれすとさんの記憶をたよる。 「木や草本の見極める知識がきわめて低いので、識別に役立つかどうかわからないけど、 参考になりそうな本を4冊持ってきたよ」と僕。「うわ〜、重いのに4冊も。ありがたい わ〜」とHさん。Tさんは中根先生の「芦生研究林・植物の手引き」を持参されていた。 中根先生とは数回この森をご一緒させて頂いたことがあり、中根先生がこの森を退官され るときにその本にサインをして頂き、家で大切にしている。 |
メナモミがくっつきまくる | 黄葉まであと一息 |
「いろんな名前は耳に残っているが、その葉の映像が浮かばないんよねぇ」とふぉれすと さん。初参加のビッキーさんもがんばっている。イワヒメワラビの下をのぞき込んでるみ んなの姿は「頭隠して尻隠さず状態」そのものだ。「おっ、白いキノコが沢山ある」と僕。 研究林や芦生地域有害鳥獣対策協議会に調査報告書を出すために、Hさんが詳細に メモし図も記載。「Hさん、頼りになるなぁ!」と僕。「みんなの力の結集ですよ」とHさん。 「H先生、これは何と思う?」「H教授、これはなにかな?」先生になったり教授になったり Hさんが呼ばれる度に呼称がどんどん出世して変わっていく。 |
Hさんの詳細観察記録より抜粋 (報告書内の各写真はここでは掲載省略する) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「知ろう、守ろう芦生の森」8/11の捕捉調査及び、経過観察2 調査観察日時:2012年10月20日(土)天気:晴れ 1.ブナ幼木 葉の枚数が9/29に比べて2〜3枚増えているものもあるが、半分くらいが落葉。 株の先に1〜3の冬芽を付けている。(調査地No2 除去区) 2.調査地No1・ No2、放置区の状況 各放置区で、イワヒメワラビは立ち上がって膝くらいまで繁茂している、ワラビの下は 枯れて空間がある 調査地No1 外観 写真撮影 調査地No1 鹿柵内の放置区 No1鹿柵内 放置区 全体写真撮影・比較 No1鹿柵内 放置区 16 写真撮影・比較 8/11の時にみられたツボスミレはイワヒメワラビの下でも枯れずにある。 調査地No1 鹿柵外の放置区 No1鹿柵外 放置区 全体写真撮影・比較 調査地No2 外観 写真撮影・比較 調査地No2 鹿柵内の放置区 No2鹿柵内 放置区 全体写真撮影・比較 No2鹿柵内 放置区13-14 人が入ると繁り具合が判りやすい 調査地No2、鹿柵外の放置区 No2鹿柵外 放置区 全体写真撮影・比較 No2鹿柵外 放置区7 写真撮影・比較 イワヒメワラビの下にヤマモミジやシデの幼木があった。 3.No2鹿柵内 除去区 植生の観察 木本類 (幼木) □ヌルデ □タニウツギ □スギ □イヌシデ □ミズメ □イワガラミ(ツル性植物) □ヤマモジミ? 草本類 〇ダンドボロギク(種子 枯れる) 〇ツボスミレ 〇ノミノフスマ 〇イグサ 〇イタドリ 〇オオバコ 〇トキンソウ 〇コナスビ 〇チドメグサの仲間 〇ヒロハスゲ?(スゲの仲間) 〇ドクダミ(No2除去区15) 〇メナモミ(No2除去区16) 〇クマイチゴ(No2除去区16) 〇ハシカグサ がくに毛があり 判別できなかった草本 ☆1 オオハシカグサ? がくに毛が無い、葉に光沢あり、ハシカグサの変種、日本海側 ☆2 巨大スギナ?(No2鹿柵内 除去区13) 写真撮影・後日同定→スギナ ☆3 ミヤマナルコ?チゴユリ? ユリ科 写真撮影・後日同定→ほぼ「チゴユリ」 どちらも茎が「く」の字でジグザグだが、チゴユリは葉脈がはっきりするが、 ミヤマナルコははっきりしない。 「チゴユリ」は芦生では、かなり減っているので、そうだとしたら素晴らしいことだが。 5月に花が咲く。 (No2鹿柵内 放置区20)写真撮影 4.9月29日の経過観察時との比較 ※No1鹿柵内では、ヌマトラノオの葉が数枚増えていたり、植物が成長しているのが良く 見て取れた No1鹿柵内 除去区(左:1-5 右:6-10)写真撮影・比較 No1鹿柵内 除去区(左:11-15 右:16-20)写真撮影・比較 ※鹿柵外では植物が減っている。寒さで上部が枯れたのか、鹿の食害で枯れたのか判別は できず。また、9/29には無かったイワヒメワラビの小さな株も出ていた(No2鹿柵外 除去区2) No1鹿柵外 除去区 9/29 写真撮影・比較 (写真右上にダンドボロギクや、カンスゲがあった) No1鹿柵外 除去区 10/20 写真撮影・比較 (写真右上 植物が減少) No2鹿柵外 除去区 9/29 写真撮影・比較 No2鹿柵外 除去区 10/20(植物減少)写真撮影・比較 (2012/10/20 観察:T、ふぉれすと、ビッキー、矢問 記録:H) |
11:00 継続観察調査を修了して、あとは16時まで散策観察をすることになった。 「Hさん、先月はどこを散策したの?」と聞くと「上谷を杉尾峠まで往復」とのこと。 Hさんに頼まれたので2パターンの散策ルートを考えてきたが、Tさんが「是非、スケン 谷のトチの巨木の所へ行きたいのです。好きなんです。」と想定外の希望が出た。 「16時までに車の所に戻れるかしら。どうですか」とHさんが僕に聞く。 「ルートはもちろん知ってるけど、時間的にどうかなぁ。今日は全員長靴だしね。ちょっ と時間的に厳しいけど、スケン谷の出合までがんばって速く歩く事が鍵かな。」と僕。 「では行けるところまで行きましょう!」とHさん。まずは長治谷までもどる。 長治谷の黄葉はいつも11月3日前後。研究者か学生か、女性が乗った車が走っていた。 |
長治谷も黄葉まで2週間程か | 中山で徒渉・本流へ向かう |
11:45 長治谷でトイレ休憩をして、中山で渡渉しTさんを先頭に早い歩調でスケン谷へと向かう。 長らく本流沿いを通っていないが、やはり草木がとても減っている気がする。川の水はと ても綺麗で澄んでいる。川岸の岩場も注意して通過。林床にはトリカブトだけが多い。 男女のカップルが向こうからやってくる。Tさんがルートの状態を聞くと「スケン谷から 向こうはちょっと難しい。スケン谷まででやめた方がいいですよ」と男性。 Hさんは念のためその女性に「入林許可はとっていますか」と質問。 |
水が綺麗・ブナも立派 | スケン谷への徒渉 |
12:25 スケン谷出合。みんなの頑張りで短時間で到着できた。ここからは対岸へ徒渉する必要が ある。「来て来て、大文字草が綺麗にさいているわ」とHさんが目を輝かせている。 「大文字草ならこの岩の上にも咲いているよ」と僕。「うわっ、来て良かった〜」と写真 を撮りまくるHさん。徒渉のために、長靴でも徒渉できる浅いところをふぉれすとさんと 探す。「今日は、少し増水していると表示が出ていたから少し多いね」とHさん。 |
大トチと記念写真♪ | トチの巨木に囲まれてランチタイム |
徒渉して100mも行くとトチの巨木が点在している台地状の「栃ノ木ランド」がある 「うわ〜、綺麗ねぇ」とHさん。「ここでランチタイムにしましょうよ」と笑顔のTさん。 記念集合写真をとり、トチの実の状態や近辺の木々も観察する。 ふぉれすとさんからみんなに、サイコロ状のトチの揚げ餅を頂いた。Hさんからもきなこ 入りのどら焼き、ビッキーさんからもおまんじゅうやコーヒーを頂いて、満腹。 栃ノ木ランドでまったりくつろぎ歓談。沢山のトチの実が落ちている。とても気持ち良い。 さて、ここから元のルートを戻るか尾根筋に出て西へと尾根沿いに地蔵峠まで進むか。 この尾根筋は9年前に大谷を遡行した時に通ったことがある。疲れた足にアップダウン がこたえ、踏み跡もなくてなかなか難しく、最後にひどい笹藪に苦労した思い出がある。 しかし、その尾根筋の9年間の変化をしっかり見てみたい気もする。 HさんやTさんもこの先の滝は見に来たことがあるようだ。 |
スケン谷の二俣の滝 | 倒木にキノコも多い谷 |
地形図で所要時間を考える。みんなの脚力なら行けそうだ。この暑さが僕にはつらいだけ。 「ルートはわかりますか?」とHさん。「花の名前はHさんに頼るけど、芦生の森で迷子 にさせない役目はしっかり引き受けるよ」と僕。協議して尾根筋から戻ることになった。 13:25 登山靴と勝手が違う長靴での登りは、どうも力のロスが大きいので疲れやすいと感じた。 滝の前に出た。左右の滝の右の滝の左岸を巻く。傾斜がきつくて女性陣が苦労している。 倒木には立派なツキヨタケが多い。段々と沢筋が細くなり水が切れた。登りはまだある。 長靴のために下りにくかったり登りにくい斜面で、やや苦労しつつ高度を確実に稼ぐ。 |
大きな倒木・もうすぐ稜線 | コブの多い木 |
14:10 稜線に出た。ここからはアップダウンが繰り返す。以前と大きく違うのが踏み跡がしっか りとついている。しかも何も無かったところにしっかりした道標も何カ所かある。「変わった」 9年の間にルート化している様子に驚いた。「Hさん、右、右。左に行くと中山の方に 下ってしまうよ。」と、間違いやすい尾根の分岐も注意しつつ進行。暑くてバテてきた。 休憩しつつ、周囲の木々の名前のテストがHさんから出題される。答えるふぉれすとさん。 木々の間から「三国峠」も見える。一番気になっていた「ひどい笹藪」は見事に無くなっていた。 笹藪こぎをしなくて良いというラッキーな気持ちと、この稜線もドンドン荒廃しているという実感 の複雑な気持ちが入り乱れた。左下に林道が見え始めた。崖を避ける必要がある。 「ここを少し右手に下ると地蔵峠のゲートのすぐ横に出ますよ」と僕。 |
踏み跡がこんなにしっかり・・・ | 「あと少しですよ〜」 |
15:35 「うわ〜、ほんとにぴったりの所に出た」とHさん。朝は無かったテントが張ってあった。 男性が1人、ゲートの奥から出て下って行った。ここから車の所までの所要時間を考え つつ歩く。「このペースで、Mさんに言われている16時にほぼピッタリ着くと思うよ」と僕。 車の所に16時ジャスト到着。「すご〜い、時間通りに着いた!」とニコニコ顔のHさん。 Hさんは一旦帰宅して明日も須後から入林するらしい。 Tさんも来週は観察会で来るらしい。「お疲れさま〜」ここでみんなと解散。 次は降雪前の11月に、調査区の鹿防護ネットを下ろす作業がある。 少し渋滞にあったが、帰路途中でビッキーさんを下ろして、19時過ぎに帰宅完了。 長靴での斜面登りはやはり登山靴よりずっと疲れると感じた。 風呂に入って汗を流し、明日の「囲炉裏・第90回はんなりオフ」参加の準備開始。 |
本日の調査・散策ルート (黒ライン) |
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