【越美】残雪少ない冠山(1256.6m)
【山 域】 越美国境 冠山(1256.6m) 【日 時】 2009年3月21日(土) 前夜泊日帰り 【コース】 福井県側・今立郡池田町田代−P1058m−P1156m −冠山1256.6m−北尾根−林道(国道)No.5地点−田代 【メンバー】山日和、柳川洞吹、とっちゃん、たろー、矢問 (大阪、兵庫、滋賀、愛知の混成パーティ) |
以前、春先の国道の崖崩れでMICKEYと3度も行くことを断念した冠山。 山日和さんから「冠山行きませんか〜」のお誘いに「行きます!」と即答。 奥美濃のこの山も福井県側から登るときは「越美国境の山」とする山日和さんの福井県へ の思いやりを込めたこだわりには共感を覚える。 21時半の待ち合わせに1時間も早く着いてしまう。山日和さんそして洞吹さんと合流。 山日和号に洞吹さん、八日市からはとっちゃんを矢問号に乗せて、南条SAでたろーさんと 合流。猛スピードの山日和号を必死で追いかけ、3台で田代へ。 今年の雪の量なら、いつもはストップとなる河内を過ぎて田代まで入れるだろうという 山日和さんの予想通り田代まで行けた。旧道に入り、田代のキャンプ場跡に到着。 満天の星の下、山日和号内で小宴の後、「5時半起床、6時半出発」を確認し、1時半過ぎ に僕は愛車で車中泊。 3時に「ウーン・・・・ウーン」というコンプレッサーか何かのサイレンかで目が覚める。 何の音か気になりながら「山行に寝不足は敵だ」と気になりつつも再度寝る。 5:20 起床して、とっちゃんを起こしに行くともう起きていた。各自朝食を作り出発用意開始。 6:30 一旦「林道(国道)の行けるところまで行ってみよう」と車で出発するも、直ぐに鍵の掛かった 頑丈なゲートに阻まれて、Uターン。 「やはり田代尾根を末端から辿ってこその「雪の冠山」だ。」と言う山日和号に続き、元の 位置に車を戻して、再度出発の仕切り直し(6:50)。 |
無事な山行を祈る | トンネル上の尾根に取り付く |
左にお地蔵様がある。積雪時のポールの立った橋を渡り、右の杉林に入り、いよいよ尾根 に取り付く。山日和さんはここから取り付くのは3度目だとか。 ただし、今日は全く雪がこのあたりにないことがいつもと状況が違うらしい。 ちょうどこの下に国道のトンネルが通っている。「いずれは冠山の下をぶち抜いて徳山ダム と通年通行できる道が開通するはず」とのこと。 細い踏み跡らしきものが見え隠れする。この尾根は元々登山道があったのだが、たいてい の人が、ガイドブックにもある冠山峠から登る今となっては通る人もまれとなったという。 ウグイスが春らしい鳴き声で鳴いている。 |
ツバキは咲けど雪は無し | とっちゃんがヤブで見えない |
黙々と登れど、雪のかけらもなく、今は笹や潅木のうすいヤブが行く手を邪魔してくる。 「暑い!」「フリースなんか着て矢問さんらしくないよ〜」と山日和さんに言われ脱いだ。 この尾根には見ごたえのある立派なブナが点在しており、見上げては気持ちが落ち着く。 |
「立派なブナだな」 | 「ヤブで疲れて声が出ないわ」 |
750mあたりでやっと雪が顔を出した。「ここから雪山ですよ」と山日和さんが宣言するも、 先を見るとまだヤブがありそう。「こりゃフェイントのような雪」と割引して聞いていると、 やはり登り切った小ピーク(852m)から再び雪は消え、今まで以上の濃いヤブが行く手を 阻んだ。予想通り、やぶこぎ軍団の企画オフはこれ(ヤブ)が序曲のように現れる。 両手両足でもがきながら前進するも、体は笹や枝にはねもどされてなかなか進まない。 |
またヤブに埋もれる | 立派なブナ | 「雪が出てきたが・・・」 |
後ろの3人が遅れいるがヤブで姿が見えない。右手に見える金草岳は、いつもなら真っ白 で、ヒマラヤひだのような陰影を見せるとのことだが、今日はまだら模様。小休止とした。 「雪山へ行きたい」と言い参加したたろーさんの望みはヤブコギの序曲でスタートした。 休憩した先は、ヤブの中にもまた雪が顔を出し、雪が続きだした。 |
「おおっ、展望が開けたぞ」 | やっと雪らしいところに |
「あちゃ・・」ザックにつけてるピッケルを見ると、スピッツェのゴムキャップが、ヤブコギの 途中で引っかかって落としてしまったようだ。 ピンクのリボンと白い杭が立っている。「ロガー測量点」のようだ。 |
金草岳も雪が少ない・・・ | 林道(国道)との合流点 |
9:35 右斜め下に幅のある雪面が見えた。林道(国道)との合流点である。「2」と大書され、 柱に山の会と書かれた看板がある。 冷たい風が吹いてくれれば助かるのだが、晴天で暑い! ここまで3時間近くもかかった。藪をおさえる雪があればもっと早かっただろうに・・・。 |
林道(国道)との合流点「2」 | 林道(国道)北側斜面を登る |
ここから冠山峠まで林道を歩いてもいいのだが、そんな軟弱プランを山日和さんが立てる はずもないし、せっかくの残雪の季節に、僕もP1058mを通って県境尾根へと出たい。 |
林道の対岸急斜面をステップを切り笹を持ってよじ登ると、すぐに気持ちのいいブナ林が 広がった。雪は少ないものの、よく締まってスノーシューの出番はここでもない。 |
「いい景色ねぇ」 | 「元気のあるウチに記念写真」P1058m |
10:35 山日和さんに続いてP1058mへ登ると、「おお〜!」冠山の雄姿が目に飛び込んだ。 展望は実に素晴らしく、やっとヤブから解放された気分でホッとできた瞬間であった。 「ここで展望を楽しみつつ読書して待っていてもいいかも」という気分になってしまう。 |
一旦下って県境尾根へ | 県境尾根への登り開始 |
今日下山路に使う尾根をみんなで眺める「なんか、あっちの尾根の方が、ヤブが濃いよう に見えますねぇ」「ホンマやなぁ」「時間を見て、ルートの再考が必要かも・・。」 遠くに真っ白な白山が見える。以前ナイトンと登った銀杏峰も雪解けが進んでいるようだ。 |
それ行けドンドン | あと一息で県境P1156m |
「もう快適な雪尾根歩きが続くからね」と山日和さんが言ったものの、一旦下る鞍部への ヤセ尾根はまたまたヤブの密生地だった。どっちに向かえばヤブが少しでもうすいのかと 右へ回り込む者、正面突破を試みる者等、バラバラで鞍部を目指す。 雪が薄い斜面は直ぐしたに寝ている笹に足を取られてズズズーッと一瞬で滑ってしまう。 雪斜面を先に進み、トラバースしている山日和さんの足が滑り出してそのまま滑落開始。 20mほど下のブッシュで止まった。落としたストックをとる際に足が滑り出したという。 ここからの登りは、今日のメンバーの中で最も若いたろーさんが先頭になった。 軽快なリズムでぐいぐいと登って行く。洞吹さんは足が攣りかけているようで、山日和さん から芍薬甘草湯をもらって飲んでいた。北の斜面ながらも晴天ギラギラ太陽との戦いの 僕は、暑さにまいってヘロヘロのナメクジ状態になりつつあった。「風吹け〜暑いぞ!」 と心で何度叫んでも冷たい風が吹いて来ないのはツライ。 |
P1156mから冠山峠方面 | 山の説明をする山日和さん |
11:40 越美国境稜線・1156m地点に到達!。山日和さんが下着を脱いでる。僕も暑くて脱ぐ。 とっちゃんからプチトマトを頂いた。「ウマイ!」 予定では12時までに冠山に立っているはずだったが、想定以上の雪の少なさと予定外の ヤブとの格闘タイムで、えらく時間を食ってしまったようだ。 |
冠山の頂きへは急登が待っている | さて冠山を目指そう |
向こうに見えるは、近いようで遠くに感じる冠山の姿。山頂直下の雪と岩肌が見える。 「冠山の姿が、残雪で真っ白だったら感動ももっと大きかったろうに」 あれをどのルートから登るのだろう。尾根づたいは岩壁で阻まれて無理のようだし・・。 「ここから冠山北側の基部まで行き、そこからアイゼンとピッケルで雪の岩壁を登る」と 山日和さん。なかなかの角度がある。雪がしっかり締まっていてくれれば良いのだが。 |
冠山の北側基部までの県境尾根 | これを下ればもうすぐ基部 |
ここから冠山の北側基部まではこのルートでの最大の見せ場らしい。 「矢問さん、せっかくだからスノーシュー履いても良いのでは」と山日和さん。 「しっかり締まっていて沈まないし、このままで歩きます」「それもそうだねぇ」 右に左にうねる雪稜が繋ぐブナ林の台地は最高の雰囲気だ。 基部へは一旦急降下する。 振り返って見上げるとなかなかのもの。「う〜ん、これは登り返したくないなぁ」 |
これを登れば基部だ | ピッケル持って山頂目指す |
12:30 冠山の北側基部。「帰路はどのルートにしようか・・・」地形図を見て帰路を検討する。 予定では山頂から稜線を東進して、北へルートを取り地形図の1059m−746mとつないで、 林道(国道)の急カーブ地点へ下りるプランだった。しかし今日の雪の状態では未知の尾根 に入って激ヤブに捕まる可能性が大である。また、来た道をピストンするプランも何度かの 登り返しの辛さと、あのヤブを再度通過しないとならない・・・。 時間も昼過ぎ・・。ここから北に伸びる最短の尾根を使おうということになった。 末端の崖記号の連続が気になるが、すぐ左の谷の堰堤記号がある。この堰堤の付き具合い かんで、林道(国道)に降り立つことができるのではないか、と言うことになった。 ピストンで同じゲキヤブとの格闘は、みんなもういやだったのと、この尾根の雪がどこまで 続くかはこれまた未知数だったが、林道(国道)まで最短ルートなので苦しみがあったと しても、短くてきっと耐えられると判断したからである。 山日和さんのザックにはロープもあるし何とかなるだろうと。 |
まだ傾斜もマシな登り始め | いよいよ急な壁は直前に |
ここでスノーシューとストックをデポして、アイゼンを装着。ピッケルを持ち、いよいよ 山頂北側の雪の急斜面に突入となった。「なかなか立ってるなぁ」と上を見上げる。 途中までは比較的緩やかだが、上部に行くに従ってまともに立っていられない急傾斜 となる。壁のような上を見上げると途中にいや〜な灌木とヤブの地点が顔を出している。 |
ブッシュ地点の手前 | あと一息で頂稜だ |
この斜面に備えて山日和さんはロープを持参、みんなは簡易ハーネスとカラビナ、スリン グを用意しているが、ロープを出すほどのことはないという山日和さんの判断で前進。 せっかく持ってきたハーネスを僕はつけておいた。「きっと使わないよ」と山日和さん。 しかし、頂稜直下で先頭の山日和さんはブッシュに捕まり、それを避けるのに四苦八苦。 「違う方へ逃げてくれ〜」と上から山日和さんの声。慎重に少しくだって左右を確認する。 山日和さんと僕とたろーさんは左へとルートを取り、岩肌が出ているところではアイゼン の歯が1〜2本やっとかかり、アテにならない笹をつかみ、ピッケルをバイル代わりに露 出した地肌に何度も打ち込んで体をずり上げる。「体重が敵やなぁ。腕力は味方やなぁ」 洞吹さんと、とっちゃんは右へと逃げて上を目指した。 登りながら「これをまた下るにはどうルートを取れば良いかな。こわ〜」とキョロキョロ。 |
山頂を目指せ〜 | それ行け慎重に |
なんとか辿り着いた頂稜には素晴らしい展望が待っていた。「たろーさん、あと少し」 たろーさんもヤブを避けつつピッケルを打ち込んで頑張って登っている。 ここまで来れば山頂までは直ぐだ。雪がない太陽に照らされた山頂が見える。 |
このブッシュを過ぎると山頂だ |
足元はスッパリと切れ落ちた南壁のずっと先には、徳山ダム湖が見える。 真っ白なはずの奥美濃の山並みが、もうそれほど雪をまとっていない。 |
冠山の三角点 | 冠山の山頂で記念写真 |
13:25 山頂は完全に雪がなく、三角点も岩肌も見えている。全員でガッチリと笑顔で握手。 田代の車のデポ地を出てから山頂まで6時間半を要した。 ランチタイム。ラーメンにウインナーや野菜を入れて食べた。コーヒーとパンも食べた。 「あ〜、このまま眠りたいなぁ」満腹になると昼寝をしたいくらいのポカポカ陽気。 「このまま展望を楽しみながら一夜を過ごして明日帰りたいなぁ」と本音をポロリ。 奥美濃の山々始め、見える山名を山日和さんが教えてくれる。 「あれが、白山と別山、あれは能郷白山、あれは蕎麦粒山、あれは笹ヶ峰、あれは 美濃俣丸、あれは願教寺山・・・・」まだまだ登っていない魅力ある山が多い。 無線機を出し位置情報をD-STARでの送信を試みる。 名古屋大RPTには届かない。生駒RPTの声はワッチできるが届かない。 白山RPTも届かない。春日井RPTが素晴らしく綺麗にワッチできるものの、ロングQSO をされていて、山頂にいる時間切れで送信できない。残念。 430MHz・FMも思ったより静かで3局ほどがワッチできる。 |
さて、下山開始 | 下山ルートの北斜面へ |
14:30 下山開始。下山はルートを知っている山日和さんを先頭に、洞吹さんが続く。冠平寄りの 急斜面をアイゼンを効かせて一歩一歩確かめるように山日和さんは慎重に下る。 |
急な斜面を一歩一歩慎重に | 斜面をトラバースしてデポ地へ |
滑落すれば止まらない急傾斜だ。緊張のひと時が過ぎて、スノーシューのデポ地に戻って きた。再びピッケルをストックに持ち替えていよいよ北尾根の下山に突入だ。 「横の谷筋にスキーで下りると早いだろうなぁ」と、とっちゃん。 スキーの出来る人の発想は僕には怖い。 「堰堤の付近がどうなってるか知らんよ〜。林道に飛び出してしまうかも」と山日和さん。 |
北尾根下降開始 | 雪面よ続いてくれ〜 |
上半は十分な雪があった。「うわ〜っ」ストックが手から離れて拾おうとした瞬間、足が 滑った。10mほど滑って木の幹で止まった。往路の山日和さんと同じ原因の滑落。 股裂き状態でストックを取ろうともがいたが、滑ってしまう。停止したストックの横にい た洞吹さんがストックを拾ってくれた。「洞吹さん、ありがとうございます。あれっ? 洞吹さんのピッケルの赤いゴムキャツプが無くなっていますよ」「うわっ、ホンマや!」 登りで僕が落としたように、洞吹さんは下山のヤブ地点で落としてしまったのだろう。 |
「またヤブか〜」と洞吹さん | 「着地OK」と山日和さんからサイン |
下山時のヤブは登りに比べるととても薄くてそれほど苦ではない。ぐんぐん下る。 大きなブナも点在する。しかしここのブナにも落書きの彫り傷がつけられていた・・・。 下に林道(国道)が見えた。山日和さんはうまく着地点を見つけられるか・・。 左右からの谷の合流点にふたつの橋が見え、その橋と橋の間から雪の小広場が尾根末端に 伸びていてそこに山日和さんが難なく着地した。振り返った山日和さんから「OK」の 両腕でマル印のサインが送られてきた。僕はそれを見て後続に「無事に林道に着地出来た ようですよ」と伝えるとみんなから「ホッ」とした笑顔がこぼれた。 |
「やっと林道(国道)に下りた」 | 「もうヤブとはおさらばだ〜♪」 |
16:00 着地して周りを見回すと、とても下りられないようなガケばかりが目に付く。 「ここしかない」というベストポイントへ下りることができたことは、ラッキーな下山路選択 だった。左の谷の堰堤には「5」の看板がある。冠山峠まで5キロ地点という意味だ。 もう日暮れが始まったのかな、と思ったらまだサングラスをかけていることに気づいた。 サングラスをとるとまだまだ明るい時間だった。「闇下は免れたな」 のどがカラカラだが、もう水もほんのわずかしか残っていない・・・。 目の前には綺麗な沢水。「黄砂も気になるけど、土で漉されているでしょう」とペット ボトルに沢からの雪解けの綺麗な水を入れてゴクゴクと思いっきり飲んだ。 「あーっ、ウマイ!生き返った!」みんなも沢の雪解け水を汲みごくごく飲んだ。 とっちゃんから三色団子を頂いた。沢水と団子で生き返った〜! |
大岩が落ちてきそう・・・ | 川の蛇行がキツイ地点 |
ここからはもう8割方雪の消えた長い林道(国道)をのんびりと歩く。 右上に見える、雪の無くなったヤブの尾根を四苦八苦して下ることを思うと天国だ。 道端にはフキノトウが顔を出し、草花もいくつか咲いているポカポカ陽気。 登ってきた尾根筋を左手に見つつ、みんなでいろんな話をしながら下る。 1時間で(17:00)本来の予定着地点の林道(国道)のカーブ地点「8」に来た。 最後の休憩をとる。 |
「通行止めゲートに着いたね」 |
17:30 朝見た立派なゲートに着いた。ここからあと15分歩けば車のデポ地だ。(17:45) 一人一人と「お疲れ様!」とがっちり握手。 本日の歩数は17,400歩。11時間の行程だった。良く歩いた。 渓流温泉冠荘で汗を流した(500円)。流石に山日和さんはスタンプカードを持っていた。 武生ICでたろーさんと分かれて、後の4人は南条SAで夕食タイム。 3人と別れ、ひとり敦賀ICで高速を下りて27号線から162号に入り、名田庄を通り、慣れた 道でのんびりと帰った。 明日行く、ナイトンの大学へは朝10時の電車に乗ればよい。 MICKEYから「ゆっくり寝て帰れば」とメール。途中の道の駅で朝4時に雨が降り始める音で 目が覚めるまでぐっすり寝て、吉野家で朝定食を食べて帰宅した。 雪は少なかったものの、天気にも恵まれ、良き仲間とともに楽しい良い一日を過ごせた。 山日和さん、洞吹さん、とっちゃん、たろーさん、ありがとう! |
本日のルート |
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