沢【兵庫】八木川・布滝谷
【山 域】 兵庫県 八木川・布滝谷(氷ノ山 北西尾根からの谷) 【日 時】 2008年8月10日(日) 【メンバー】矢問単独 【コース】 福定親水公園−布滝65m−布滝谷−二俣・左俣−奥の二俣・右俣 −布滝ノ頭1264m−氷ノ山越ー小豆コロガシ−福定親水公園 |
オリンピックを見ていて出発が23時半と遅くなった。高速は帰省渋滞らしいが地道で 行くので問題ない。1時過ぎにたぬきさん宅付近を通過し、2時半に親水公園に着いた。 無人の車が1台。真っ暗でヒートアイランド現象もないこの地は、気温は23度と涼しい。 空にはアルプスで見るような満点の星。12日が流星群のピークだが、今夜も流れている。 X−トレイルの車窓には専用の網戸があり気持ちよく仮眠。4時半に寒さで目が覚めた。 うっすらと明るくなり出した。ゆっくりと朝食にする。丹波のたぬきさんも今日は氷ノ山 に登るらしい。5時過ぎにメール。沢装束に着替え、登山届けポストに投函し出発準備。 5:45 公園入り口の橋を渡り左岸沿いに行きかけたが雑草で行きにくい。戻って登山道沿いに進 み、キャンプ場を過ぎて左へと河原の飯盒炊さん場所に下りる手前で、登山道から離れて 右斜面についた植林内への仕事道を進む。6mのニンジン滝のかかる枝谷の鉄階段を下り どんどん進むと布滝谷に架かる橋がある。「布滝」の道標がある登山道方面へと続くが、 この橋の左手(右岸)から布滝谷へと入渓する(6:00)。 もう橋のところからも8mの滝とその奥の布滝が見えている。 |
8mの滝が立ちはだかる | 8mの滝の落ち口 |
6:05 8mの滝が立ちはだかる。水量も多くなかなか良い感じ。直登は全く無理。右のルンゼを 巻くのだが、これが急斜面で慎重さを要する。落ち口方面に行きたかったが滑るので、さ らに上へ進み左へ。落ち口の上部に出た。下に落ち口と布滝の滝壺が見える。 下りるにはつかむ木が少なく危険でロープが必要だ。下りるか、そのままこの左岸を布滝 も巻いてしまおうかと思案する。「下りて、布滝をまともに下から見なくてどうするんだ」 「このまま巻いたら簡単に布滝を巻けるぞ。一旦下ったら、右岸のスラブ横の樹林帯への 腕力の要るクライミングが必要なルートになるぞ」葛藤の末、滝壺横に下りることにした。 念のために持ってきたのは8ミリ20m。下を観察。草がじゃまして足場がわかりにくい。 ロープをダブルにして下れば、何とか落ち口手前のバンドに下りれそう。「本当に下りる のか。もう後戻りはできないぞ」とまた葛藤。まっすぐに下りると8mの滝の落ち口付近 で危ないので、右の滝壺側に振りながら下りる。途中の細い木にも引っかけて慎重に。 なんとかバンド部分に下りられた。ここでロープを回収。「あれ??」ロープがびくとも 動かない。「嘘だろ〜。あとにも何があるかわからないのにこんなところで残置できない」 引いたり振ったり5分位してやっと少し動いた。振り落とされないように慎重に回収。 |
65mの布滝 | 布滝の落ち口 |
6:35 「下りられたな・・・ウワッ!」尻餅。落ち口の岩はどれも滑りやすく危ない危ない。 布滝の滝壺側へ移動して休憩。上を見上げて見る65mの布滝は圧巻。「すごいな」 白布を流したような美しさを目の前で見るとやはり感動する。ボーっと見とれていた。 とても涼しくて気持ちいい。 昔、神戸大学の学生がこの滝に挑んで転落死したという。ハーケンやボルトもあると言う が見えなかった。(布滝:落差65m、登攀距離100m 八木川流域最大の滝とのこと) さきほどいた左岸の台地からは簡単に巻けそうだったけど、下りた限りは右岸の樹林帯を 目指さないと巻けない。滝の左手に広がる逆層スラブの岩盤も滑る滑る。 スラブのもう1つ左手の樹林帯を大きく回り巻く手も考えたが、やはり滝の水際すぐ左手の 樹林帯にとりつく方が良さそうだ。スラブの岩を慎重に登り樹林帯の岩場に近づくには 草をつかんでのスラブ岩盤トラバース。失敗すれば元の位置まで滑り落ちる。 なんとか樹林帯の岩場にたどり着いたが、切り立った岩場から樹林帯までの登りの足場が どうしてもない。相棒がいたら、膝やショルダーで1人登れば何とかなるのに・・・。 もう1段下って背伸びして投げ縄風にやっと届く木の枝にシュリンゲをかけ、体を持ち上げた。 デイジーチェーンでセルフビレイをとり、もう一段上の枝にシュリンゲを固定し、登る。 セルフビレイを解除するのも1本の細い枝の上。「滑ったら終わりだな・・・」 こういう場面も相棒がいたら、トップはどんどん登り、ロープを相棒に下ろしてセカンド が回収しながら登れば済む。「まるでモンキーやなぁ」単独でも上まで登りロープで再度 下って回収すれば良いのだが、上部にロープをかける適当な木もない感じなので1つ1つ の動作を慎重にして、最後の乗り込む足場の岩をつかめた時は「やった!」と安堵。 スラブの岩盤しかない高度感で、ここまで心臓は飛び出すぐらいにドキドキしていた。 木の枝をつかんでは高度を稼いでいく登りが続く。すぐ横に滝の水が勢いよく流れている。 7:20 布滝の落ち口に出た。「やっと巻けた!登攀系の巻きには単独はキツイな」 ここからは勾配も緩くなり、4mから7mの小滝が10ほど続く。ナメもあり静かな沢歩き という感じ。布滝の巻きで腕が疲れ切り、ここからの写真は手が震えてブレまくった。 古い大木が沢に横たわっている。それを越えると二俣。 |
ナメもあり静かな沢となる | 二俣にかかる2つの滝 |
7:40 右は二段15mの滝、左は二段12mの滝。ここは滝と滝との中間部を登り左俣へと進む。 紫の花が咲いている。コバギボウシかな。二条2mの滝を越えて左の枝谷にナメ10mを 見ながら右へと進むと5mの滝。下部に虹が見える。これは右のルンゼから巻く。 |
小滝は簡単に登れる | この滝は右手を登る |
左に急な枯れ沢を見て、8mの滝。右を巻くが滑ってうまくいかない。 左の方が簡単に巻けた。まだ時間はたっぷりある。少し休憩。 次の二条6mは、水際右手をややシャワー気味に簡単に登れた。 |
奥の二俣の左の滝 | 奥の二俣の右の滝 |
8:25 そして奥の二俣。どちらにも12mの滝がストーンと落ちている「両俣の滝」。 (日帰り本の「両股の滝」の写真はこの「奥の二俣の滝」ではなく、手前の二俣の滝の写真) 右股を進むので右の12m滝を右から巻く。赤茶色の岩盤のナメ滝を2つ過ぎると5mの 滝があるがデコボコと穴があるのでそれを拾って登っていく。しかし滑りやすくバランス必要。 |
赤茶色の岩盤のナメ滝 | 多段100mほどのナメ滝 |
ブナ林が広がり落ち着いた雰囲気となり、多段100mほどのナメ滝が見えてくる。 これがまた滑りやすく、一歩進んで二歩下がるという感じで滑る滑る。両側は粘土質の 土壁で逃げるにも滑ってうまく上がれない。 「どうすれば良いんだ・・・前にも横にも進めない!」この時のために持ってきたmizoの ハンマーをアイスパイルのように粘土壁に突き刺して一歩一歩ナメ滝際を進み、水量が 少なくなったところで左の斜面を登り樹林帯に登った。 この先は小さなナメだけなので、この尾根を詰め切って布滝ノ頭1264mピークに直接 出るルートを取ることにした。 それほどの藪ではなく、問題なく進むことができる。鹿の糞があるので鹿が草木を食べて しまい、思ったよりも藪が少ないのかもしれない。と思っていると・・・・ 目の前にシノタケの密生藪地が始まった。雪の頃の重みで下に向いている上に、編み物の ように絡み合い、それを解きほぐしてかき分けて進まないとならない。 直径1センチほどあり背丈よりずっと高いので腕力が思った以上に要る。 1m進むだけで息が切れる。汗が噴き出る。沢は涼しかったのに・・・。 かき分けて進むと跳ね返されたりしてなかなか前進できない。 |
山頂は黒雲がかかりだしている | 1264mピーク |
9:45 ポンと展望の開けたところに出た。地形図のピーク東面の崩壊地の北端だ。 氷ノ山も見える。山頂は黒雲がかかりだしているようだ。 少し右にルートを取りつつ時計と逆回り気味にピークを目指そうと進んだ。 「あと少しだ。」と何度も自分に言い聞かせ、だるい腕で笹をかき分ける。 笹を漕ぎながら、奥美濃の大谷川みやま谷から蕎麦粒山への沢登りの時を思い出した。 10:05 氷ノ山と鉢伏山を結ぶ登山道に出た。予定通り1264mピークだ。 「あ〜、やっと出た!。ふぅ・・・」両側は背丈ほどの笹がずっと続いている登山道だ。 座り込んで息を整え、無線機をつけてみた。IRCさん(丹波のたぬきさん)が僕をコール してくれている。DQKさん(父たぬきさん)もコールしてくれている。 応答した。もうすぐ氷ノ山山頂に着くようだ。出発点は僕と同じ親水公園とのこと。 氷ノ山の山頂付近は黒い雲がかかっている。気圧も下がっているし、天気も下り坂か。 氷ノ山山頂へ行く元気は無いことを伝え、氷ノ山越えでまたコールすることを伝える。 後山を南斜面から登っているやまあそさんをコールしたが、まだ稜線には出ていない模様。 薮こぎヘロヘロでゆっくり休憩しつつ、沢装束からハイカー姿に靴も履き替えた。 10:35 氷ノ山越えに向かって出発。2分ほど下ると「布滝頭」の道標。ピークすぐ南の鞍部だ。 道標「赤倉頭」を過ぎると丸太の土止めをした下り。ロープも張ってある。 トンボが沢山飛んでいる。 そして「赤倉頭登り口」の道標が左にあり、登り道があるが登らずそのままみ、赤倉山の 東側を登山道は進み、氷ノ山越えへはあと少しだ。 |
氷ノ山越えの小屋前ベンチで休憩 |
11:00 氷ノ山越えに着いた。ベンチに座って昼食にするも、疲れ切って食が進まない。 山頂小屋はここからしっかり見える。1時間ほどで行けるがもう今日はシンドイ。 山頂ではIRCさんがMXFさんとQSOされているのでワッチ。山頂では雨が降り始めたとの こと。直線距離にして1.5kmしかないここは日が差しているのに。 男性が1人山頂から下ってきて西方面へと下っていった。親水公園方面から5人グループ が登ってきた。 MXFさんの声は全く聞こえないが、IRCさんとのQSOは続いているようだ。 11:25 再度、後山のやまあそさんをコールしたが応答なし。まだ薮こぎ中かな。残念。 小豆コロガシを下山開始。3分ほどしてIRCさんからのコールがあり応答。三の丸から 山頂にかけて夕立のような雨になってきたとのこと。こちらは全くその気配がないことを 伝えた。 木陰の登山道をのんびり下る。気持ちの良いブナ林も広がる登山道で、子供達が小さい 頃よく登った道だが、今は道標が沢山立って整備されている。 |
、「ひえの水」は冷たくてうまい! |
「弘法の水」は涸れていたが、「ひえの水」は流れ出ていて、置いてあったコップでとても 冷えてうまい水を3杯も飲んだ。 |
地蔵堂の内部も変わった | 不動滝をのぞき見られる地点 |
親子連れが登ってきた。地蔵堂を過ぎて、不動滝をのぞき見られる地点。新しい地蔵が あった。不動谷もまだ溯行していない。登攀4級、巻き2級の谷。またいつか来てみよう。 |
水遊びを楽しんでいる河原 | この奥が不動谷 |
沢山の人達がバーベキュ−と水遊びを楽しんでいる河原を過ぎれば、あと少しで 親水公園だ。雨に遭わずに下山完了できそうだ。 12:20 下山完了。朝と違って車が満車だ。僕の車の隣にDQKさんの車があった。 下山届けを出し、車で出たとたんザーッと雨が5分ほど降ったがすぐやんだ。 モービルからDQKさんとIRCさんをコール。繋がった。雨はたいしたことがないが雷 が鳴っているらしい。こちらはかんかん照り。氷ノ山の上にはまだ黒い雲が見えた。 「万灯の湯」へ向かったが、燃料高騰につき運営ができず閉鎖されていた。 次にある「天女の湯(700円)」で汗を流し、また地道で快適に走り16時帰宅。 布滝の巻きは単独ではシンドイ。行かなかったが右の方が簡単に巻ける気がする。 布滝の腕力での巻き登りと、詰めのシノタケ漕ぎで腕が疲れ切った沢登りだった。 |
本日の溯行ルートと下山ルート |
この1つ前の記録は「沢【兵庫】根宇川・滝ノ谷から笠形山」の記録です |