【台高】ヌタハラ谷から桧塚劇場
「若狭方面の沢登りに行きますよ〜」「了解〜」って返事してたら急遽台高へ変更。 行ってみたかった「桧塚劇場」から桧塚奥峰や桧塚を眺める展望コース。 下山も一般下山ルートとはひと味違う、山日和さんお勧めの通称「ヌタウ」のバリ尾根。 ヌタハラ谷の不動滝も一望できるという(^^) 今回は山日和さんのレポートです! |
【山 域】台高中部 ヌタハラ谷から桧塚奥峰周辺「桧塚劇場」 【日 付】2006年9月2日(土) 【コース】入渓点7:45---9:20夫婦滝下---10:10夫婦滝上10:25 ---11:32不動滝11:53---12:35 2段30m滝下13:00 ---13:47桧塚劇場14:26---15:37火事場跡台地15:50 ---16:40駐車地 【メンバー】山日和・こと(とっちゃん)・矢問 |
ヌタハラ谷は3回目である。初めて訪れたのは25年も前の話。2回目は8年ほど前だが、 正直なところ夫婦滝と不動滝以外はあまり記憶にない。何回来ても新鮮ということなのだろう。 今日は本来なら若狭の沢へ行くはずだったが、天気予報急激な変化(近畿南部の回復)に より急遽ヌタハラ谷へと変更したのだった。 |
この地点にポンと下山して来るよ | 2日前の雨でなかなかの水量ね |
7:45 下山ポイントである千石谷林道のゲート前に駐車、林道を戻ってヌタハラ谷林道を少し 上がったカーブが入渓ポイントである。 ここには何故か一方通行の進入禁止の標識が。矢問さんが「バックで入るんならええん ちゃうの〜」と一発かます。 杣道をしばらく進んでゴルジュとなった沢へ降りるが8mほどの直瀑に阻まれ再び杣道 から巻き上がる。 |
「ここのへつりはこうやるんやで」 | 「私もうまいもんでしょ」 |
ここから大きいものはないが息も付かせぬ連瀑の始まりである。小さいながらも立派な 釜を持つ2段3m滝を左から抜ける。今日は徹底的に水線沿いに行こう。 |
スゴイ水圧だよ〜 | 本日は4条になってる |
記録によっては2条6mとも3条5mともある滝は、本日は4条の滝となって落ちている。 水量はまずまず多いようである。右端の滝をとっちゃんがトライするもあまりの水圧に 出だしでギブアップ。水が少なければ楽勝で上がれそうだがちょっと無理。 左からの巻きを選択した。 このあたりはまだ植林が優勢でやや雰囲気には欠けるが、沢自体は退屈することがない。 |
赤っぽい小滝が現れた | 矢問さん、ついておいでよ〜 |
岩盤が赤っぽい小滝が現われた。赤石沢のラジオラリアはこんな感じなのだろうか。 スケールが違い過ぎるが。ここでムービータイム。とっちゃんと矢問さんに先行してもらうが、 矢問さんはなにやら叫びながら突っ込んで行く。 |
うわ〜、水圧で戻されるわ | こりゃスゴイ水圧や! |
続いてトユ状のナメ滝に豪快に水流が走る。ここも流芯をぐいぐい進むがなかなかの水の 抵抗だ。泡立つ流れは深さがわからず、思いのほか深いところがあり驚く。 |
左のチムニー状を上がる | すだれ状2条10m |
これも大きな釜を持つ8m滝は左をへつって左手のチムニー状を上がる。 フィックスロープがぶら下がっているが世話になることもなく快適にクリア。 滝上から眺める釜の色は恐ろしいくらい深く美しいエメラルドグリーンだ。 続いて3m、すだれ状2条10mと続く連瀑は美しい。ここは右から巻き上がる。 ここからもとても覚えきれないほど滝が続く。 |
こんな水圧に負けないわよ | あ〜・・・流されちゃった〜 | 負けないよ! もう一度! |
ある滝で振り返るととっちゃんの姿が見えない。水面に目をやると頭を残して水没していた。 決定的瞬間を逃してしまった。矢問さんも残念がっている。 右岸に目を引く大木が見えた。カツラの木だが、2本の木が真ん中あたりでつながってHの 字のようになっている。不思議な造形である。 後ろには炭焼窯の跡があった。ここまで炭焼きが入っていたのか。 このあたりを境に両岸は自然林となった。心なしか沢も生気を増したような気がする。 |
突っ張って通過よね | これが夫婦滝の下部ね | 巻きはこのバンドのはず・・・ |
9:20 沢を包む空気が引き締まったような気がした。目の前に現れたのはお待ち兼ねの夫婦滝だ。 滝つぼからは下段の20〜30mしか見えないが、この滝は2段100mあるという大滝である。 これだけ落差があると高巻きも半端ではない。まぎれもなくこの巻きが本日の核心部である。 |
嫌らしい巻きよね・・・ | 意味無い残留ロープだわ |
滝身右のガラガラで急峻な支谷を落石を起こさないよう慎重に数10m上がる。 谷の上部左側には見上げると首が痛くなるほど高い岩壁が取り巻いている。 前回のかすかな記憶では、このあたりから滝身側の斜面に取り付いたはず。 うろ覚えで斜面を凝視すると小さなバンドが段々に連なっているようだ。 バック気味にトラバースして最初のバンドに乗り、突き当りで上のバンドに這い上がる。 この繰り返しで立ち木を頼りにモンキークライムが続く。立ち木がなければ恐くてとても上がれ ないだろう。1ヶ所嫌らしいところではスリングでセルフビレイを取った。 ぐんぐん高度上げて傾斜がやや緩くなったところで左へトラバースしていく踏み跡に乗った。 流れに近付いていくと、夫婦滝の上段、70mの直瀑が中段の10m斜瀑と共に姿を現わした。 豪快としか形容のしようがない。ハードな高巻きの中で垣間見る心打たれる風景であった。 滝の展望地から小尾根を少し登り左手の小谷へトラバース。久し振りの水の流れだ。 流れに顔を浸けてゴクゴクと水を飲んだ。緊張でのどがカラカラだったのだ。 ここも上部は壁が立っている。谷へ出た地点から対岸をトラバースする踏み跡があった。 それを辿ると夫婦滝最上部の流れが目前だ。ここから落ち口へ最後の登りも足元の悪い急 登である。上部には役に立たないロープが張られていた。 落ち口のラインの10mほど上から小尾根を乗っ越してトラバース気味に谷へ復帰した。 放り出すようにザックを降ろす。緊張から開放される一瞬である。みんなの顔にもホッとした 表情が浮かぶ。 |
行けども滝だらけ〜(^^)v | シャワーで登るのね | ぎぇ〜、つ、冷たい〜 |
小憩後、眼前の8m滝に取り付く。滝身左の馬の背状の岩を登り、奥の分流を頭から水を 浴びて這い上がった。とっちゃんは水の抵抗に押されて苦労している。ここはお助けで引き 上げる。矢問さんは自力でクリア。もはや全員ずぶ濡れである。 |
私は登り切れたわ!! | ホールドはどこかな | 突っ張ってもリーチが・・・ |
続く2条5mは意外とホールドが細かく、中段からズルズルと滑り落ちてしまった。 次にとっちゃんがトライ。中ほどで苦労している。これは落ちるかもしれないと思い、走って 滝の上からお助けを出そうとしたら登り切ってしまった。大したものだ。 上の3m滝は両手両足突っ張りで抜けるが、とっちゃんはリーチが足りずお助けの世話に。 これで1勝1敗、なんとか面目を保った。矢問さんは高みの見物を決め込んで一人だけ楽を している。 「矢問さん、戻って登らなあかんがな」とクレームをつけるが「ぼくはカメラマンですわ」と 涼しい顔である。 |
冷たくて気持ちいいよ! | お手本を示すぞ | 階段みたいな滝ね |
その後も斜瀑8m、4mと直登。とっちゃん曰く「日本庭園みたいやねー」という作ったような 小滝もあり、さらに5m、4m斜瀑、8m、6mと続き、ほとんどが直登できるので楽しいこと この上ない。 |
素晴らしい不動滝 | 滝の裏に行ってくるね |
11:32 上流から涼しい風が流れてきた。「そろそろやで」 姿を現わした不動滝はまさに天から降り注ぐようにその飛沫をあたりに撒き散らしていた。 落ち口から飛び出した水流は50mの高さを飛翔し浅い滝つぼに一気に落下する。 その瀑風はまるでクーラーの前にいるように涼しさを通り越して寒いくらいだ。 「こんなに日なたの恋しい沢登りは初めてです」と矢問さん。この滝はハングした下部に バンドがあり、そこから裏見の滝を味わうことができる。そのことを教えるととっちゃんが ひとり滝の裏へと回って行った。 左岸のグズグズのガレから立ち木の斜面を這い上がると、立派過ぎるような杣道に 出合った。まるで遊歩道のようである。 とっちゃんは「青息吐息やわぁ」。「桃色吐息ちゃうの」「そんなに色っぽかったらええん やけど〜」とわけのわからない会話をしていると簡単に落ち口に到着。夫婦滝とえらい 違いである。 ここからは帰路のヌタハラ谷右岸尾根にある山火事跡の台地がよく見える。向こうからも この滝がはっきり見えるのだから当然ではあるが。 |
トユ状の美しいナメ | この滝の下でランチタイム |
12:35 千変万化の谷もここへ来てようやく落ち着いてきた。トユ状の美しいナメ15mを味わい ながら進み、右からの支流を二つ見送る。続く小滝も難なくこなすとまたずいぶん高い ところから水が落ちている。2段30mとも40mとも書かれているが、実際は4段くらいに 分かれている。最下段を直登して2段目の左の草付きを上がると立派な上2段の滝と 対峙する。「そろそろ昼にするか」 滝の下の日当たりのいい岩の上でランチとする。冷えた体に太陽の光が心地よい。 矢問さんはアルコール抜き、とっちゃんも先が不安なので飲まないと言う。何はなくとも これがないと始まらないのでひとりでプシューを頂く。 いつになく短いランチを終えて左の斜面から巻きにかかる。やや足場は不安定なものの、 割合あっさりとした巻きだったが体が重い。とっちゃんも「体重が60キロに増えたみたい」 とダルそうである。 左からの支谷を見送ると「二俣」となった。目指す方向からすると左だ。右は桧塚奥峰と P1394の鞍部へ上がる本流のはず。今日の目的地は桧塚奥峰ではなく「桧塚劇場」である。 |
本流から左俣にある滝 | さあ桧塚劇場へショートカットだ |
左を取るとほどなく2段15m滝。もうぜんぜん登る気もなく簡単そうな左の斜面に入ると 岩壁は切れ目がなく上へ上へと追いやられた。もうすぐ上には青空が広がっている。 13:47 「もうええか」 「桧塚劇場」へダイレクトに方針変更である。5分も上がればもう劇場の一角。 短いササに覆われた広大な台地に到着である。 |
矢問さん、もうすぐよ〜 | ここが「桧塚劇場」のS席やね |
真ん中に横たわる枯れ木に腰を下ろして、ふやけた足を開放してやる。「気持ちいい〜」 ここは桧塚、奥峰、明神、笹ヶ峰といった山々望む特等席。 台高でも5本の指に入るお気に入りの場所である。 心ゆくまで展望を楽しみヌタハラ谷右岸尾根、通称「ヌタウ」の下りに備える。 |
ブナの森が広がる | 山火事跡台地だわ |
お二人にとっては初めてのヌタウ。どんな尾根かお楽しみである。 ブナ主体の森に覆われたのびやかな台地は涼しくて快適である。ついさっきまで日差しが 恋しかったのに、山上台地に上がってからは暑くてたまらなかったのだ。 |
モンキークライムダウン | 尾根から不動滝が見える |
森を抜けると急に傾斜が強くなる。地形図上の等高線が最も詰まった地点の始まりである。 ここからは木を掴んでの転げるような下りである。 問題の岩場もルート通りの右からの巻きで無事クリア。 ここを過ぎれば下山ルートのハイライトである山火事跡台地である。 |
ボロボロのヤセ尾根 | いい足場がないよ(^^;) |
15:37 「台地」とは言ってもボロボロに風化したヤセ尾根とフィールドアスレチックのような倒木の 積み重なった細長い頂稜である。振り返れば不動滝が緑濃い谷間から一条の白い帯と なって落ちているのが見える。瀑音も響き渡り、数時間前にあの滝の下にいたのだと思うと 感慨深い。矢問さんととっちゃんは口数も減りぐったりした様子だ。 ガレガレのヤセ尾根を慎重に下るともう安全地帯。しかし油断大敵で1ヶ所尾根を外し てしまい、登り返すハメに。もう登りはないと思っていた身には拷問のような登り返しだ った。 最後はまた植林の中の急降下。ふらふらになって駐車地へのトラバースで足を踏み外し てしまった。せっかくきれいな体でここまで来たのに、最後の最後で泥だらけである。 16:40 車の真ん前に無事到着。まったく退屈しない楽しい沢と展望の草原台地、変化に富んだ バリ尾根と腹一杯の一日が終わった。 (遡行記録:山日和 記) |
本日の遡行ルート(赤)と下山ルート(青) |
この1つ前の記録は「但馬・明延川 千葉渓谷から須留ケ峰」の記録です |