【北アルプス】早春の上高地・蝶ケ岳


【行き先】北アルプス・蝶ケ岳
【期  日】平成16年3月19日(金)〜21日(日)
【メンバー】矢問・MICKEY
【コース】19日:中ノ湯−釜トンネル−明神−徳沢−横尾テント場
      20日:横尾テント場−蝶ケ岳(2664.4m)−横尾テント場
         (2日目の蝶ケ岳ヒュッテ・テント場泊を変更し
          翌、蝶ケ岳ヒュッテ−長塀山−徳沢も変更)
      21日:横尾テント場−徳沢−明神−中ノ湯 〜帰路へ

18日(木)の初日予定を19日(金)に変更。1日目を悪天気の中を歩いて良
い予報の2日目の19日に蝶ケ岳へ登るのが良いかと悩んだが、吹雪や雨の中、
徳沢から横尾のトレースや積雪状況が読めず、横尾に到達できないのもツライ。
4年前に長男と行った上高地は2月だったが小梨平から先はトレースもなく、ワ
カンでも膝まで沈む積雪だった。
今年は昨年よりと比べても雪は相当少なく小梨平でも1mほど少ないらしいが・・・。
1日目降水確率10%で晴れ、2日目、3日目は曇りで降水確率40%という予
報で初日前日の18日に自宅を出た。

中津川で高速を下りて国道19号、県道26号で沢渡へ向かう。途中、奈川のリ
フレインで湯に入る予定が定休日(;_;)。沢渡の温泉公衆浴場「梓湖畔の湯」へ。
誰もいなくて貸し切り状態。大展望の温泉だ。「昨日から今日はすごい雨だったよ。
車中泊するならウチの下のガレージですればいいよ」と親切なご夫婦。夜に食事
の出来る店も電話で問い合わせて下さった。食事は乗鞍方面へ10分ほどの所。
なかなか美味しかった。

時間もあるので釜トンネル入り口を見に行った。ネットで見たとおり道路の雪が
本当に少ない。車中泊を翌朝のタクシーのこともあり前回同様にアルピコタクシ
ーの営業所でしようと思っていたが、トイレの心配のない岩見平の「グレンパー
クさわんど」の駐車場に決めた。僕らの車のみだ。
明日は予報どおり晴れるのだろうか・・・雲が厚い。

3月19日 (第一日目) 
6:30

車を道路反対側の村営岩見平駐車場へ移動させようかと用意していると、一台の
信州名鉄タクシーが来た。朝食を食べておられるようだ。
「乗せて頂けますか」「いいよ」よかった。早い出発時間は行動に余裕を持てる(^^)v。
「どこへ?」「蝶へ」「登山?12月末までは多かったけど年が明けてからは初めてだな」
「だとしたら、徳沢から先のトレースは期待薄ですね〜(^^;)」天気とトレース・・・か。

まだ工事中の釜トンネル入り口
6:45
釜トンネル入り口の中ノ湯売店のポストに登山届けを出す。売店主が「昨日の雨
で雪崩が3カ所ほどあるので山側を歩かずなるべく川側を歩いてね。徳沢から先
は12月頃は多かったけどそれ以降ほとんど行っていないと思うよ。」トンネル
が4年前とは大違い。途中から綺麗になっている。工事車両が2台抜いていった。
トンネル内路面は水も流れず乾燥していて滑らない。「ペース落としてよ〜(;_;)」と
MICKEY。MICKEYは15キロを担いでいる。トンネルの登りもジワジワと足に応え
てくるのだ。僕も19キロの荷物はズッシリ足腰に来る。

7:10にトンネルを出た。晴天だ。「もうすぐ感動の景色が目にはいるからね」
と進む。「うわ〜。綺麗!!」とMICKEYが万歳をしている。太兵衛平の下りかけ
のカーブミラーのところが絶好の写真ポイント。大正池も雪が少ない。池に山が
映って美しい。水際まで行った。写真を撮っている人が3人。写真を撮る男性が
1人「昨日は土砂降りでザックの中まで濡れましたよ。今朝は最高ですよ!」と。
綺麗な景色が見えだした! 景色の美しさにMICKEYも復調 焼岳も登ってみたい山だ
8:30に除雪作業を開始している上高地帝国ホテル前を通過。除雪の道路が凍
結していて歩くのも怖い。上高地バスターミナルは取り壊されていた。
工事車両が数台停まっている。どのように生まれ変わるのだろう。
河童橋より焼岳方面 河童橋より明神岳方面
9:00
河童橋。MICKEYは夏の奥穂に登って以来10年ぶり。橋向こうの日の当たるベン
チで朝食にした(30分間)。なれなれしいつがいのマガモが足元まで来る。
山肌の雪の量が4年前にナイトンと来たときより相当少ないよ・・・」
「でもすごく綺麗で大満足(^^)」焼岳が青空に映えて輝いている。
それにしても、人っ子一人いない河童橋なんて初めてだ \(^o^)/\(^o^)/
小梨平にはテントがたった2張のみ。明神への途中でスノーシューの男性とすれ
違った。
小梨平をベースに散策なのだろう。身軽だ。しばらくするとまた1人、散策らし
い男性とすれ違った。
明神館の横から明神岳 明神と徳沢の途中から
10:35
明神。明神岳の姿が正面に素晴らしく輝いている。ここから少し凍った川を歩き
樹林帯に入ると猿の親子の群れが・・・。MICKEYは喜ぶが僕は怖かった(^^;)
疲れが出てきて小休止が多くなった。平坦なようだがジワジワ登っている。
足跡が急に少なくなりしかもうっすらとしか残っていなくて凝視しないとわから
ない。
川の上を歩く方が楽 ここは慎重に
12:00
斜面をトラバース気味に進み少し行くと徳沢ロッジに着いた。少し行ったところ
に立派なトイレがある。中は汚れがひどい。「荷物が重いと疲れるよなあ(^^;)」
「太陽で雪がゆるくなり足が取られやすくなって力が抜けるしねぇ」
徳沢園 左横にある徳沢園の冬季小屋
12:20
徳沢園。冬季小屋の前に犬がつながれていてワンワンほえている。
さらに雪に足を取られやすくなる。
新村橋 ここから横尾へはトレースが無い
12:40
新村橋。ここからトレースや足跡が無くなっている。
「吹雪いていたらどこもが道のようでわかりにくいね」「天気で良かったなぁ」
しばらく道らしきルートに従って歩いたが、雪崩れていて進めない斜面があり、
凍って雪の積もっている川に下りた。「このまま川の上を進もう」「川の上を歩い
ているなんて信じられないね(^^)」広々とした川の上を歩くのは起伏もなく快適で
あり爽快だ。
「おおっ、横尾大橋が見えてきた!」見えてからが本当に長かったこと・・・。
二人とも太陽の照り返しと重い荷物でバテバテ状態。
川の上を歩きながら左手の景色 川の上歩行「横尾大橋が見えた!」
13:50
重い荷物にバテぎみで、中ノ湯から7時間もかかってやっと横尾に着いた。
横尾山荘が綺麗になっている。その横にも新しい建物。立派なトイレも。
「やっぱり足跡もトレースも無かったから誰もいないなぁ」「明日の蝶ケ岳への
トレースも全くないってことか・・」「連休だから誰か来るかもね」
MICKEYが10年前にテント泊した辺りにザックを置いた。ここまでで各自1リットル
ほどは水を消費したようだ。テント設営のために雪を2人で頑張って踏み固める。
上高地から11キロの横尾山荘 横尾大橋 テント設営完了
テント設営。降雪よりも雨が心配で外張りにせずフライを持参した。雪スコで深
く雪を掘り竹ペグを埋め、強風対策も万全にした。4年前の2月の小梨平テント
泊での夜中の強風がトラウマになっている。
避難小屋の入り口のドラム缶に雪解け水を引いてある。
「トイレの前が気になるなぁ・・。飲めるかなぁ。やっぱり雪を溶かして作ろうか・・」
「煮沸すれば飲めるよ」ホースから直接汲んで煮沸して利用することにした。
「あ〜疲れた。ひと休み〜」と冬用の羽毛シュラフにくるまると暖かくて2人とも
16時半まで寝てしまった。周囲は誰も来ていない。
「横尾を貸し切りか(^^)」「明日と明後日は曇るし、展望も期待出来ない上に
トレースもないところの急登続きをこの荷物を担いで蝶ケ岳ヒュッテに行くのは
無理のような気もするし、明後日吹雪いたら徳沢までの下りルートが読めるか
どうか・・」と議論。徳沢までは3倍ほど時間が違う。「横尾に連泊として、テントと
シュラフはデポして荷物を軽くして、頑張って山頂を踏んでみよう。
天候が悪すぎれば途中撤退としよう」とし、早い夕食を食べ寝ることにした。
「長崎チャンポンは温まるねぇ(^^)」「ホント美味いなぁ」と僕。

ちょっと蝶への登り口を見てくる」と偵察へ。やはり全くトレース無しか・・。
「ここはラジオも携帯も入らないね」「それ、前も経験済みのハズ」
「うわ〜満天の星!!明日も良い天気になって欲しいなぁ」

3月20日(春分の日・第二日目) 
5:30
朝食作り。キノコのリゾット+残っていたおにぎり2つを放り込む。
簡単に荷造り。
テントは不思議と内側に霜もついてないし濡れてもいない。
カチンコチンの急斜面 まだこの急登が続くの〜?? おおっ、槍ヶ岳が見えるぞ!
6:45
やや曇っている。晴れて欲しいなぁ、と思いつつテン場出発。
取り付きを探して進む。10分ほどで急斜面になってくる。コースがわかりづら
い。地図とニラメッコ。「赤丸があった!」とMICKEYの声。目をこらさないと見
えないくらい薄い赤丸が木についている。「よく見つけたなぁ」「またあった!」
「えっ、どこに?」「雪のキワ」なるほど雪が深くて丸印が埋もれている位置の
もあるのだ。
早朝で雪が凍っていて危険だ。アイゼンを装着。ジグザクに進んでいくがこれほ
どの雪の急斜面がずっと続くと思うと正直ゾッとする。途中でルートを読んで直
登にした。何もつかむものがなくピッケルのピックを突き刺して登っていく。
アイゼンの「ガシッ」と言う音とピックの「ザクッ」と言う音と激しい息づかいの音
のみの世界。途中で何度もルートを確認する。
途中、とれかけの赤布や赤テープもあった。
雪が数日前の大雨などで腐って雪崩れる直前の急斜面ところもあり、慎重に
ルートをとった。

「おおっ、槍ヶ岳が見えるよ」「うわっホントだ!」その景色を最後に小雪が舞い
始めた。風が出だした。登りはまだまだ急登が続く。

「風もきついしこのへんでいいか・・・」と僕。「もう少し頑張ろうよ」とMICKEY。
しかしキツイ登りだ。帰りもこれだけの樹林帯だと尻セードも危険で期待できない。
ヒーヒー、ハーハーと言いながら前進あるのみ!!
森林限界を過ぎて最後の登り 強風の稜線には雪がない 向こうに見える山頂までは近かった
10:30
森林限界を出ると、新雪が深い。ワカンをつけるか悩んだが、少しの距離なのでラ
ッセルで進む。う〜ん・・晴れない。雪が舞ってる。風がすごくキツイ。
蝶ケ岳山頂からの最高の展望は次回にお預けか・・。
稜線に出ると、道標も凍っている。稜線は雪が吹き飛ばされていてほとんど無い。
「も〜ぅ、最高の展望を期待していたのに!」とMICKEYが文句を言ってる。
僕は途中で防寒具を着たが、MICKEYは風に吹き飛ばされそうになりながらここで
やっと着た。MICKEYのクチビルが寒風の強風のせいかやや紫色に(^^;)

10:55
蝶ケ岳山頂。展望もかすかしか無いので蝶槍にも行かずに「また次の楽しみ」として
さっさと下山開始とした。樹林帯に入ると強風からもおさらばの静かな山になった。
まだ雪も締まっており、下山はラクチンだ。その上、山の上部の積雪は片栗粉を
踏んでいるように「キュッキュッ」といい音がする。色も真っ白で美しい。
樹林帯といえども出来そうな所は尻セードを試みた。が、怖すぎる。斜度がキツイし
ピッケルで操作してもスピードが落ちない。立木への激突が非常に怖くて危険。
登りの時には見にくかった木の赤丸印が下り側からはよく見える位置にある。
登りは直登、下りはジグザグで巻き気味の登山道沿いというところか。
展望だけが、心残り・・下山開始 出来るところはすかさず尻セード 急斜面の下りは慎重に
下山して2時間ほどで晴天に・・・(;_;)
13:05
テン場に着いた。テントにも雪がうっすら積もっていた。
登り4時間、下りは夏タイム同等の2時間ほどで下りたことになる。
水を作っていたら小雪がやみ、14時30分過ぎから雲がフワァ〜と消えて晴天になった。
なんてこった〜!! 
「悔しい〜!あと3時間ほど山頂到着が遅かったら最高の展望になったのに!!」
「2日目も横尾を貸し切りみたいだね(^^)。時間が早いし、徳沢か小梨平あたりにでも
戻っておいても良いけど」「まぁ、静かな雪の横尾を楽しみましょう(^^)」と連泊決定。
のんびり辺りを散歩。

夕食はカレーにした。「このカレー、おいしくない(ーー;)」とMICKEY。
「文句言わない!」と僕。
この夜も空には満天の星だった。
明日の水も煮沸してテルモスとポリタンに確保した。ウインドガードは大活躍。
水作りにホワイトガソリンの減りは流石にこの気温ですごくはやい。

それにしても今夜もすごい星の数だ(^^)。
「あ〜、蝶ケ岳ヒュッテにいれば早朝は展望最高だろうなぁ」「あの荷物担いで、
あの雪の急斜面の登りを登りきれたか超疑問だけどね」「あ〜、それにしても悔しい!」


3月21日(第三日目)
5:20
あたりは明るくなり出した。昨日と大違い。テントの中は霜だらけ。雑巾で霜取りをして、
MICKEYはテント内で荷造り、僕はテントの撤収に向けて外で竹ベクの掘り出しを開始。
「雪が凍っていて雪スコもピッケルも効かない。踏み固めすぎた(^^;)」なんとか4つは
掘り出せたが、あと5つの竹ペグは残置するしかなかった(;_;)。
今日もなかなかの景色だね 新村橋が見えてきたぞ〜 名残惜しいなぁ
6:35
横尾出発。初日ほどではないが晴天である。「今日は最短距離で明神まで行くよ。
つまり凍った川の上をどんどん進む」「その方が起伏もないし楽だしね(^^)」
新村橋まで45分間、徳沢園まで15分間、明神まで60分と景色を楽しみなが
らにラクチンで進めた。川の上に積もった雪がダイヤモンドの粉のようにキラキラと
太陽の光りで輝いている。それを見て「綺麗ね〜。素敵!」とMICKEYは上機嫌。

徳沢園の冬季小屋の水場に男性が一人いた。徳沢と明神の間では3人組のスノー
シューのグループがいた。凍って雪のかぶった川の上を歩いていると明神橋も見え
「あと少しで明神だ(^^)」と元気が出た。明神には男性2人が休憩して明神池の方へ
行った。そのあとまた男性が1人小梨平の方から来て明神池の方へ行った。
MICKEYは、ザックの外にぶら下げたポリタンの水を飲もうとするとカチンコチンに
凍っていて大笑い。こういうときはやはりテルモスのお湯がありがたい(^^)v。
休憩の度に行動食を口にしてシャリバテにならないように気をつけた。
明神から小梨平まではスノーシューのグループがいた。
小梨平には初日よりは多く、テントが5張ほどあった。
「あの辺りで2月にナイトンとテントを張ったんだ」とMICKEYに教える。

9:40
河童橋では6〜7人の人が写真を撮っている。「初日の晴天の方がスッキリくっ
きりで綺麗だったね(^^)v」とMICKEY。僕たちは、さっさと通過した。
大正池の手前で70歳は過ぎていると見られる男性が「今年は雪が少ないねぇ。
いつもこの時期ならあの霞沢岳の三本槍のところからスキーで滑降すると早くて
楽なんだけどねえ」と話して下さった。
大正池ホテル前に着いた 今日はスッキリ晴れていない 素晴らしい景色よ、またいつか〜
10:35
大正池ホテルのところではクロスカントリーの講習やクロスカントリーのグループ
が大勢いた。初日とは大違いの人の数にMICKEYは驚いていた。休日は流石だ。
雪が太陽の熱でだんだんとゆるんできて足を取られる。

11:15

最後の展望を楽しみながら釜トンネルに入る。帰りは下りなので15分でトンネ
ルを出た。横尾からの帰りは5時間だった(^^)v。
「もっと雪の多い頃の上高地へも来てみたいよ〜!」とMICKEY。
MICKEYの言葉に「了解〜!(^^)」と応えた。「その前に、夏山に向けてもっと鍛
えておかないと!」とMICKEYは今年もやる気満々のようだ(^^;)負けそう・・・。

帰りはアルプスタクシー。「沢渡の駐車場も車上荒らしが多くてね。今度来ると
きのおすすめはこの駐車場を使いなさい。この連休は登山者が来なくて期待
はずれだよ。12月は蝶や霞に大勢入山したんだけどねぇ。蝶での展望はだめ
だったのかい?。そういうもんだよなぁ山は。また次があるさ。また、おいでよ。
天気予報が良い方にはずれて良かったねぇ。上高地の山の天気を見るときは
この辺の天気を見るより上宝村の天気を見る方が山の場合は当たるんだよ。
あそこにはフキノトウがあるからぜひ採って帰りなさいよ。横尾は誰もいなくて
新婚気分になれて、たまには良かったんじゃないの(^^)」と運転手さん。
岩見平の駐車場には車が僕ら以外に15台ほどあった。
車に荷物を積み替えおみやげを買って、この時間に空いている奈川リフレインで
サッパリと汗を流して帰路についた。
行きも帰りもMICKEYとの交代交代の運転で楽になった(^^)v

僕たちより3日ほど早く五竜へスノーボードに行った長男、そして戸狩へスキー
へ行った次男と今日は実家で合流だ。
家族バラバラの地で、雪山をそれぞれのスタイルで楽しんだ数日間だった。
家族の顔がみんな雪焼けしている(^^) 

※帰宅した日の深夜から雨になった。天気に恵まれた3日間に心から感謝したい。
  帰宅して3日目のこと、1年半おとなしかった胆石の激痛が来て転げ回った。
  山行中でなくて良かった。遭難ものだ。そろそろ摘出手術の決心時か・・・(^^;)
この1つ前の記録は「芦生・赤崎中尾根」の記録です